シナモンの香り成分に他者とつながりたくなる効果を発見! ― 高齢者の孤立 「社会的フレイル」予防への応用に期待 ―

    企業動向
    2026年7月23日 11:15

    このたび、鹿児島大学水産学部、クラシエ株式会社(薬品カンパニー)の漢方研究所は、食品や生薬として広く利用されているシナモン(生薬名:ケイヒ)の香り成分に、社会性を高める作用があることを発見しました。本研究成果は、高齢者における社会的フレイル(社会とのつながりの低下)の予防や改善への応用が期待されるものです。本研究成果は2026年6月に国際学術誌『Food & Function』に掲載されました。


    シナモン(生薬ケイヒ)

    シナモン(生薬ケイヒ)


    ■本研究のポイント

    1. 高齢者における社会的フレイル(社会とのつながりの低下)は、健康寿命を損なう要因として注目されています。私たちはこれまで、社会性を高める食品や漢方薬、生薬由来成分の探索を進めてきました。


    2. ゼブラフィッシュを用いた試験により、香辛料「シナモン(生薬ケイヒ)」およびその香り成分であるシンナムアルデヒドが、見知らぬ集団に対する社会的接近行動を促進することを発見しました。


    3. シンナムアルデヒドの効果には、脳内のイソトシン(ヒトのオキシトシンに相当)神経系の活性化と、肝臓由来ホルモンFGF21の増加が関与することを明らかにしました。


    4. シナモンの香り成分に社会性を高める効果を見いだした報告はこれまでになく、本研究は社会的フレイルの予防や改善につながる新たな可能性を示す成果です。


    研究成果概要

    研究成果概要

    ゼブラフィッシュ

    ゼブラフィッシュ


    ■研究の概要

    鹿児島大学水産学部食品生命科学分野の西 優貴子大学院生と塩崎 一弘教授ら、クラシエ株式会社(薬品カンパニー)の漢方研究所は、社会的フレイルの予防・改善に役立つ食品成分の探索を目的として、生薬や食品由来化合物が社会性に与える影響を調べました。その結果、ゼブラフィッシュを用いた試験において、シナモン(生薬ケイヒ)およびその香り成分であるシンナムアルデヒドが、見知らぬ集団に対する社会的接近行動を促進することを明らかにしました。この作用は攻撃性の増加によるものではなく、社会的な関心や社会性の高まりによるものでした。さらに、その作用機序を解析した結果、シンナムアルデヒドは脳内のイソトシン(ヒトのオキシトシンに相当)神経系を活性化し、さらにこの作用には肝臓由来ホルモンFGF21が関与することを明らかにしました。

    本研究成果は2026年6月に国際学術誌『Food & Function』に掲載されました。



    ■背景

    高齢化社会の進行に伴い、身体機能や認知機能の低下だけでなく、人とのつながりや社会参加の減少によって生じる「社会的フレイル」が重要な課題となっています。社会的フレイルは、孤立や引きこもりの原因となるだけでなく、身体活動量や食欲の低下、うつ症状の発現などを介して、要介護状態や認知症のリスクを高めることが知られています。

    そのため、社会性や社会参加を維持・促進するための介入法の開発が求められています。しかし、社会性を高める食品成分や生薬成分に関する研究は限られており、その作用機序についても十分には明らかになっていません。私たちはこれまで、ゼブラフィッシュを用いた実験モデルを活用し、社会性を高める食品や漢方薬の作用機序の解明および有効成分の探索を進めてきました。その過程で、漢方製剤である人参養栄湯に社会性を改善する作用を見いだしたことから、本研究ではその構成生薬の一つであるケイヒ(シナモン)に着目し、社会性への影響とその作用機序を解析しました。



    ■研究内容

    本研究では、社会性を評価する実験対象としてゼブラフィッシュを用い、シナモン(生薬ケイヒ)およびその成分が社会行動に与える影響を解析しました。ゼブラフィッシュにシナモンまたはその主要香気成分であるシンナムアルデヒドを投与したところ、なじみのない異魚種への社会的接近行動が有意に増加しました。一方で、攻撃行動の増加は認められず、これらの行動変化は攻撃性ではなく、社会的な関心や社会性の高まりによるものであることが示されました。

    作用機序を解析したところ、シンナムアルデヒドの投与によって脳内のイソトシン量が増加することが明らかとなりました。イソトシンは魚類において社会行動や不安の制御に関与する神経ペプチドであり、哺乳類のオキシトシンに相当します。実際にイソトシン受容体の作用を阻害すると、シンナムアルデヒドによる社会性向上効果は消失しました。

    また、シンナムアルデヒドは肝臓におけるFGF21の発現を増加させ、FGF21の作用を阻害した場合にも同様に社会性向上効果は消失しました。これらの結果から、シンナムアルデヒドは肝臓でFGF21を増加させ、そのシグナルが脳内のイソトシン神経系を活性化することで社会的接近行動を促進することが示唆されました。本研究で注目したシンナムアルデヒドは、古くから漢方で用いられてきた生薬ケイヒに含まれる主要成分です。漢方製剤ではこれらの成分が一定の品質基準のもとで管理されており、本研究成果は伝統医薬の作用機序に科学的根拠を与える知見としても期待されます。



    ■今後の展開

    シナモンは食品や生薬として広く利用されており、その主要成分であるシンナムアルデヒドも食品の香りづけに用いられています。本研究成果は、高齢者の社会的フレイルの予防や改善への応用につながることが期待されます。



    ■掲載論文

    【題名】

    Cinnamaldehyde, a major bioactive component of cinnamon bark, enhances social approach behavior associated with a liver-brain FGF21-isotocin axis in zebrafish.

    (シンナムアルデヒドは肝臓のFGF21-脳内イソトシン軸を介して社会的接近行動を促進する)

    【掲載誌】

    Food & Function

    【URL】

    https://doi.org/10.1039/D6FO00815A (2026年6月19日公開)

    【著者】

    西 優貴子※1、河辺 ももこ※2、道原 成和※2、千葉 殖幹※2、二神 裕子※1、

    兵頭 駿希※1,※3、乾 明夫※4、塩崎 一弘※1,※3


    ※1:鹿児島大学 水産学部 食品生命科学分野 (水圏糖鎖生物学研究室)

    ※2:クラシエ株式会社

    ※3:鹿児島大学大学院 連合農学研究科

    ※4:鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科



    ■鹿児島大学について

    鹿児島大学は、9つの学部と9つの大学院研究科を擁する、南九州における最高学府です。南九州から南西諸島など南北600キロに及ぶ県土を本学のキャンパスとして、そこにある自然・歴史・風土・産業を土台に活動しています。地域とともにある大学として「知」と「智」の力をもって、“進取の精神で、地域と世界の未来に挑む教育研究拠点”となることを目指して進んでまいります。


    鹿児島大学HP    : https://www.kagoshima-u.ac.jp/

    鹿児島大学Instagram: https://www.instagram.com/kagoshima_univ.koho/

    鹿児島大学水産学部 : https://www.fish.kagoshima-u.ac.jp/

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    国立大学法人鹿児島大学

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