【岡山理科大学】「衝突回数=円周率」を現実の実験で実証

    摩擦の影響を避ける“吊り下げ式”装置で、質量比1:100の31回(=3.1)を再現

    調査・報告
    2025年8月29日 13:30

    岡山理科大学などの研究グループは、2つの物体と壁の衝突回数が円周率(π)に一致するという既知の理論を、現実環境の実験で再現しました。物体を空中に吊り下げる装置を用いてエネルギー損失を抑え、2つの物体の質量比1:100で衝突回数31回(=円周率3.1に対応)を繰り返し確認。研究成果はEuropean Journal of Physicsに掲載されました。
    ■研究背景
    1990年代には、2つの物体と壁の衝突回数が円周率に対応することは理論的に知られていました(例:2つの物体の質量比が1:1→3回、1:100→31回、1:10000→314回)。しかし、現実の装置では摩擦や回転の影響で理論通りの回数を得るのが困難でした。本研究では、物体を床に置かず空中に吊る方式で摩擦を回避し、理論通りの回数を実測しました。

    ■実験のポイント
    装置:物体を吊り下げて往復運動させ、壁との衝突と2物体間の衝突をカウント。
    結果:2つの物体の質量比1:100で合計31回(=3.1)の衝突を複数回測定=理論を現実の実験で実証。

    ■論文情報
    掲載誌:European Journal of Physics
    論文名:Estimation of π via experiment
    著者:長尾桂子(岡山理科大学)、坂野悠我(岡山理科大学・広島大学)、篠原 隆(岡山理科大学)、松田 雄二(新居浜工業高等専門学校)、高見 寿(岡山理科大学・おもしろ実験研究所)
    掲載日:2025年7月28日
    論文掲載ページ: https://doi.org/10.1088/1361-6404/adebc0

    ■お問い合わせ
    岡山理科大学 企画広報課 TEL:086-256-8508 E-mail:kikaku-koho@ous.ac.jp

    【ポイント】
    円周率の小数第1位までにあたる3.1を実験で測定することに成功。
    理論上知られていた「実験での物体の衝突回数と円周率の関係」を、エネルギー損失を極力抑えた実験装置によって、現実の環境下でも再現できることを示した。


    【発表の概要】
    2つの物体と壁の衝突の回数が円周率と一致することは、これまで理論的に知られていました。しかし、衝突の回数と円周率が一致するためには、摩擦や抵抗などがない理想化された状況が必要なため、現実の環境下でこの方法で円周率を測ることは難しいと考えられてきました。今回の研究では、衝突させる物体を空中に吊り下げる装置を設計し、摩擦によるエネルギー損失を最小限に抑えました。このような工夫によって、円周率3.1に対応する衝突回数31回を実験で測定し、円周率3.1を現実の実験で導出することに成功しました。


    【研究の背景】
    1990年代に、2つの物体と壁の衝突の回数が円周率と一致することが理論的に示されました。
    例えば、重さの比が1:1の2つの物体を用意して、片方の物体Pを止まっている物体Qにぶつけると、物体Qは動き出します。物体Qは壁にぶつかり、跳ね返ってまた物体Pとぶつかります。これ以上の衝突は起こらないので、合計3回の衝突が起こったことになります。これが、円周率3.14…の最初の3に対応します。
    では、2つの物体の重さの比を1:100にするとどうなるでしょうか。さきほどと同じように重い方の物体を軽い方にぶつけると、すべての衝突が終わるまでに、今度は合計31回の衝突が起こります。これが、円周率の小数1桁目までの3.1に対応します。同様に、重さの比を1:10000にすると、衝突は合計で314回起こり、円周率の小数2桁目までの3.14が求められます。
    一見無関係に思われる衝突回数と円周率の間にこのような関係があることは興味深く、YouTubeなどでも取り上げられて注目を集めました。しかし、理論が取り上げられる一方で、実際に実験で円周率を求めることは困難でした。摩擦などによるエネルギー損失や物体の回転の影響で、理論通りの衝突回数が得られないことが原因でした。


    【新たに成功したこと】
    重さの比が1:100の2つの物体と壁との衝突で、理論値と一致する衝突回数31回を複数回測定し、円周率3.1を実験で測ることに成功しました。
    衝突回数から円周率を求めるためには、摩擦や抵抗などによるエネルギー損失がない、理想化された状況が必要です。今回の研究では、物体を床の上で移動させるのではなく、物体を吊り下げるという発想の転換によって、物体と床の間に起こる摩擦の問題を解決しました。


    【論文情報】
    掲載誌:European Journal of Physics
    論文名:Estimation of π via experiment
    著者:長尾桂子(岡山理科大学)、坂野悠我(岡山理科大学・広島大学)、篠原 隆(岡山理科大学)、松田 雄二(新居浜工業高等専門学校)、高見 寿(岡山理科大学・おもしろ実験研究所)
    掲載日:2025年7月28日
    論文掲載ページ: https://doi.org/10.1088/1361-6404/adebc0

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