<ラブレ菌のインフルエンザ予防作用のメカニズムに関する研究> ラクトバチルス・ブレビス・KB290(ラブレ菌)が作り出す多糖(EPS-b)に 免疫力を高める効果があることを確認
10月20日にJournal of Applied Microbiology(イギリスの学術専門誌)に受理
カゴメ株式会社(社長:寺田直行、本社:愛知県名古屋市)は、弊社保有の植物性乳酸菌ラクトバチルス・ブレビス・KB290(以下 ラブレ菌)が作り出す独自の多糖(EPS-b)が、免疫力の向上に寄与していることを、マウスを使った試験により明らかにしました。
弊社では、ラブレ菌の継続摂取によるインフルエンザ予防作用を確認しており、この結果を裏付けるものとして、本研究では、ラブレ菌が免疫力を高めるメカニズムについて調べました。
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図1 ラブレ菌と免疫について
■ラブレ菌のインフルエンザ予防作用について
当社は昨シーズンの冬、栃木県那須塩原市で2,926名の小学生を対象とした調査を行い、ラブレ菌の継続摂取によって、インフルエンザに感染するリスクを低減できる可能性があることを明らかにしました(※)。地域的な影響を考慮した狭い範囲内での大規模調査は世界でもめずらしく、科学的にも有意義な結果が得られました。インフルエンザ予防作用に関する研究成果はLetters in Applied Microbiology(イギリスの学術専門誌)に受理されており、信憑性が裏付けられております(論文受理日:2014年10月6日)。
※2014年1月後半~3月前半にかけて登校日に毎日、1日80ml飲用
■ラブレ菌と免疫について
ラブレ菌は、ウイルスやがんから体を守る力(細胞傷害活性、インターフェロン‐α産生能、抗体産生)を高め、免疫力を向上させることがわかっています(図1)。
※「日本食品免疫学会第9回学術大会」(2013年)で発表
図1 ラブレ菌と免疫について
http://www.atpress.ne.jp/releases/53554/img_53554_1.jpg
■本研究の概要
ラブレ菌の特長の一つとして、独自の多糖を作り出し、自身の細胞表層にまとうことがわかっています。この細胞表層に結合する多糖を細胞表層結合型菌体外多糖(cell-bound exopolysaccharide;以下 EPS-b)と呼びます(図2)。本研究では、このラブレ菌独自のEPS-bがインフルエンザ予防作用のような、免疫力を高める作用に関わっているかを明らかにすることを目的として行いました。
図2 ラブレ菌とEPS-b
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■まとめ
◆ラブレ菌が作り出す独自の多糖(EPS-b)は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する力を高め、インフルエンザ予防作用のような、体の免疫力を高める作用に関与していることが示唆されました。
◆本研究の論文はJournal of Applied Microbiology(イギリスの学術専門誌)に受理されています。
※論文受理日:2014年10月20日、論文公開日:2014年11月6日(同雑誌の電子版)
◆本研究成果は、日本乳酸菌学会2014年度大会(2014年7月17日~7月18日)で発表いたしました。
■研究概要
1.背景および目的
これまでの研究により、ラブレ菌を摂取することで、がん細胞やウイルス感染から体を守る力(以下 細胞傷害活性)が高まることがわかっています。この細胞傷害活性を高めることで体の免疫力が向上し、さまざまな感染症の予防が期待できます。そのエビデンスの一つとして、ラブレ菌を含む飲料の継続摂取によるインフルエンザ予防効果を確認しております(※)。
本研究は、ラブレ菌の細胞表層に結合している独自の多糖(EPS-b)がインフルエンザ予防作用のような、細胞傷害活性を高め、免疫力を向上させる作用に関わっているかを明らかにすることを目的として行いました。
※2014年10月16日 ニュースリリース発信 「ラクトバチルス・ブレビス・KB290(通称:ラブレ菌)を含む飲料の継続摂取によるインフルエンザ罹患率の低減を確認」
2.試験方法
マウスを3つのグループに分け(n=12)、生きたラブレ菌(以下 ラブレ生菌)、ラブレ菌から抽出したEPS-b(以下 粗抽出EPS-b)、馬鈴薯デンプンを含む飼料(コントロール)を1日間、マウスに自由摂取させました。その後、マウスから脾臓の細胞を摘出し、マウス由来のがん細胞と共培養させ、全がん細胞のうち死んだがん細胞の割合より細胞傷害活性(%)を算出しました。
3.結果とまとめ
ラブレ生菌、粗抽出EPS-bを摂取させたマウスでは、コントロール群と比較して、細胞傷害活性が有意に上昇していました。これより、粗抽出EPS-bがラブレ菌の細胞傷害活性を高めることに関与していることが示唆されました。
■まとめ
ラブレ菌が作り出す独自の多糖(EPS-b)は、ウイルスに感染した細胞やがん細胞を攻撃する力を高め、インフルエンザ予防作用のような体の免疫力を高める作用に関与していることが示唆されました。
図3 細胞傷害活性上昇作用の比較
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■学会発表の要旨(日本乳酸菌学会2014年度大会)
Lactobacillus brevis KB290の菌体外多糖粗抽出物の免疫賦活能
○佐々木 恵理加、鈴木 重徳、福井 雄一郎、福家 暢夫、砂堀 諭、菅沼 大行、矢嶋 信浩(カゴメ株式会社研究開発本部)
【目的】
Lactobacillus brevis KB290(KB290)は京都の伝統的な漬物である「すぐき」から発見された乳酸菌である。KB290には、経口摂取により、マウスやヒトにおける免疫賦活作用、およびマウスにおけるインフルエンザ予防作用があることが明らかになっている。またKB290は、分泌型の細胞外多糖(Exopolysaccharide;EPS)と、細胞表層結合型の「EPS-b」の2種類の多糖を生産すること、そしてEPS-bが自己凝集性に寄与していることが示唆されている。
本研究では、KB290の免疫賦活作用についてより詳細に解明するため、KB290の生菌、死菌、およびEPS-bが極めて少ないため自己凝集性が失われている変異株(KB392)の細胞傷害活性上昇作用を検討した。その後、KB290菌体表層より粗抽出したEPS-bの細胞傷害活性上昇作用も評価した。
【実験方法】
本試験では、KB290の生菌、死菌、KB392の生菌、およびKB290が生産するEPS-b粗抽出物を被験物質として用いた。KB290死菌はKB290生菌を加熱殺菌することで、そしてEPS-b粗抽出物は、KB290菌体表層からEDTAを用いて抽出することで作製した。BALB/cマウス(♀、9週齢)に、被験物質を含む飼料をそれぞれ1日間自由摂取させた後、フローサイトメトリーを用いてYAC-1細胞に対する脾細胞の細胞傷害活性発現を測定し、対照群と比較した。
【結果と考察】
KB290生菌(約10(10)cfu/day/mouse)および死菌(約10(10)cfu相当/day/mouse)投与群は対照群と比較して、マウス脾臓の細胞傷害活性が有意に上昇していた(p<0.05)。一方、KB392生菌(約10(10)cfu/day/mouse)投与群の細胞傷害活性は上昇していなかった。このことから、KB392では極めて少ないEPS-bが細胞傷害活性の上昇に関与していることが示唆された。そこで、KB290菌体より粗抽出したEPS-bをマウスに投与したところ、低用量(約60μg/day/mouse)では効果は確認できなかったものの、高用量(約600μg/day/mouse)では、マウス脾臓の細胞傷害活性を有意に上昇させることが確認できた(p<0.05)。
以上より、KB290は生菌、死菌ともにマウス脾臓の細胞傷害活性を上昇させることが明らかとなった。そして、細胞傷害活性の上昇には、KB290の細胞表層に結合するEPS-bの関与が推測された。
<関係文献>
Y. Fukui, et al., Br J Nutr. 14, 110, 1617-29 (2013).
N. Waki, et al., Lett Appl Microbiol. 14, 58, 87-93 (2014).
S. Suzuki, et al., Can. J. Microbiol., 59, 549-555 (2013).
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