新発想の物質運搬技術を開発 光を当てるだけで微小物体が水面上...

新発想の物質運搬技術を開発  光を当てるだけで微小物体が水面上を移動し、 目的の場所で中身を放出

~ 工学部応用化学科・藤井准教授 ~

 大阪工業大学(所在地:大阪市旭区、学長:西村 泰志)は、工学部応用化学科の藤井 秀司准教授、中村 吉伸教授と旭川医科大学化学教室の眞山 博幸准教授、ドイツのマックスプランク研究所のグループが、固体粒子で覆った液滴(リキッドマーブル)と光を組み合わせた新発想の物質運搬技術を開発したことを報告いたします。
 太陽光発電のような電力変換のプロセスがなく、光を直接推進力に変える低コストで、環境にやさしい技術です。ドイツの科学誌「ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS」(電子版)にこのほど論文が掲載されました。

新物質運搬技術の仕組み
新物質運搬技術の仕組み

 開発のヒントは、水の表面張力の高低差を利用して推進力を得るハネカクシなどの昆虫や樟脳船の仕組みです。リキッドマーブルを研究対象としてきた藤井准教授らは、黒色粒子で覆ったリキッドマーブルに光を当てることで、周囲の水に表面張力の高低差を生み出し推進力を得る技術を開発しました。黒色粒子が光を吸収して温度が高くなることを利用し、光が当たるところと当たらないところに温度の差が生まれることで、周囲の水温に違いが生まれます。高い水温の水の表面張力は低く(引っ張る力が弱く)、低い水温の表面張力は高い(引っ張る力が強い)ため、リキッドマーブルが低い水温の方向へ移動します。

 実験ではレーザー光で移動させたリキッドマーブルを目的の場所で別の外部刺激(酸・アルカリ、磁力、別の光など)を加えて壊し、リキッドマーブルの中身を放出することに成功しました。また他の物体をけん引するエンジンとしての力も強く、実験では自重の150倍の物をけん引できました。

 水面があればどんな状況でも光の遠隔操作により狙った場所に物質の輸送と放出ができるため、人間が近づくには危険な場所や入り組んだ水域の汚染状況(油汚染、重金属汚染)を離れた場所から検知したり浄化する環境技術、胃潰瘍の部位にファイバースコープの光を使って薬剤などを運ぶなどドラッグデリバリー(薬物輸送)システム、などの分野への応用が期待されます。

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