グローバリズムの再生・進化と民主主義の統治能力向上を

グローバリズムの再生・進化と民主主義の統治能力向上を

日米欧の識者が、世界のパワー構造の変容とグローバルガバナンスの将来を議論  日本アカデメイア 第1回「東京会議」

日本と世界の長期ビジョン検討や人材・知・経験の交流、人材育成をめざす有志の組織「日本アカデメイア」(常任共同塾頭:牛尾治朗、茂木友三郎、佐々木毅/事務局:日本生産性本部、東京都千代田区)は、12月12日、「世界のパワー構造の変容とグローバルガバナンスの将来」と題した第1回「東京会議」を開催し、「東京宣言」を取りまとめました。


国際社会において民主主義と市場経済が選択された東西冷戦体制の終結から30年、世界は安定を手にすることなく、主要国の国内利益優先志向や国際協調体制の後退、国際機関の機能低下などが、人類が追求してきたグローバリズムを後退させ、国際社会に対立と不信を招く懸念が高まっています。同時に、目覚ましい速さでAIやビッグデータなど情報関連技術が発展し、将来の国際社会や経済体系が大きく変容することが予想されます。今まさに、グローバルガバナンスの将来が世界から問われています。


このような問題意識の下、本会議では、仏より経済学者・思想家のジャック・アタリ博士、米国より政治学者・ハーバード大学教授のグレアム・アリソン博士を迎え、世界の統治システムや民主主義の将来に対する危機感を共有しつつ、世界的・人類史的な課題解決に向けた議論を重ね、諸課題に立ち向かい得る世界の知的ネットワーク構築を提案する「東京宣言」を取りまとめました。


本会議の冒頭、茂木友三郎 常任塾頭は主催者挨拶において、「グローバルガバナンスのあり方や市場経済・民主主義の将来、その持続可能性について、危機感や問題意識を共有し、次世代のために声を挙げなければならない時を迎えている」と本会議への想いを述べました。

「世界の統治システム、その危機の構造を分析する」と題したセッション1では、アタリ博士から「世界的課題の解決には国際的な連携が必須であり、利己主義でなく利他主義でなくてはならない。グローバルリーダー不在の時代、既存の国際協定を維持し、新たな課題解決に向けては新たな機構を構築すべき」、佐々木毅 常任塾頭から「自由と解放の規範であった先進民主政においてポピュリズムが台頭している。我々は大きな歴史の分岐点におり、非協力のリスクとコストに鈍感であってはならない」、小林喜光 三菱ケミカルホールディングス会長から「市場は、持続可能性を投資の判断材料にしており、世界の投資のうちESG投資は2割に迫っている」、アリソン博士から「日本は世界的課題の解決にもっと積極的な役割を果たすべき。世界の安全保障上の最大の脅威は北朝鮮であり、第2次朝鮮戦争を避けるべく、特に日米中は対応を誤ってはならない」との発言がありました。

続くセッション2「国際政治経済システム改革への展望とシナリオ」では、アリソン博士は、新興国と覇権国の緊張関係について「トゥキディデスの罠」を引き、「16事例のうち12は戦争が進み、4は回避している。歴史から学んだ『5つのC(用心・コミュニケーション・抑制・妥協・協力)』の教訓の応用などから、戦争回避は可能」、茂木友三郎 常任塾頭から「米中の対立は覇権を巡る体制の対立であり、容易には解決しない。企業は社会の公器であり、経営者は、競争が生む付加価値や成長を実践すると同時に市場経済の健全化や世界的課題の解決や持続可能性に貢献する責任がある」、北岡伸一 国際協力機構理事長から「日本には、困難な舵取りを伴う賢明な外交政策が必要であると同時に、平成の30年間遂げられなかった自己改革も不可避」、アタリ博士から「対立する米中の合議に向けて日本は役割を果たせるのではないか」との指摘がありました。


また、両セッションのモデレーターを務めた田中明彦 政策研究大学院大学長は、「世界が、歴史の悲劇に学び、それを繰り返さないためにどうすべきか、また技術革新等による前例のない課題にどう取り組むか。自らの民主主義をより良く変え、国際的制度の維持と変革が必要になる」と本会議の統括を述べました。最後に、福川伸次 日本アカデメイア会員委員長より「東京宣言」の発表がありました。


日本アカデメイアでは、本宣言を受け、グローバリズムの再生・進化や民主主義の統治能力向上をはじめ、人口動態、資源・環境、情報関係技術に関する管理体制の確立など、世界的課題の解決に向けた戦略を構築するため、世界の英知を結集し、知的進化を図るネットワークの仕組みの創設について、2020年前半に具体的検討を進め、後半にはアクションプランを決定し、行動に移す予定です。


添付資料:

資料1 第1回「東京会議」開催概要

資料2 東京宣言



日本アカデメイアとは:

日本の政策を考える官民共通の基盤を再構築し、日本の公共を立て直すと同時に、人材と知と経験の交流の場となることを目的に、経済界、労働界、教育研究機関、学識者らにより2012年4月に設立された有志の組織。事務局は(公財)日本生産性本部。

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