AIを活用した論文調査サービス「JDream SR」の提供開始  ~ゲノム医療、医薬品の費用対効果(HTA)分野における 調査プロセスの効率化~

株式会社ジー・サーチ(本社:東京都港区、代表取締役社長:齋藤 孝、以下、ジー・サーチ)は、2020年10月14日より、ゲノム医療や医薬品の費用対効果(HTA)分野における文献調査を大幅に効率化する「JDream SR(ジェイドリーム エスアール)」のβ版サービス提供を開始いたします。



本サービスは、株式会社ジー・サーチが提供する日本最大級の科学技術文献情報提供サービス「JDreamIII(ジェイドリーム スリー)」(注1)の論文データを活用した論文調査サービスです。


「JDream SR」は、「JDreamIII」が収録する国内の医学薬学文献情報、及び「PubMed」(注2)が収録する世界の医学薬学文献情報から、ゲノム医療や医薬品の費用対効果(HTA)に必要な遺伝子変異、薬剤、疾患、アウトカム指標等の関係をAIにて解析し、医師や評価者が必要な情報を効率的に抽出する新しいサービスです。本サービスの基盤となる技術は、株式会社富士通研究所(注3)において開発されたもので、自然言語処理及びAI技術を基にしており、富士通研究所及び富士通株式会社(注4)が、京都大学(注5)、東京大学医科学研究所(注6)、産学官連携プロジェクト「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」(注7)との共同研究において評価、実証された研究成果です。ジー・サーチはこの技術を医学薬学文献のビッグデータ解析に実装し、「JDream SR」としてサービス化いたしました。


本サービスのリリースに合わせ、特別Webセミナー「医学分野におけるAI/自然言語解析に対する期待と展望」を本年11月に開催いたします。


ジー・サーチは本サービスにより、論文ビッグデータのAI活用に基づいた日本のライフサイエンス分野の発展をより強力に支援していきます。



■ゲノム医療や医薬品の費用対効果(HTA)分野にAI活用が求められる背景

がんゲノム医療分野では、2019年春より「遺伝子パネル検査」が保険収載となり、今後より個別の患者様に特化した治療法の検討が普及していくと考えられます。しかし、個別化医療における治療方針の決定には多くの論文情報の収集・解析が必要であり、かつ短期間で結論を出すことが求められます。また製薬分野においても、新薬の保険収載の申請に必要な医学的・社会的・倫理的・経済的な評価である医薬品の費用対効果(HTA)を行うために多くの論文情報の収集・解析が必要となっています。


ライフサイエンス分野の研究が高度かつ細分化し、論文数が急速に増加している近年において、全ての情報を手作業で収集・解析することは医療関係の方々の負担を増加させており、この分野のAI活用が喫緊の課題となっています。これまでもこの問題の解決を目指し、いくつかのサービスが開発されてきましたが、国内文献の活用度や導入コストの面などにおいて課題も存在しており、多くの病院や大学、研究機関、製薬企業で汎用的に用いることができるサービスが必要とされてきました。


このような課題を解決するため、ジー・サーチでは2020年10月14日より、ゲノム医療と医薬品の費用対効果(HTA)にフォーカスした AI論文検索サービス「JDream SR」の提供を開始します。



■JDream SRの特長

疾患名や遺伝子名を入力するだけで、国内外の医学薬学データベースに収録されている4,000万件以上の論文情報から、AIを使って関連する論文をユーザーの目的に応じて優先度を付けて表示、必要な情報を自動集計するなどして、遺伝子変異の臨床的意義の推定や最適な治療の選択、医薬品の費用対効果の評価に必要なエビデンスの抽出を支援します。


JDream SRを活用した文献調査のイメージ


JDream SRの4つの特長


本機能は自然言語処理を活用してゲノム医療関連論文から遺伝子変異、薬剤、疾患等それぞれの関係性を自動的に抽出する技術、及び、論文から抽出した知識、著者情報、書誌情報、論文の内容などを自動的に判別し、論文の信頼度、情報の充実度、ユーザーの目的への関連度を総合的にスコアリングする技術により実現しました。富士通株式会社及び富士通研究所が京都大学、東大医科研、LINCプロジェクトにおいて検証を行い、ゲノム医療や医薬品の費用対効果(HTA)といった分野において、有用性が研究レベルで示唆されており、実業務における実証が進められております。

京都大学と富士通株式会社の共同研究では、日本医療研究開発機構(AMED)の5年にわたる「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」のもとで、本技術をゲノム医療向けにブラッシュアップしました。さらに、ゲノム医療において臨床的意義の判断を行うためには、膨大な数の文献調査を行う必要がありますが、このプロセスにおいて作業の効率化を行える環境を共同で構築しました。また、東京大学医科学研究所と富士通研究所の共同研究では、本技術の実証実験を行い、ゲノム医療の専門医の論文検索、解読、分析作業にかかる時間を半減することに成功しています。富士通株式会社と製薬企業5社で取り組んだLINC PJ27(「アウトカムリサーチ・医療技術評価」)では、この技術を活用することで、論文検索においてHTA関連の論文を優先的に表示することを実現し、HTAの専門家によって関連度が高いと評価された論文と関連度が低いと評価された論文をAIに学習させることで、HTA分野に特化した論文スコアリングモデルの構築に成功しました。


JDream SRを構成する技術


■将来展望

ジー・サーチは、日本最大級の科学技術文献情報提供サービス「JDreamIII」を基に、産官学連携の推進を目標として、AI技術を活用したプラットフォーム「JDream Expert Finder」(注8)を2019年より提供開始するなど、科学技術論文のAIによる活用に注力して参りました。今回、新たな付加価値サービスとして「JDream SR」を開発し、医療関係者の方々の論文データ収集・解析の負荷を軽減することにより、医薬分野における論文検索を支える新たな技術基盤をご提供いたします。

当社は、変化していくお客様ニーズを捉え、領域を超えたデータ解析や富士通グループのAI技術活用によって、研究開発支援プラットフォームをさらに進化させていくことで、日本のライフサイエンス分野の高度な情報化に貢献していくことを目指して参ります。


●サービス紹介ページ

https://jdream3.com/lp/jdream_sr/


●サービス提供時期

2020年10月14日(水)よりβ版提供開始


●本サービスに関連する特別Webセミナー開催日

開催日:2020年11月6日(金)、11月10日(火)

https://jdream3.com/session/online-sr.html


●販売目標

2022年度までに年間売上2億円を目指します。



■用語の説明

(注1)JDreamIII検索サービス

科学技術や医学・薬学関係の国内外文献情報を手軽に検索できる日本最大級のデータベースサービス。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が作成するデータベースを、ジー・サーチが高度付加価値サービスとして構築・運用・サービス提供しております。科学技術の全分野にわたり網羅的に学協会誌(ジャーナル)、会議録・論文集/予稿集、企業技報、公共資料等を情報源とした8,000万件の文献(バックファイル収録文献数を含む)を収録。


(注2)PubMed

医学薬学・ライフサイエンス分野の文献情報を収録し、米国国立医学図書館が作成する世界で最もよく使われるといわれる医学文献データベース。


(注3)株式会社富士通研究所

本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長:原 裕貴

富士通研究所では30年以上にわたる自然言語処理技術の研究開発実績があり、医学薬学論文を解析する研究所独自のAI技術により、遺伝子変異と治療薬及び治療薬と効果の関係性を論文から自動的に抽出し、ナレッジグラフと呼ばれるグラフ構造型のデータベースとして構築する技術を開発した。


<参考>

東京大学医科学研究所との実証実験に関するプレスリリース

https://pr.fujitsu.com/jp/news/2019/11/6.html


(注4)富士通株式会社

本社事業所:東京都港区、代表取締役社長:時田 隆仁


(注5)京都大学

所在地:京都府京都市、総長:山極 壽一

京都大学は富士通株式会社とともに日本医療研究開発機構(AMED)の「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」(研究開発課題名「ゲノム医療を促進する臨床ゲノム情報知識基盤の構築」)に参画し、本サービスの中核となる技術について検証を行った。この技術を用い、ゲノム医療における臨床的意義推定プロセスにおいて文献調査作業を支援するシステムを共同で開発した。


(注6)東京大学医科学研究所

所在地:東京都港区、所長:山梨 裕司

東京大学医科学研究所と富士通研究所との共同研究のもとで、血液腫瘍内科において、本サービス構成技術の実証実験を実施した。


(注7)ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)

2016年11月に、国内で共にAI創薬を提唱してきた京都大学と理化学研究所を中心として発足した産学官連携AIコンソーシアム( https://linc-ai.jp/ )。富士通株式会社(ライフサイエンスシステム事業部)が参画したプロジェクト(PJ27「アウトカムリサーチ・医療技術評価」)では、医療技術評価(HTA/HEOR)業務における費用対効果(費用対効用)の評価に必要なエビデンス収集支援システムを構築することを目的とし、製薬企業5社と共同でHTA/HEOR関連の文献調査にかかる時間とコスト短縮に有用なAIシステムの開発を進めた。


(注8)JDream Expert Finder

JDream Expert Finderは、JDreamIIIの膨大な論文情報を基に、研究者の専門性、研究推進力、共同研究実績等を解析し、利用者の課題解決に最適な研究パートナー探索を実現するサービスです。また、「ライフ インテリジェンス コンソーシアム(LINC)」とジー・サーチの共同研究の成果である、「将来パートナーとして期待される研究者の探索」機能を搭載します。なお、文部科学省が実施する「研究支援サービス・パートナーシップ認定制度」において、研究者の研究環境を向上させ、我が国における科学技術の推進及びイノベーションの創出を加速すると認められるサービスとして2020年3月31日に認定された。



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