人魚ミイラの実態解明-圓珠院所蔵『人魚のミイラ』研究最終報告...

人魚ミイラの実態解明-圓珠院所蔵『人魚のミイラ』研究最終報告-

人魚のミイラとは一体何だったのか

2023年2月7日(火)、約1年かけて実施された「圓珠院所蔵『人魚のミイラ』を科学的に分析するプロジェクトの最終報告を実施しました。
図9:人魚上半身の3D再構成画像
図9:人魚上半身の3D再構成画像

科学調査によりわかったこと

表面観察

・頭部、眉、口の周辺に体毛がある。
・眼窩は正面を向く。
・耳介(外耳)があり外耳道が開口する、鼻および鼻孔がある。
・歯はすべて円錐形で先端が後方(口の中側)にややカーブしている。肉食性の魚類の顎で、種類は明らかではない。
・両腕があり、指は5本、平爪を有する。
・下半身は、背ビレ、腹ビレ、臀ビレ、尾ビレを有し、ウロコに覆われる。
・体表に砂や炭の粉を糊状のもので溶いた塗料が塗られている。
人魚収蔵状況
人魚収蔵状況

X線、X線CT撮影によるによる観察

・木や金属の心材は無く、内部は布、紙、綿などからなる。
・腕、肩、および首から頬にかけてフグ科魚類の皮が使われている。
・背ビレ、尻ビレ、腹ビレの鰭条および鰭を支える担鰭骨、尾部骨格を確認することができた。
・首の奥と下半身に金属製の針がある。
人魚上半身の縦断面、内部は布などの 詰め物でできており、心材は認められない
人魚上半身の縦断面、内部は布などの 詰め物でできており、心材は認められない

走査電子顕微鏡による観察

・体毛には哺乳類の毛で、毛小皮(キューティクル)が観察できる。
・爪は動物の角質が使われている。

炭素14年代測定

剥離したウロコの年代は1800年代後半の可能性が高い。

蛍光X線分析

特別な防腐処理は施されていない。

DNA分析

DNAは検出できなかった。

科学調査のまとめ


圓珠院所蔵の『人魚干物』は、魚体部は、ニベ科の魚類の皮で覆われ、上半身は、布、紙。綿などの詰め物と漆喰様の物質を土台として、積層した紙とフグの皮でできており、1800年台後半ごろのものと推測される。
3D上半身回転
3D上半身回転

歴史・民俗の立場から

書付について

人魚のミイラと一緒に残されている書付から、円珠院の人魚に直接繋がる情報は得られていなかった。書付には、人魚は『元文年間(1736(元文元)年~1740(元文5)年(徳川吉宗の治世で享保のあと)に、高知(土州)沖で漁網にかかったものが漁師によって、大阪に運ばれ、販売されていたものを、備后(備後)福山の小島直叙氏の先祖が買い求め、以後、小島家の家宝とした。明治36(1906)年11月に小島氏から小森豊治郎氏に売り渡した』とある。これらの具体的な人名などについて、確証のある情報は得られなかった。

日本に現存する人魚ミイラについて

・確認できるのは12体で、円珠院の人魚が13体目、岡山県内でさらに2体が確認された。これらの多くは寺社と博物館が所蔵している。人魚のミイラのポーズについては、大きく2つの系統、ムンクの叫びの様な姿勢のものと、腹ばい型の姿勢のものが認められる。
・江戸時代以降、数少ないが人魚のミイラについて記録が存在する。
例:天保3年(1832)の『名陽見聞図会』(小田切春江、東洋文庫)の見世物の図
・大英博物館・ライデン国立民族学博物館など外国にも日本製と思われる人魚が存在する。
→江戸期以降、多くの人魚が作製され、外国や国内に存在(流通)していた。

圓珠院所蔵「人魚のミイラ」研究最終報告を終えて

健康科学科 教授 加藤
健康科学科 教授 加藤
この研究プロジェクトは、圓珠院様、及びご住職のご協力とご厚意によって実現できました。まずそのことを感謝したいと思います。
幼い頃、少年雑誌に掲載されている妖怪や伝説の生き物の話をわくわくしながら読んでいました。
それから何十年もたって、自分がそのようなものにふれ、直接研究する機会に恵まれるとは考えてもいませんでした。
タイムマシンがあったら、おまえは大人になって人魚のミイラを調べることができるんだぞと昔の自分に教えてあげたいです。
この、プロジェクトで多くの情報が得られましたが、まだ、すべてのことが明らかになっているわけではありません。
今回の報告で一応の区切りとしますが、今後もこの圓珠院の人魚のミイラについては研究が継続される予定です。

プロジェクトの詳細と沿革

仏像や宗教絵画を含め、信仰や伝統・文化は芸術と不可分な関係として歴史的にも長く存在してきました。
本学はアート(感性)&サイエンス(理性)教育を新ビジョンに定め、知性と感性を兼ね備えた創造力豊かな人材の育成を進めています。
このたび県内に唯一その存在が確認されている人魚のミイラについて、ミイラを所蔵している宗教法人 圓珠院のご協力の下、倉敷市立自然史博物館、岡山民俗学会理事木下浩氏とともに、当大学の専門教員たちが、X 線CT 撮影や遺伝子分析など、それぞれの専門分野から徹底的に科学的分析を行ってきました。
化石哺乳類の専門家である加藤敬史教授が上半身、魚類学を専門とする山野ひとみ准教授が魚体部の形態分析を、分子生物学を専門とする武光浩史准教授が剥離物のDNA 分析等を行うとともに、木下浩氏が民俗学の視点から調査・分析を担当しておりました。
2022 年 2月2日 本プロジェクト開始
2022年 4月4日 研究中間報告としてX 線撮影、X 線 CT 撮影でえられた画像解析結果を発表
2022年9月22日 高解像度のX線CT撮影を実施し、より詳細な分析のために最終報告延期を発表
2023年 2月7日 本プロジェクト最終報告

関連サイト

倉敷芸術科学大学 Webサイト
https://www.kusa.ac.jp/
倉敷芸術科学大学 最終報告全文掲載ページ
https://www.kusa.ac.jp/news/2023/02/20230207mermaid.html

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