音楽劇『君よ生きて』に出演中のミュージカル俳優、 青木結矢(32)が同性愛をカミングアウト
龍平カンパニーは6月26日より東京公演を皮切りに、全国公演開始となる、戦後70年記念音楽劇『君よ生きて』(脚色・演出/望月龍平)に出演する俳優の青木結矢(32)が、同性愛者であるとカミングアウトしたことをお知らせします。
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青木結矢プロフィール
■カミングアウトのきっかけとなったのは『君よ生きて』のテーマ
「『君よ生きて』には、先人たちが繋いだ命のバトン、という副題がついています。つまり、大戦後のシベリア抑留という過酷な状況に追い込まれても、命のバトンを必死に次代へとつないでくれた先人たちがいた、ということをテーマにした作品です。いま私たちが授かっているその命を大切にして、次へとバトンタッチしていこうというメッセージが込められています。そんな作品で演じているうちに、自分の中にも変化があったんです。」
それは「本当の自分をありのままに出して生きる勇気」をメッセージにして発信することだった。15日に行われた『君よ生きて』の稽古場でも、演出の望月氏ほか主要キャストたちが見守るなか、青木氏は集まった全員に向かってこう語った。
「この作品に出会えたおかげで、はっきりとわかりました。同性愛者である僕にとって、先人から受け継いだ自分の命を大切にするということは、ありのままの自分を隠さずに出していくこと、それが物理的に命を繋げない僕なりの命のバトンだと。」
このサプライズ告白に、これまでの青木氏の人知れぬ苦悩を知っていた俳優仲間のひとりは、思わず感涙した。それほどに、性的マイノリティであるということは、当事者にしか知りえない重圧との闘いが長期にわたり続くのだ。
「自分が同性愛であることに気づいたのは10代のとき。それ以来ずっと僕は、周囲にウソをついてきました。これはとても辛いことです。両親や友達に対してもそうだし、ときには違和感を覚えながらも女性ともお付き合いをしました。
しかし気づいたんです。もうこの重荷を解放する勇気を出す時だと。」
愛や恋愛を語る時にはいつも本当の自分を隠し、うその上塗りを続ける──「それはいつ終わるともしれない、拷問にも近いもの。」と、青木氏は言う。
「中でもいちばんの壁は、やはり親としっかりと向き合えるかどうか、ですよね。僕もずっと隠していましたが、ある経緯があって、第三者の口から親が知ってしまうんです。その結果、今は僕のことを受け入れてもらえていますが、親にとっても受容は勇気のいることでしょう。」
■性的マイノリティを取り巻く現状
近年、「LGBT(同性愛者、両性愛者、トランスジェンダー)の権利」をめぐっては、世界中で大きなうねりが起こっている。
カトリック国家であるアイルランドで5月22日に行われた国民投票では、「同性婚を認める」が6割を超えた。日本でも今年3月末、東京渋谷区が同性愛者カップルを結婚相当と認める「同性パートナーシップ条例」を可決させた。
「世の中が“性の多様性”を認めてくれるということは、当事者たちにとって、とても心強いことです。“孤立しなくていいよ”と言ってくれているわけですから。社会が受容してくれることで、親や周囲の人間関係との折り合いなど、当事者たちが越えるべきハードルが、今後はより低いものになってくれるといいなと思います。」
■カミングアウトの後に不安は?
今回のカミングアウトが、ミュージカル俳優、役者という仕事に今後、どう影響を及ぼすのか、そうしたことへの不安はないのだろうか?
「カミングアウトするということは、すべての人からの視線を、それがどんなものであろうとも受け入れていく、そんな覚悟・勇気の表明です。ですから今後はむしろ、胸を張って、いろんな役にチャレンジしていきたいですね。作品のテーマが女性とのラブロマンスであれば、それは僕のプライベートでは起こり得ない現実なのです。でも愛の形は僕らと何も変わらない。むしろ役者としてチャレンジしていきたい。」
■青木結矢◎プロフィール
1998年関西テレビ「学校の怪談G」で俳優デビュー。舞台では2003年ミュージカル「レ・ミゼラブル」で初舞台。その後「オーファンズ」「ミス・サイゴン」「The Musical AIDA宝塚歌劇 王家に捧ぐ歌より」ミュージカル「文七元結」「twelve」など。9月にはMusical PUBに出演が決まっている。
音楽劇『君よ生きて~先人たちが繋いだ命のバトン~』(演出・脚色/望月龍平)は6月26日(金)~28日(日)まで「東京フィルムセンター映画・俳優専門学校」にて上演。その後、横浜、千葉、名古屋、大阪、福井などで上演。
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