開館50周年を迎えた飛鳥資料館の秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」

    奈良文化財研究所 コラム作寶樓(さほろう)vol.304

    調査・報告
    2025年10月31日 17:00
    【画像1】秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」チラシ画像
    【画像1】秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」チラシ画像

     飛鳥資料館は昭和45年(1970)に開館し、本令和7年(2025)で50周年を迎えました。今年3月には飛鳥資料館の本館と売札所が登録有形文化財(建造物)として登録されるとともに、奈文研が所蔵する「奈良県飛鳥池遺跡出土品」が重要文化財に指定されることとなり、記念の年がより一層、意義深いものとなりました。

     今回は飛鳥資料館開館50周年・「奈良県飛鳥池遺跡出土品」重要文化財指定記念として実施する秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」について紹介します。【画像1】

    飛鳥池遺跡の発掘調査

     奈文研が長年とりくんできた飛鳥地域での発掘調査のなかでも、飛鳥池遺跡の調査では古代の巨大工房の実態を解明し、特筆すべき成果を得ました。飛鳥池遺跡で営まれた工房(飛鳥池工房)では、7世紀後半を中心として金・銀・銅・鉄・ガラス・漆を用いたさまざまな品物が生産されていたことがわかりました。ここでは宮殿などを飾った調度品や、実用の道具、祭祀具などの品々が製作されたほか、最古の鋳造貨幣である富本銭も生産していたことが明らかとなりました。飛鳥時代の国家形成を支えた巨大な総合工房として、飛鳥池遺跡はいまや名実ともに飛鳥を語る上で欠かすことのできない重要遺跡の一つであると言えます。

    出土した多彩な遺物群

    【画像2】飛鳥池遺跡のおもな出土品
    【画像2】飛鳥池遺跡のおもな出土品

     発掘調査では膨大な量のガラス製品・金属製品・土器・瓦などの遺物がみつかり、木簡も多数出土しました。【画像2】【画像3】飛鳥池工房では金糸の製作や純度が高い金銀の精錬など、かつては飛鳥時代にはないと考えられていた技術がみられます。鉄製品をつくる際に出たくずである鉄滓(てっさい)は合計2トン以上も出土し、鍛冶工房が大規模に操業されていたことを示しています。ガラス製品では鉱物から鉛ガラスを生産していたこと、ガラス玉だけでなく装飾パーツも製作していたことが特徴です。土器類には7世紀にさかのぼる鉛釉(なまりゆう)・緑釉(りょくゆう)陶器があり、最古の国産施釉(せゆう)陶器とみられています。そして富本銭については飛鳥池工房で鋳造していたことが判明し、天武天皇12年(683)の銅銭使用と銀銭停止の記事に対応する、最古の鋳造貨幣であることを証拠づけました。木簡は7,760点(うち削屑6,668点)が出土し、飛鳥地域の遺跡として最多を誇ります。工房にかかわる木簡とともに、飛鳥寺東南禅院と密接にかかわる、寺院の資財管理を担った組織の存在を推測させるものが含まれている点が特筆されます。

    【画像3】富本銭と鋳棹(いざお)
    【画像3】富本銭と鋳棹(いざお)

     このように飛鳥池遺跡の出土品は国家的総合工房の操業内容を示す多彩な遺物群、富本銭とその鋳造資料、律令国家形成期の木簡群からなり、当時の官営工房の操業体系と生産技術を考えるうえで学術的に重要な資料であると評価されています。

    開館50周年!飛鳥資料館の秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」

     今回の特別展は重要文化財指定品の大半が展示される貴重な機会となります。ぜひご来場いただき、古代技術の精華をご覧ください。
     このほかに特別展関連の講演会やギャラリートークも予定しています。詳細は飛鳥資料館ホームページや広報物をご覧ください。

    (飛鳥資料館学芸室長 石橋 茂登)

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