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    ベイン・アンド・カンパニー 「2025年 グローバル ラグジュアリー市場レポート」を発行  2025年の世界のラグジュアリー市場は不確実性が続くなかでも 1.44兆ユーロ規模で横ばいを維持

    企業動向
    2025年12月10日 10:00

    ● 経済・地政学的な不確実性や消費者行動の急速な変化が続くなかでも相対的な安定性を確保

    ● 「所有」から「体験」へ 消費者価値観の構造転換が市場を再形成

    ● 利益率の低下によって、ブランドのパフォーマンス改革とAI活用による効率化が課題

    ● 今後10年間で年率4~6%の成長の見込み



    ベイン・アンド・カンパニーとイタリアのラグジュアリーメーカー業界団体アルタガンマ財団が発表した最新の調査によると、世界のラグジュアリー市場は2025年も引き続き底堅さを示し、経済・地政学的な逆風や、消費者嗜好の大きな変化が続くなかでも、全体のラグジュアリー消費は前年とほぼ同水準で安定する見通しです。世界のラグジュアリー市場全体の消費は2025年に1.44兆ユーロに達すると予測され、一定為替ベースでは前年比+1%~-1%の範囲で横ばいの推移が見込まれ2026年に向けて段階的な改善が続くと予測されています。


    しかしながら、この安定性の裏側では、市場の根幹を揺るがすような構造的な大転換が進んでいます。消費者は、見せるための消費から、ウェルネス、つながり、自分へのご褒美といった「体験型の贅沢」を優先し始めています。本レポートは、こうした構造的な大転換により、高級宿泊・観光サービス、クルーズ、高級レストランなどの体験型カテゴリーが市場成長を力強く押し上げる一方で、高級車などの従来型ラグジュアリー耐久財は伸び悩み、セグメント構造の再編が進んでいると指摘しています。


    個人向けラグジュアリー市場については、2025年の市場規模は3,580億ユーロと予測され、2023年(3,690億ユーロ)および2024年(3,640億ユーロ)と比べて概ね横ばいの見通しです。現在の為替ベースでは約2%減ですが、一定為替レートでは横ばいで、市場はパンデミック後の急回復を経て成熟局面に入っています。超富裕層が高級品需要を支える一方で、準富裕層を中心としたラグジュアリー志向の層の買い控えが続き、伝統的なラグジュアリー消費への圧力となっています。


    ラグジュアリー消費の各セグメントを見ると、自動車は全価格帯で販売台数が減少しており、堅調なのは高価格帯のスポーツモデルのみとなっています。一方、ヨットやプライベートジェットは引き続き力強い成長を示しています。

    美術品は停滞する一方で、デザイン家具は安定推移。ワイン&スピリッツは全体として期待外れの結果となる中、プレミアムスパークリングやイタリア赤ワインが健闘しています。また、高級レストラン需要はアジア、中東、リゾート地で急拡大しており、体験を求める若い旅行者が成長を後押ししています。さらに、特別な旅行やアクティビティ、サファリツアー、スポーツのVIP席観戦等といった領域が、“即時性のある特別体験”としてラグジュアリーの新しい価値を形づくりつつあります。


    ラグジュアリー消費では、価格帯別に二極化が見られます。市場の約4割を占める高価格帯は、2023~2025年の年平均成長率(CAGR)が、マイナス1からマイナス3%とわずかに縮小。一方、手頃な価格帯も同期間に横ばいからマイナス2%で推移しています。市場の約4割を占める高価格帯は、2023~2025年の年平均成長率(CAGR)がマイナス1~3%とわずかに縮小。一方、手頃な価格帯(accessible)も同期間に横ばいからマイナス2%で推移しています。



    【個人向けラグジュアリー市場:課題と不確実性に直面】

    個人向けラグジュアリー市場は、2025年通年では概ね横ばいで推移する見通しである一方、マクロ経済や地政学的な不透明感に直面しており、年末に向けて第4四半期の動向が年間の最終結果を大きく左右する重要な時期を迎えています。こうした個人向けラグジュアリー市場の再調整が進むなか、カテゴリー別では以下のような動きが見られます。


    ● ジュエリー:+4~6%、底堅い需要、感情的価値、カスタマイズ商品の拡大が牽引

    ● アイウェア:+2~4%、デザイン革新、多用途性、デジタル統合が追い風

    ● ビューティ(特にフレグランス):全体は安定、フレグランスが最も活発、AIによるパーソナライゼーションが浸透、高価格帯のスキンケアとメイクは、ブランド間でパフォーマンスの二極化が進行

    ● 時計:二極化が進行、高価格帯モデルは堅調、関税・価格上昇でリセール市場も拡大

    ● アパレル:手頃な価格帯のブランドが好調で、全体を下支え

    ● 革製品:新たな人気の主力商品の不足のなか、遊び心あるデザインが下支え

    ● 靴:価格感度の高まりとスポーツカテゴリーとの競合で苦戦も、存在感あるデザインには回復の兆し


    全体として、手頃な価格帯のラグジュアリーファッションは回復基調にあり、節約志向の消費者の取り込み、既存のロイヤル顧客の再活性化、そして価値志向の強いZ世代の獲得に成功したブランドが成長を牽引しています。



    【販売チャネルで値引き圧力が進む一方、ブランドの店舗網は厳選型に縮小】

    実店舗チャネルでは、価値と手頃感を求める消費者の動きからアウトレットが好調です。オンラインチャネルは横ばいで推移する一方、直営店はやや減少傾向にあり、2025年5月頃からの約6カ月間で店舗面積が合計2万5,000平方メートル縮小しました。また、米国のデパートでは2024年以降、売り場面積が約10%縮小されています。


    本レポートでは、ブランドは実店舗のあり方を再構築すべきだと提言しており、感情に訴える力、没入感、パーソナライズされたつながりを提供する、より大規模で体験重視の旗艦店へと集約していくことが重要だと指摘しています。



    【地域間のばらつきが拡大、新興市場が成長を牽引】

    本レポートの分析によると、2025年の世界のラグジュアリー市場は、地域間の成長の不均衡と消費者動態の変化が重なり合う重要な再調整局面に入っています。地域別では以下の動きが見られます。


    ・ 中国本土

    ― マイナス3~5%の見込み

    ― 手頃な価格帯の国内ブランドや体験志向カテゴリーへのシフトが進行


    ・ 日本

    ― 2024年の急成長の反動で減速

    ― 観光需要が落ち着き、勢いに陰り


    ・ 欧州

    ― マイナス1~3%の見込み

    ― 強いユーロと地政学的緊張による観光客流入の鈍化が背景


    ・ アメリカ大陸

    ― +0~2%の見込み(不安定さは残るが底堅い推移)

    ― 米国の国内需要回復が下支え

    ― メキシコ・ブラジルでラグジュアリー市場が拡大


    ・ 中東

    ― 最も強い成長地域

    ― +4~6%の成長の見込み

    ― ドバイ・アブダビの観光拡大

    ― サウジアラビアの堅調な需要が牽引


    ・ 新興地域(中東、ラテンアメリカ、東南アジア、インド、アフリカ)

    ― 2025年の合計市場規模は約450億ユーロ(中国本土市場とほぼ同規模に達する見込み)

    ― これらの地域は、ラグジュアリー市場の新たな成長ポテンシャル

    ― 東南アジア:Z世代による手頃な価格帯のラグジュアリー需要が拡大

    ― インド:中間層が急速に増加

    ― アフリカ:ローカルブランドの存在感が高まり



    【ラグジュアリー消費者基盤は短期的には縮小し、大口顧客の支出も横ばいに】

    本レポートでは、短期的にみるとラグジュアリーの消費者基盤が縮小と分断を続けていることが強調されています。ラグジュアリー消費者の数は、2022年の4億人から2025年には約3.4億人へと減少しました。


    さらに、消費行動の分断も進んでおり、購入頻度は減り、より小さな「プチ贅沢」や値引きチャネルを好む傾向が強まっています。消費は体験、手頃な代替商品、中古(リセール)へとシフトしつつあり、ラグジュアリーとの関わり方そのものが構造的な再編局面に入っています。一方、市場を牽引してきた大口顧客の支出も横ばいになりつつあります。この層の市場シェアは、2019年の30%(880億ユーロ)から2024年には45%(1,650億ユーロ)へと拡大しましたが、2025年は46~47%(1,650億ユーロ)で頭打ちとなる見通しです。



    【利益率は2009年水準まで低下】

    ラグジュアリー業界では、収益成長の伸び悩みや運営コストの上昇を背景に利益率が圧迫され、収益性は2009年の水準へと後退しています。個人向けラグジュアリーブランドのEBIT(利払い・税引き前利益)マージンは、2012年に23%のピークを記録しましたが、2025年には15~16%まで低下する見通しで、これは2009年と同水準にあたります。

    こうした利益率の悪化により、ここ12カ月で業界全体の企業価値は約1,000億ユーロ減少したと推計されています。



    【2035年までの市場展望】

    本レポートは、長期的な見通しとして、個人向けラグジュアリー市場が今後も年率4~6%の成長を維持することは十分に現実的だと結論づけています。その背景には、消費者基盤の拡大と根強い需要があります。2035年には、個人向けラグジュアリー市場は5,250億~6,250億ユーロ規模に達し、ラグジュアリー市場全体では2.2兆~2.7兆ユーロへと拡大する見通しです。



    【ベイン・アンド・カンパニーについて】

    ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65拠点のネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。ベインのクライアントの株価は市場平均に対し約4倍のパフォーマンスを達成しており、私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、ベインは環境・社会・倫理における企業のパフォーマンス評価を行っているEcoVadisより、全企業の中でも上位1%に位置づけられるプラチナ評価を獲得しており、社会課題に取り組む非営利組織に対し今後10年間で10億ドル以上に相当する無償のコンサルティング支援を行うことを公約しています。


    商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド

    所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階

    URL   : https://www.bain.co.jp

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