AIと共存する広報|「ChatGPT」を活用したプレスリリースの書き方を紹介~応用編~

前回の記事ではChatGPTと「対話形式」でプレスリリースを作成していく手順をご紹介しました。
実はChatGPTは「質問」や「命令」などの対話だけでなく「条件を指定」することで、より精度の高い文章を生成することが可能です。

本記事では、プレスリリースを書く前に「前提条件」をより詳細に指定し、AIを活用した原稿作成の方法をご紹介します。

ChatGPTにおける「プロンプト」とは

「プロンプト(Prompt)」という単語をご存じでしょうか。
「刺激・促進」を意味する英単語ですが、ChatGPTにおけるプロンプトは「指示する(入力する)テキスト」のことを指します。
適切なプロンプトの設定によって、AIの回答の質を向上させたり、望ましい回答の生成を促進することが可能です。
今回は「ChatGPT=広報担当者」という役割をプロンプトで設定し、プレスリリースを作成していきます。

ChatGPTを使ってプレスリリースを書く方法

ここからは、ChatGPTに役割を与えてプレスリリースを書く方法について、その手順をご紹介します。
※前回の記事で紹介した「対話形式でプレスリリースを書く方法」については、以下のリンクからご覧ください

①プレスリリースのテーマを設定する

まずはプレスリリースの目的や、その対象となる企業情報など、大まかな概要を決めておきます。
今回は、「展示会出展」について以下の内容でプレスリリースを作成します。

  • 出展企業:ソーシャルワイヤー株式会社
  • 展示品:Yum Yum Meal
  • 打ち出すポイント:管理栄養士が監修したメニュー

②ChatGPTのプロフィール設定

続いてはChatGPTに対して、「あなたはこんな人ですよ」というプロフィールを設定します。

これからあなたには企業の広報担当者になってもらいます。
あなたのタスクは、新聞記者が記事にしたくなるプレスリリースを書くことです。
記事にしたくなるプレスリリースとは、「社会問題解決(健康管理への意識向上)に貢献していることがわかる」もしくは「トレンドをおさえている」内容です。

以下のルールを覚えてください。
1. プレスリリースは数字やデータに基づいた信頼性の高い内容を含みます。
2. 商品の売り込みのような宣伝文句と、形容詞を使ったあいまいな表現は禁止します。
3. プレスリリースは、タイトル→冒頭文→本文の順で書きます。
4. プレスリリースのタイトルは、体言止めにします。
5. プレスリリースのタイトルには、「社会問題解決 (健康管理への意識向上) に貢献していることがわかるキーワード」と「インパクトのある枕詞」を入れます。
6. プレスリリースのタイトルは、50文字以内で書きます。
7. 冒頭文には、プレスリリースの概要(いつ、どこで、誰が、何をするか)を書きます。
8. 冒頭文は、6行以内で書きます。
9. 本文には (商品開発の背景、展示会概要、商品特徴、商品概要) を段落別で書きます。
10. 展示会概要(日時や場所等)は箇条書きにします。
11. 商品特徴は箇条書きにします。
12. 商品概要は箇条書きにします。

以上全ての項目を満たし、必ず最後まで書き終えてください。

まず、ChatGPTに「役割」を与える。そして、プレスリリースを書くときに抑えておくべきポイントとして「ルール」を入力する。といった流れです。
イメージとしては、自分が広報部に所属していて、後輩にプレスリリース作成を依頼する、といった感じです。
企業毎にプレスリリースの書き方には特長があると思いますが、おそらく同じ部署で働く仲間と共有している知識があるはずです。
この知識をChatGPTにも予め植え付けておくために、前提として「書き方のルール」を教えておきます。

③テーマの詳細情報を入力する

続いて、本題に入ります。
作成するプレスリリースの「元となる情報」をなるべく詳細に伝えます。

※社名と新商品が紐づいて学習されてしまうのを防ぐために、名称は●●として入力しています

これから書くプレスリリースの元となる情報を伝えます。

テーマ:展示会出展に関するプレスリリース
あなたの所属する企業:株式会社●●
展示会名:●●EXPO
出展する商品:ミールキット(商品名: YumYum Meal)
出展目的:卸先の開拓
店舗販売開始日:2023年4月1日
価格:1パック250g(2人前)
販売形態:冷凍販売

特徴1:管理栄養士が監修
特徴2:フライパンで10分で調理可能
特徴3:展示会では調理の実演がある
特徴4:展示会で試食が出来る
特徴5:パッケージにバイオマスプラスチックを使用

あなたがプレスリリースを書く前に考えること:
1. この商品がどのような健康管理への意識向上に寄与しているか
2. この商品の特徴や優位性は何か
3. この商品をなぜ購入したいか

自分の後輩に「このポイントをおさえた内容で書いて欲しいです」と伝えるように、展示会や商品の「推しポイント」を羅列します。
そしてもう一歩踏み込んだ回答を引き出せるように「AIに考えさせる指示」も入力しておきます。
人間と似ていますが「上っ面ではなく、理由を考えながら仕事を進めてくださいね」と伝えるイメージです。

すると、以下のように返答されました。

このようにプロンプトをより詳細に設定することで、形の整ったプレスリリースの土台が完成します。

④簡単な校正

今回のプロンプトによる回答は完成度が高いため、そのままプレスリリースのフォーマットに企業名や企業情報を入れ込み、形を整えていきます。

やはり、フォーマットに写してみると、少なからず物足りない部分が出てきます。
筆者が一番気になったのは「タイトル」です。展示会出展なのに、販売開始を打ち出したタイトルになってしまいました。

⑤ブラッシュアップ

ここで再びChatGPTを使い、タイトルの提案や言い回しの変更を行います。
まずはタイトルの気になる点を改善します。

発売開始よりも、展示会出展を前面に出したプレスリリースにしたい。タイトルを考えなおして。

道しるべを加えて指示し直したところ、ようやく理解したようで、図のように展示会出展をテーマとしたタイトル案が出力されました。

指示が細かければ細かいほど、精度が上がるのがChatGPTの特徴です。

続いて、開発背景の部分も修正します。

健康意識の高まりや忙しい現代社会において、 手軽に健康的な食事を摂ることが求められています。 
そのニーズに応えるため、当社では管理栄養士が監修したミールキット「Yum Yum Meal」を開発しました。

上記の文章を、 開発者の気持ちでもう少し具体的に書いてください。

「開発者の気持ちで」と少しざっくり伝えましたが、「どんな事があったから、何をするために、どうした」というところまで回答を引き出すことができました。

この回答を再度土台に移し、改めて誤字脱字チェックと文体の改善を加えることで、最終的に画像のような形でプレスリリースの完成となります。

ChatGPTでできないこと

前回の記事では、プレスリリースのクオリティ向上においてChatGPTができること(情報の整理・文章構成・豊富な語彙の使用・作業時間の短縮)についてご紹介しましたが、反対に「ChatGPTでできないこと」についてもご説明しておきます。

意思決定

ChatGPTは指示を与えない状態で自発的に考えることができません。
役割(プロフィール)設定のプロンプトによって「AIに考えさせるような指示」を与えることはできますが、それは人がぼんやりとイメージしている答えをテキストで出力させるひとつの方法です。
ですので、ChatGPTに推論や意見を求めることは、現段階では難しいということになります。

最新情報の回答(無料版)

無料で利用できるChatGPT(GPT-3.5)は、2021年までのネット上のデータを基にして返答するので、最新の情報を正確に答えることは難しくなっています。
また、ChatGPTは事実とは異なる情報だとしても、「もっともらしい言葉」で返してくるので、鵜吞みにしないように注意が必要です。

ニュアンスで理解

誰が読んでも同じように認識される文章は理解することができますが、すべての言葉のニュアンスや文法を正確に理解することはできません。
ChatGPTの回答で会話の方向性がずれないようにするには、子供でも分かるレベルで、細かく具体的な言葉を入力することが重要です。

一発で完璧な回答

ChatGPTは、辞書を引くように、求めている答えが一発で出るものではありません。
対話型AIと言われているように、幾重にもわたる会話を通して、最終的な着地点を見つけることが可能になります。

さいごに

ChatGPTでできないことはいくつかありますが、それは現段階でAIを活用する場合に把握しておくべき事実です。
プレスリリースの完成度を高めるためには、AIによる素早い文章生成の力を活用しつつ、人間による編集やカスタマイズ力が求められます。
ChatGPTはツールであり、私たちの潜在的な力と経験を補完する存在です。
最終的なプレスリリースは、ChatGPTの力を借りつつも、人間がチェックし整えることで魅力や効果が発揮できるようになります。
以上を念頭に置いて、AIと共存し効率的にプレスリリースを作成しましょう。

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