約2週間相当の音声で1ヵ月先のうつリスクを予測
産業医科大学との共同研究成果に基づく実証で確認 日常の声から、本人が気づく前にメンタル不調の兆候を捉える技術の実用化へ
主要ポイント
日常業務中の音声データわずか2週間相当分で、1ヵ月後のうつ症状リスクを予測できることをフィールドテストで確認しました
予測の科学的根拠は、産業医科大学との共同研究で構築しJournal of Occupational Healthに掲載された予測モデル(AUC 0.783)です
ESジャパンはこの成果をもとに、職場向けメンタルコンディションサービス「CEEu Mental」を2026年度にサービス展開します
CENTRIC株式会社(本社:東京都豊島区、代表取締役:山田亮、以下「CENTRIC」)と、同社の100%子会社である音声感情解析専門会社ESジャパン株式会社(以下「ESJ」)は、産業医科大学との共同研究成果に基づくフィールドテストにおいて、日常業務中の音声データ約2週間相当分から1ヵ月後のうつ症状リスクを予測できることを確認しました。この予測は、同大学人間工学研究室との共同研究で構築し、国際学術誌Journal of Occupational Healthに掲載された予測モデルに基づくものです。ESJはこの成果を基盤に、声からメンタル不調の兆候をいち早く捉える職場向けサービス「CEEu Mental(シーユー メンタル)」の2026年度展開を進めてまいります。
なぜ「声」でメンタルリスクを予測するのか
厚生労働省の「患者調査」(2023年)によれば、気分障害(うつ病等)の外来患者数は推計156万6,000人に上り、約20年前と比べ2.3倍に増加しています。診断を受けていなくとも心の不調を抱える人は多く、専門家からは「医療機関にかかる手前で支援を受けられる場の整備」が重要との指摘もあります。
厚生労働省の調査によれば、メンタルヘルス上の問題を抱える従業員がいる事業場は68.3%に上ります。うつ病など精神疾患による休職は企業にとって年間数百万円のコスト要因であり、「不調に気づいた時にはもう遅い」という課題は多くの企業が直面しています。
従来のストレスチェック(年1回の質問紙)では、本人が不調を自覚してからの把握にとどまり、予防的な対応が困難でした。これに対し、日常業務中の声を解析する手法は、本人の自覚なしに、かつ継続的、非侵襲に心理状態の変化を捉えることができます。
科学的根拠:JOH掲載の予測モデル
ESJと産業医科大学 人間工学研究室(榎原 毅 教授)は、2023年度から音声感情解析とメンタルヘルスの共同研究を継続しています。
この研究では、コールセンターオペレーター62名を対象とした前向きコホート研究を実施し、音声感情解析サービス「ESAS(イーサス)」で抽出した感情パラメータから、1か月後のうつ症状リスクを予測するモデルを構築しました。このモデルの予測精度はAUC 0.783で、実用化に向けた有望な結果が得られました。成果は2025年、Journal of Occupational Health(日本産業衛生学会の英文公式誌、全世界Q2ランク)に掲載されました(*2)。
また、同大学との先行研究(2024年)では、音声感情解析を活用した組織的介入により、うつ症状指標の改善傾向を確認しています(*1)。
フィールドテストで確認したこと
上記の論文成果を実運用に近づけるため、ESJはCENTRIC(親会社)の熊本支店・和歌山支店で事前同意を得たオペレーター69名を対象に、4か月間のフィールドテストを実施しました。
その結果、以下を確認しました。
ランダム欠損下でも予測可能:論文で検証した標準データは、業務での1か月分の音声データです。一方、実務上は必ずしも同等の連続データを取得できない場合があることを踏まえ、1か月分のデータからランダムに50%を抽出した条件で検証したところ、フルデータとの判定一致率は98.1%を維持しました。これは、ランダムにデータが欠落していても、約2週間程度に相当するデータ量(1か月分の50%相当)が取得できれば、標準データと同程度の精度で1か月先のうつリスクを予測できる可能性を示すものです。
リスクの検出精度:感度70.3%・特異度72.4%。リスクのある方の約7割を正しく検出し、リスクのない方の約7割を正しく除外できる水準です。
予防的介入の手がかり:リスクありと判定された対象者にグループ面談を実施したところ、非介入群と比較して悪化の抑制傾向が確認されました。
CEEu Mentalが届ける価値
これらの成果は、「年1回の質問紙で"今"を知る」から「日常の声で"1か月先"を見通し、早めの対応につなげる」への転換を意味します。
特に、1か月分の連続データが必須ではなく、測定間隔や頻度に欠測がある状況でも活用可能性が示されたことで、導入時のデータ取得負荷を抑えながら運用できる余地が広がりました。これは、現場への実装を進めるうえで大きな意義があります。
ESJはこの技術をメンタルコンディションサービス「CEEu Mental」として2026年度中にサービス展開を開始する計画です。CENTRICのコールセンター拠点でのフィールド実証を進めるとともに、新たなパートナー企業とのARグラスを活用した実証にも着手しています。
引き続き、産業医科大学との共同研究を継続し、計測手法の質保証と科学的根拠の蓄積を進めてまいります。導入にご関心のある企業様からのお問い合わせを歓迎しております。
【主な結果】
・1か月分の音声データからランダムに50%を抽出した条件でも、1か月後のうつ症状リスクを予測可能(約2週間相当、判定一致率98.1%)
・リスク群の検出で感度70.3%、特異度72.4%を確認
・介入群ではCES-D悪化の抑制傾向を確認(図1)
・ワークエンゲージメント「活力」とメンタルリスクの負の相関を確認
・業務KPIの変動が翌月メンタル状態に先行する可能性を示唆
なお、本結果は研究段階のものであり、医療行為や診断を目的としたものではありません。

図 1 介入群・非介入群におけるCES-Dスコアの月次推移
謝辞
本フィールドテストプロジェクトの遂行にあたり、産業医科大学 産業生態科学研究所 人間工学研究室 榎原 毅 教授 には、研究計画の立案、実証設計、結果の解釈に至るまで中心的なご指導を賜りました。専門的見地から多大なるご助言とご支援を賜りましたことに、厚く御礼申し上げます。
また、本フィールドテストプロジェクトの遂行にあたり、福岡教育大学 教育学部 保健体育研究ユニット 樋口善之先生には、主としてデータ分析業務において多大なるご尽力を賜るとともに、研究の進め方や分析結果の解釈について、専門的見地から丁寧なご指導とご助言をいただきました。ここに深く感謝申し上げます。


参考文献
*1 Tani, N., Takao, Y., Noro, S., Fujihara, H., Eguchi, H., Sakai, K., & Ebara, T. (2024). Is organizational intervention using Layered Voice Analysis effective in addressing operator mental health in call centers? A randomized controlled trial. Journal of Occupational Health, 66(1), uiae047. https://doi.org/10.1093/JOCCUH/uiae047
*2 Tani, N., Takao, Y., Noro, S., Sakai, K., Eguchi, H., & Ebara, T. (2025). Development of an objective early detection model for depressive symptoms using voice emotion analysis technology: empirical prospective cohort study among call center operators. Journal of Occupational Health, 67(1), uiaf060.
What digital health technology types are used in mental health prevention and intervention?(Journal of Occupational Health)
参考①:11のデジタルヘルステクノロジーカテゴリーの一つにvoice and emotion analysisを明記
https://academic.oup.com/joh/article/66/1/uiad003/7404914
参考②: DeLight Project(AMED):DHTの学術研究トレンド(2003–2022)
研究トレンド:DeLight Project(TR-Article)によるIEEEデータベース解析では、2003–2022年の技術論文数で音声・感情解析が最多(11分類の中で最上位)。今後のメンタルヘルス領域での活用が期待される。https://delight.sanei.or.jp/healthcare_question/tr_article/individual.html?entry_id=62
参考③:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」(2024年12月20日公表) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
参考④:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(2025年公表) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r06-46-50_gaikyo.pdf
会社概要
ESジャパン株式会社 会社概要
感情解析の技術は常に進化を続けています。私たちESジャパンは、この音声感情解析をもとにお客様の現在、そして未来にわたり課題を解決することを使命として、新しいソリューションを提供してまいります。
会社名 : ESジャパン株式会社
所在地 : 東京都豊島区池袋2-50-9 第三共立ビル5階
設立 : 令和元年6月
代表 : 代表取締役 山田 亮
資本金 : 1,000万円
事業内容 : 音声感情解析を用いたソリューションの開発販売及び保守
コーポレートサイト: https://www.es-jpn.jp/
CENTRIC株式会社
2009年設立、コンタクトセンターの運営事業と音声感情解析の研究・開発事業に取り組んでいます。国内3拠点にセンターを有し、国内大手量販店から小規模な通販事業者まで幅広いクライアントの顧客接点周辺サービスを受託しています。音声感情解析システムをコンタクトセンターに国内初導入(※)し、通話内容の確認、応対品質の向上に日々努め、企業ミッションである「心豊かな社会の実現」を目指します。
※当社調べ
会社名 : CENTRIC株式会社
所在地 : 東京都豊島区池袋2-50-9 第三共立ビル5F
設立 : 2009年4月
代表 : 代表取締役 山田 亮
資本金 : 3,000万円
事業内容 : コンタクトセンター運営事業
: コンタクトセンターコンサルティング事業
: 音声感情解析事業
コーポレートサイト: https://centric.co.jp/
【ESASサービスについて】
音声感情解析サービス「ESAS」はこれまでにさまざまな企業に導入され、音声認識・音声感情解析サービス、オンライン面接サービス、パーソナリティー診断サービスなどに活用されています。今後はメンタルヘルスケア領域での感情解析や、Web会議での顧客感情分析など、さまざまな業界での活用が期待されています。本研究成果の社会実装と保護に向け、知財(出願中・詳細非開示)・法務・倫理の観点から体制整備を進めています。
詳細はESジャパンホームページよりご確認ください:https://www.es-jpn.jp/
関連トピックス
2023/4:CENTRIC、音声感情解析「ESAS」に関する特許を取得 https://www.atpress.ne.jp/news/352572
2024/9:うつ症状早期予測モデルの実証開始 https://www.atpress.ne.jp/news/408921
2024/10:音声感情解析を用いた組織的介入(JOH掲載)https://www.atpress.ne.jp/news/413435
2025/11:1か月先のうつ症状リスク予測モデルがJOHに採択 https://centric.co.jp/news/1647/
























