日本の工芸を海外に向けて、わかりやすく発信するための3種の「...

日本の工芸を海外に向けて、わかりやすく発信するための 3種の「工芸英訳ガイドライン」印刷版を2023年7月末リリース

日本文化の魅力の神髄を伝えるために

一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパンは、日本の工芸を海外に向けて発信するにあたり、より的確にその魅力を伝えることができる英訳のノウハウとして構築した「工芸英訳ガイドライン」シリーズの冊子を7月28日に発刊いたします。


伝わりやすい英訳のために必要な諸問題を系統立てて考え、実践的に役立つよう構築したのが「工芸英訳ガイドライン」シリーズです。

第一弾「やきもの、漆、石川県の工芸品を中心に」、第二弾「心構え・基礎編」、特別編「加賀象嵌」は、Webサイト上で無料ダウンロードが可能なPDF版として一般公開していました。

このたび多くの方の要望に応え、より読みやすい印刷版としてA5サイズの冊子を発刊することとなりました。



【開発の背景】

インバウンドの拡大と合わせ、海外における日本の文化への関心が増大しています。東京や大阪などの都市部だけでなく、地方の暮らしや文化、地域の自然素材を活かした着物や漆、やきものなどものづくりにも目を向けられるようになりました。

しかしそれら工芸分野の特徴を表す用語は、現代の日本に暮らす人でも馴染みが少なく、ましてそれを翻訳することはさらに困難です。そのため言葉をそのまま直訳する、あるいは日本語の音をただローマ字表記するといった事例が数多く見られます。これでは言葉の正しい意味が伝わらず、工芸の魅力を十分に理解してもらえないばかりか、場合によっては興味を失わせることすらあります。せっかく関心の対象となっても翻訳のせいで誤解されてしまい、文化的、経済的な損失を招いているのが現状です。

日本の工芸を横断的に応援する中間支援団体である一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン(東京)は、これを工芸インバウンドにおける喫緊の課題と考え、6年前より国内外の有識者の協力を得ながら取り組んできました。


工芸英訳ガイドライン


[対象者]

・工芸に関わる人

─ 美術館・博物館や伝統産業工芸館などの文化施設、工芸分野の販売

・ビジネス、観光に携わる人、工芸のつくり手

・日本の工芸品の英語化に携わる人

─ 多言語化担当者、翻訳者、通訳・ガイドなど ※英語能力のある人

・日本の工芸に興味・関心のある英語圏の日本語話者

・日本語と英文を併記する、カタログ、ガイドブック、チラシ、Webサイトのデザイン・レイアウトを実際に行うデザイナー。その内容をチェックする担当者、編集者



[A5冊子版の発行]

工芸の翻訳の問題を多角的に示し、解決への糸口を示したA5サイズの冊子版の販売を開始します。

ハンディなA5サイズの印刷版は1冊2,000円です。なお、PDF版はすべてザ・クリエイション・オブ・ジャパンのサイト内で無料ダウンロード可能です。

工芸産地はもちろん、産業・美術関係者、文化財関係の多言語化の従事者や通訳ガイドのかたには、ぜひ印刷版をお勧めします。

購入ご希望のかたは、ご希望の冊子名・お名前・送付先・メールアドレス(またはお電話)を明記のうえ、下記宛てにメールにてお申込みください。郵送にてお届けいたします。

Mail: info@takagamine.jp



[それぞれのポイント]

第一弾「やきもの、漆、石川県の工芸品を中心に」:

“問題点を知る”=公的な文献やWebサイトなどで見られるバラバラな訳語を例示します。よく用いられる英訳語でも英語話者にとっては「伝わりにくい」あるいは「適切とは言えない」ものもあることなど、この問題への考え方を提示しています。巻末には要注意訳語リストを収録。


第二弾「心構え・基礎編」

“海外の反応がわかる”=どの言葉が通じているのか、いないのか。工芸分野の言葉を英訳する際に生まれる問題を検証。英語話者からの視点を交えながら、大文字小文字、ハイフンなど最低限の英語表記ルールの基礎を整理しました。日本の工芸を紹介していく際に必要な、基本的な言葉(工芸品名など)を収録。


特別編「加賀象嵌」

“分野別対訳表のロールモデル”=金工の一つ、加賀象嵌を表現するための用語の推薦訳語となる英語表現、実践的な対象訳語表を収録。制作工程を日英バイリンガルで説明するなど、金工象嵌そのものの理解を深める内容です。地域や世代によっても異なる工程や日本語での用語の定義づけを、作家・職人からの聞き取り調査により行いました。金沢市との共同編纂です。


本書をロールモデルとして、今後、「やきもの」「きもの/染織」編などの協力者を募集しています。



[問題の例]

・「海外に同様な工芸技術が存在し該当する言葉があるのに、その認識や知識がないせいで、そのまま日本語で覚えてもらおうとする(日本語のローマ字表記化)」

→英語話者にとっては呪文のように映る意味不明な文字列ができあがる

例) Noborigama、Sometsuke

・「“アルファベットで書いてあれば安心”というレベルの英訳が多く、きちんと伝わるかどうかに意識を向けていない」

→恥ずかしいスペルミス、記号やスペースのでたらめな使い方など

・「英語と日本語では言語体系・区分が違うことを理解していない」

→1語⇔1語の対訳をしてしまうことで、本来の意味とはかけはなれた翻訳になる

・「本来同じものなのに、異なる訳語がたくさん生まれている」

→英語話者にとって、それが同一のものを指すのか異なるのかがわからない

例) 九谷焼=Kutaniyaki ceramics, Kutani-yaki ceramics,

Kutani Porcelain, Kutani ware, Kanazawa Kutani pottery、

Kutani Ceramics, Kutani Ware, Kutani-Ware, Kutani ceramics,

Kutani-yaki Porcelain, Kutani ware, Kutani porcelain, Kutani-ware

Kutani chinaware, Kutani ceramics

窯元=Kiln, Studio, Pottery, Gama, Gama-kiln, Tobo

・「旧藩名、および藩名を冠した産品、江戸時代の施設名などの固有名詞を、ただローマ字表記するだけで満足してしまう」

→特別な歴史的・文化的背景の知識を持たない英語話者が理解するのはほぼ不可能



■第一弾「工芸」英訳ガイドライン

やきもの、漆、石川県の工芸品を中心に ─こんなにバラバラ!─


[目次]

1 日本特有の技や素材をどう訳すか

2 「〇〇焼」「〇〇塗」をどう訳すか 地域の特産品的工芸

3 「私は〇〇家(師)です」をどう訳すか 職業を英語で称する

4 作品名、作者名、時代、所蔵の表し方.

5 発音記号(ハイフン、マクロン)の使い方

6 「工芸」をどう伝えるか KogeiとCraft

7 これは伝わらない/これなら伝わる工芸用語の英訳例

8 巻末資料

  「文化財の英語解説のあり方について」(平成28年7月)より

  「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」

   (平成26年3月 観光庁)より


ガイドラインの作成に際し事例参照した図録、書籍、Webサイト一覧


第一弾 コンテンツ例1

第一弾 コンテンツ例2

第一弾 PDF版ダウンロード


■第二弾 「工芸」英訳ガイドライン

心構え・基礎編 ─その訳語、伝わっていません!─


[目次]

第1章 海外から見た日本の工芸英訳

1 ロンドンで100人にきいてきました/この訳語、伝わっていますか?

2 ロンドンで100人にきいてきました/訪日観光客の目線で産地を訪ねてみたら

3 ロンドンで有識者にききました/国宝の茶碗にふさわしい訳語はどれか

4 「伝わっていない」と認識しよう

  参考資料 講演「日本の工芸と翻訳における課題」


第2章 工芸用語・英訳の基礎

1 産地の工芸品名の訳し方

2 typeとstyleの考え方

3 日本語と海外でその意味が異なって使われている言葉

  参考資料 シンポジウム「工芸英訳のための共通ルールづくりに向けて」


第3章 表記のイロハ

1 英文の表記の基本

2 日本にしかない独自の工芸の素材や技名はどう訳す?

  参考資料英語テキストの中の日本語(ローマ字表記)の扱い方

3 SWET(Society of Writers, Editors, and Translators)に学ぶ

  使用するフォントとハイフンについての「6つのルール」

4 SWET(Society of Writers, Editors, and Translators)に学ぶ

  「すべて大文字」で表記の問題


第4章 和英翻訳の心構えと参考にしたいサイト


第二弾 コンテンツ例1

第二弾 コンテンツ例2

第二弾 PDF版ダウンロード


■特別編 かなざわ工芸英訳ガイドライン

加賀象嵌


[目次]

第1章 加賀象嵌とは

第2章 加賀象嵌の作り方・工程

第3章 象嵌用語の手引き

第4章 訳語例一覧


特別編 コンテンツ例1

特別編 コンテンツ例2

特別編 コンテンツ例3

特別編 PDF版ダウンロード


[今後の展開について]

英語人口は世界人口73億人の5分の1にあたる15億人とされる一方で、日本語人口は1億2,500万人といわれます。まず英語で伝わることが肝要です。今後さらに日本の工芸の情報が多くの人に届き、正当な評価を得られるためには、重点分野毎に改めて言葉を調査し、分類・整理を行う必要があります。職人や研究者などしかるべき専門家の方々と協力体制を構築することができれば、3年でひとつの分野の対訳表をつくることが可能です。

工芸は大きな観光コンテンツのひとつであり、地域経済に直結するモノです。国際文化交流や観光・商業の将来的な振興に関わる重要な事業として、今こそ、言葉のインフラ整備をすすめてゆくべきと私たちは考えています。今後、「やきもの編」「きもの/染織編」を編纂すべく、多くの協力者並びに支援者を求めています。

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