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社団法人全国学力研究会、東京大学の推薦入試導入についての見解を発表

 教育に関するシンポジウム・講演会の開催や、教材開発などを行なっている社団法人全国学力研究会(所在地:東京都港区、理事長:河本 敏浩)は、このたび、東京大学の推薦入試導入に対する見解を発表いたしました。

 2013年3月に、東京大学が推薦入試導入を打ち出しましたが、批判の多い推薦入試をなぜ導入しようとするのか、現在起きつつある教育の世界の地殻変動を視野に入れ、その背景について分析をいたしました。東京大学が導入を検討している秋入学制度も今やうやむやになりつつありますが、これに加えて、批判の多い推薦入試になぜ東京大学が乗り出すのか、という疑問を抱く方も多いと考えられます。
 そういった疑問に対して、昨今の教育環境を踏まえ、本協会では以下のような見解に至りました。


■推薦入試導入の背景
【海外との競争を見据えた変革】
 東京大学が推薦入試を導入する要因を挙げるならば、今後、東京大学が入学者集めに苦戦する可能性が大いにあるということです。そのライバルとして考えられるのは、米国、英国の大学です。

 現在、ハーバードやイェールなど、米国の一級大学への入学を前提とした高校生対象の塾が東京で林立しつつあり、米国の一級大学に進学しようとする高校生は、今や無視できない勢力になりつつあります。

 また、そういった塾の登場だけでなく、米国大学の気風を誇る秋田の国際教養大学の偏差値上昇も、こういったグローバル志向の流れを象徴しています。

 文科省は愛知県の旭丘高校など5校を国際バカロレア導入実験校(※)として選定しました。この国際バカロレアを意識する高校生は、グローバル選抜へ向かうことを前提として学習を行います。

 米国の一級大学は優秀な高校生を世界中からスカウトしており、高校生にとって大切なのは、優秀だと思われる実績を積む事で、ペーパー試験は条件の一つに過ぎません。東京大学の推薦入試導入は、このグローバル化したスカウト競争に名乗りを上げるということです。

※“国際バカロレア”とは:インターナショナルスクールや各国の現地校の卒業生に、国際的に通用する大学入学資格を付与する仕組みです。


■推薦入試導入が与える影響
【東京大学用のカリキュラムを持った私立校・予備校の存在】
 この東京大学の推薦入試が順調に拡大していくかというと、その道筋には大きな障害が存在しています。

 導入までにネガティブキャンペーンにさらされることは必定で、その批判の主流は、東京大学に合格者を輩出することをもって威信を保っている私立中・高一貫校と予備校です。特に前者は、東京大学入試を意識した問題を中学1年生の頃から使用しているので、制度が大きく変化すれば、そのノウハウが無効になってしまうからです。東京大学の推薦入試導入に対する私立高校、予備校関係者のコメントがネガティブに流れていますが、それはこういった背景を考慮すれば、当然のことと言えます。

 東京大学は推薦入試を5年後に導入することを明言しましたが、5年後、優秀な高校生に対するグローバル選抜には間違いなく拍車がかかっていると考えられます。“勉強とは何か“選抜試験とはどうあるべきか”という論争を通して、今後5年間はグローバル選抜派VS守旧派のバトルが展開されると予想しています。

見解についての詳細はFacebookからご覧いただけます。
http://www.facebook.com/toshihiro.kawamoto
(社団法人全国学力研究会理事長 河本 敏浩)


■社団法人全国学力研究会について
 全国学力研究会とは、第一線で活躍する予備校講師と、キャリアデザインの専門家が集まって作られた、先進的な教育者の集団です。主な活動としては、シンポジウム・講演会の開催、教材開発などを中心に、様々な教育コンテンツをリリースしています。各メンバーがそれぞれの領域において取り組んでいる事案は、総体において中学生から社会人までを一つの線でつなぐもので、それぞれが各所で大きな反響を巻き起こしています。

理事長   : 河本 敏浩(カワモト トシヒロ)
        主著『名ばかり大学生』(光文社新書)他多数
        2011年『日本の論点2011』(文芸春秋社)寄稿
        選抜試験制度研究、学力分析など教育関連のアナリスト、
        コンサルタントとして活躍
        東進ハイスクール現代文・小論文講師
事務局所在地: 〒108-0073 東京都港区三田3-2-3 万代三田ビル801
URL     : http://zeng.sakura.ne.jp/

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教育

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