歴史都市京都における密集市街地対策の推進について

京都市には,都心部を中心に,細街路や古くからの木造住宅が集積する密集市街地が数多く存在します。これらの地域は,京都らしい町並みをいまなお保つ一方,大きな地震や火災が起これば,避難や救助に支障を来たすとともに,延焼拡大のおそれがあるなど,防災上の課題を有しています。
 このため,京都市では,京都のまちの安心安全はもとより,地域の活性化や魅力向上を目指すとともに,京都らしさを大切にしつつ,市民の皆様が安心安全に住み続けられる災害に強いまちを実現するための取組を進めています。
 この度,現在,本市が進める歴史都市京都ならではの制度や支援策,防災まちづくりの取組状況につきまして,下記のとおりお知らせします。

○ これまでの取組状況
 1 制度や支援策の充実
本年4月に「密集市街地・細街路における防災まちづくり推進制度」を施行するなど,全国に例のない京都独自の制度や支援策の充実を進めています。(別紙1参照)

 2 京都市内における防災まちづくりの推進
現在,市内9地区において,地域と行政の連携のもと,防災上の課題を確認する防災まちあるきの実施,住民参加による意見交換会の開催,防災マップの作成,具体的改善の推進など,全国のモデルとなる防災まちづくり活動を進めています。(別紙2参照)

 3 各地域における防災まちづくりの取組状況
活動4年目となる六原学区(東山区)及び仁和学区(上京区)においては,これまでの活動の取りまとめとして,それぞれに今後の活動の指針やまちの将来像を示した「防災まちづくり計画」の策定を受け,防災まちづくり推進制度に基づき,両学区の組織及び計画の認定を行いました。(別紙3参照)

 4 防災まちづくり推進事業による改善事例
上記(1)の助成事業や制度を活かし,袋路の避難経路確保や空き家の跡地を活用した「まちなかコモンズ」(防災ひろば)の整備など,具体的な改善が各地で着実に進んでいます。(別紙4参照)

(別紙1)
京都市「密集市街地・細街路における防災まちづくり推進制度」の概要

 この制度は,密集市街地の改善に取り組む地域組織やその組織が定めた方針・計画を公的に位置付けることで,地域・事業者・行政が方向性を共有しながら,持続的に路地やまちの安全向上を図ることを目的としています。
 市長は,下記の「防災まちづくり活動団体」,「路地・まち防災まちづくり計画」,「路地・まち防災まちづくり整備計画」を認定するとともに,その位置付けの下,防災まちづくりを推進する地域に対して各種支援策を講じます。

1 活動団体の認定
 密集市街地を含む一定のまとまりのある区域(概ね元学区の範囲)内で防災まちづくり活動を行う地域組織を「防災まちづくり活動団体」として市長が認定します。

2 計画の認定
 密集市街地の改善を目指して,防災まちづくり活動団体が防災まちづくりの目標・方針に関することなどを定めた計画を,「路地・まち防災まちづくり計画」として市長が認定します。
 認定された計画は,市のホームページ等で公表し,市,市民,事業者で広く共有し,協働・連携の下,計画の実現を図ります。

3 整備計画の認定
 土地の所有者の方々が一定のまとまりのある区域内において,細街路の防災性向上及び住環境の向上を目的として整備計画を定めたものを市長に提案することができ,基準に適合するものを「路地・まち防災まちづくり整備計画」として市長が認定します。
 整備計画を定めると,安全性を総合的に判断することにより,建築基準法等の規制・誘導策の適用を柔軟化することが可能となります。
 密集市街地以外の区域でも整備計画を提案することができます。

4 支援制度
 防災まちづくりを推進する地域や住民の方々に対し,市は専門家派遣などの技術的支援や補助事業などの財政的支援を行います。

(別紙2)
密集市街地における防災まちづくりの取組状況(平成27年度現在)

○国が示す全国共通の指標に基づき抽出した木造密集市街地の中から,京都市の特性を踏まえた指標を加味して「優先的に防災まちづくりを進める地区」を選定。「優先地区」では,平成24年度から,順次,地域に働きかけ,密集市街地改善に向けて,地域と行政の連携のもと,防災まちづくりを進めている。
(平成27年度現在,計8地区で取組中)
○また,「優先地区」以外の密集市街地については,地域の意向を受け,「優先地区」と同様の取組を行うこととしている。
(平成27年度現在,上京区成逸学区で取組中)

(別紙3)
各地域の防災まちづくりの取組状況

1.優先地区の取組
(1)平成24年度からの取組地区(4年目)
○六原学区
・平成27年3月に3年間の取組成果として「六原学区防災まちづくり計画」を策定しました。これを踏まえ,同年6月に「防災まちづくり推進制度」に基づき組織及び計画の認定を受けました。
・以前から地域で空き家対策にも熱心に取り組まれており,空き家対策と防災まちづくりの連携を深めるため,4年目を機に,組織体制を「六原まちづくり委員会」に一体化しました。
・今年度も,同組織が主体となって,総合防災訓練を活用してのPR活動や防災まちあるきを実施してい
 ます。
・毎年「六原フェスタ」で防災まちづくりの取組を紹介しています。

○仁和学区
・平成27年3月に3年間の取組成果として「仁和学区防災まちづくり計画」を策定。六原学区同様,同年6月に組織及び計画の認定を受けました。引き続き「仁和学区防災まちづくり協議会」が主体となって取組を推進しています。
・現在,同組織が中心となって,計画実現に向けて地 権者への呼びかけ等を随時実施しており,危険ブロック塀の改善など成果も生まれています。
・毎年「仁和まつり」で防災まちづくりの取組を紹介 しています。

(2)平成25年度からの取組地区(3年目)
○翔鸞学区
・平成25年7月に自主防災会を中心とする「翔鸞学区防災まちづくり協議会」を設置し,同組織が主体となって取組を推進しています。
・平成27年4月に「防災まちづくりマップ」を全戸配布しました。
・現在,年度末の計画策定に向け,学区を13ブロ ックに分けて,ブロックごとのまちあるき及び意見交換会を実施しています。

○朱雀第二学区
・自主防災会役員会が主体となって取組を推進しています。
・これまで住民参加のまちあるきや意見交換を実施し,平成27年4月,その成果を「防災まちづくりマップ」としてまとめ,全戸に配布しました。
・現在,年度末に向けて,計画案を検討・作成中です。

(3)平成26年度からの取組地区(2年目)
○紫野学区
・自主防災会メンバーを中心に,住民参加のもと,町ごと(計52カ町)のまちあるき及び意見交換会を概ね月1回のペースで開催しています。
・平成27年8月には,これまでの取組の振り返りも兼ねて,消防局との連携のもと,「災害図上訓練(DIG)」を実施しました。
・まちづくり活動の一環として空き家対策に取組む地域を京都市が支援する「地域連携型空き家流通促進事業」にも取り組んでいます。

○朱雀第一学区
・平成26年8月に各種団体役員を中心とする「朱一学区防災まちづくり協議会」を設置し,同組織が主体となって取組を推進しています。
・平成26年9月実施のまちあるきには,小学生も数多く参加しました。
・平成27年5~6月,総合防災訓練とあわせ,住民参加のワークショップを開催しました。
・今後,朱一小学校の総合学習との連携による「防災マップ」を作成する予定です。
・「地域連携型空き家流通促進事業」にも取り組んでいます。

(4)平成27年度からの取組地区(1年目)
○正親学区
・平成27年5月,住民福祉協議会を母体として「正親学区防災まちづくり委員会」を設置し,現在,同委員会を中心に学習会やまちあるきを進めています。
・平成27年8月,正親こどもまつりでの普及啓発を実施しました。

○柏野学区
・平成27年6月,町内会長及び各種団体長と進め方等について意見交換を開始しました。
・現在,まちあるきを実施しながら,体制づくりや今後の進め方を検討しているところです。

2.優先地区以外の密集市街地
○成逸学区
・平成26年度の準備期間の後,平成27年度から防災まちづくり専門家の派遣を受けて,今すぐできる対策の実践や防災まちづくり方針の検討を行っています。
・既存のまちづくり組織である「成逸まちづくり推進委員会」を中心に,防災まちあるきや「防災まちづくりマップ(町単位)」の作成・配布を行いました。
・「地域連携型空き家流通促進事業」にも取り組んで います。

(別紙4)
防災まちづくり推進事業による改善事例

○まちなかコモンズ(防災ひろば)の整備事例(中京区朱雀第二学区)
老朽化し,屋根が崩れていた空き家を除却して,地域で使える防災ひろばを整備しました。

○危険ブロック塀の改善事例(上京区翔鸞学区)
狭い路地に面した危険なブロック塀を安全な塀に改善しました。

細街路対策事業による改善事例

○緊急避難経路整備の事例(上京区仁和学区)
高低差のある袋路の奥に避難扉を設けるとともに,スライド式の梯子を設置しました。

○袋路始端部建物(トンネル路地)の耐震改修の事例(東山区六原学区)
袋路入口のトンネル部分を耐震改修することで,路地の安全性を確保しました。

路地のある町並みを再生するための新たな道路指定事例

 東山区昭和小路町(六原学区)において,「新たな道路指定制度」創設以降,京都市初となる3項道路指定が実現しました。これにより、道幅は現状とほぼ同じ2.7mのまま建替え等が可能となり、将来的に建替え等がされる時にも、路地の雰囲気を維持することができます。

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