犬の鼻に匹敵する超高感度ガスセンサーを開発

株式会社船井電機新応用技術研究所(所在地:茨城県つくば市、代表取締役社長:小野 雅敏)は、独立行政法人産業技術総合研究所と共同で、犬の鼻に匹敵する感度をもつガスセンサーを開発しました。具体的には、酵素を用いた新しい検出方式により、大気中に存在するppbレベル以下の極微量なホルムアルデヒドガスを迅速に検出することに成功しました。このセンサーは他の様々な種類のガス検知にも容易に応用することが可能で、将来的には一般家庭での有害ガスを素早く高感度で検知する小型で高性能なガスセンサーなどへの応用が期待されます。

1.センサーの概要図
1.センサーの概要図

1.従来のホルムアルデヒド検出法の課題
近年、生活水準の向上と共に安全・安心・快適な環境に対する要求が高まり、我々の住まいや健康に悪影響を及ぼす環境中の極微量物質を素早く高感度で検出するデバイスが求められています。例えば、ホルムアルデヒドは、「シックハウス症候群」を引き起こす原因物質として生体への影響が危惧されており、住環境における許容濃度が厚生省、WHO(世界保健機関)によって80ppbと定められています。ホルムアルデヒドはクロマトグラフィー、吸光光度法、蛍光法などの分析装置により検出・定量が可能ですが、これらの装置は高価かつ取り扱いが煩雑で、長い測定時間(30分以上)を要するため、連続的な計測に適していません。また、現在市販されている抵抗変化型のセンサーは簡便かつ連続的な計測が可能ではあるものの、十分な感度及びガス選択性を有さないなどの問題点があります。そこで、十分な感度と選択性を有し、迅速で連続的に測定可能なホルムアルデヒド検出センサーが要望されていました。

2.本センサー及びシステムの特徴
(1)酵素によるガス検出方式
ホルムアルデヒドのみに反応する酵素を用いて、大気中に存在するホルムアルデヒドを選択的に超高感度検出します。他の様々な種類のガス検出にも容易に応用が可能です。

(2)電解質と電極材料の最適化
酵素や電子伝達物質、電極材料の最適化により、低電位の電流検出方式でppbレベル以下の極微量なホルムアルデヒドも2分以内で迅速に検出可能です。

(3)独自の電極構造
独自の電極構造により、測定の再現性を大幅に向上することに成功しました。
また、測定濃度レンジを任意に変えることが可能です。

(4)連続繰り返し計測
出力信号は測定後に素早く基準値に戻るため、繰り返し計測が可能で連続的な計測に適しています。

このように、本センサー及びシステムは、大気中のホルムアルデヒドガスを、酵素を利用して検出する新しいタイプのガス検出方式を採用しています。

3.本センサーの意義と用途
(1)意義
従来、クロマトグラフィー等でしか捕らえることができなかったホルムアルデヒドなどの大気中の極微量なガスを迅速に選択的に捉えることができます。
サンプリング等の前処理が不要なため、測定時間が短く、従来の測定器又はセンサーでは不可能であった高性能な連続計測が可能です。犬の鼻に匹敵する感度を持ち、ホルムアルデヒドが「ある」か「ない」かを識別できる、究極のセンサーです。

(2)用途
・室内環境のモニタリング
新築・リフォーム・転居時、あるいは、学校、ビル等における室内環境の濃度測定に使用できます。繰り返し計測が可能なので、極微量なホルムアルデヒド濃度の一日の変化の様子も捉えることができます。

・製品からのホルムアルデヒド放散量の試験
家具・塗料などの工業製品から放出されるホルムアルデヒドの量と時間変化を迅速に低コストで計測することができます。

・ホルムアルデヒド除去効果の確認
空気清浄機、脱VOC材料等によるホルムアルデヒドの除去効果をスピーディーに確認することができます。

・大気中の微量ガスの検知
様々な酵素を用いることにより、環境中に極微量に存在する広範なガスの検知にも適用できます。例えば、大気中に存在する農薬や殺虫剤をはじめとした危険ガスの早期検知などにも応用可能です。

・小型で高性能なガスセンサーの実現
前処理や特殊な装置が不要なため、高感度で高選択性が求められる小型で安価な高性能ガスセンサーの実現にも貢献することが期待できます。


※画像もご参照ください。

【用語の説明】
・ppb
濃度単位の一つ。parts per billonの略で、1ppbとは10億分の1の濃度のこと。
例えば、ホルムアルデヒド濃度1ppbとは空気1,000m3中にホルムアルデヒドが1cm3含まれている状態を指す。

・シックハウス症候群(Sick House Syndrome)
新築やリフォームした住宅などで起こる、頭痛やめまい、吐き気などの症状があらわれる体調不良の呼び名の総称。その原因の一部は、建材や家具、日用品などから発散するホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレンその他)などの揮発性の有機化合物と考えられている。

・クロマトグラフィー
物質の大きさ・吸着力・電荷・質量・疎水性などの違いを利用して、物質を成分ごとに分離・精製する技法。


【会社概要】
社名   :株式会社船井電機新応用技術研究所
代表者  :代表取締役社長 小野 雅敏
本社所在地:つくば市千現2-1-6 つくば研究支援センターA37
資本金  :260,000,000円
事業内容 :新デバイス研究開発

カテゴリ:
技術・開発
ジャンル:
技術・テクノロジー
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