株式会社マーケットリサーチセンター

    世界のER陽性/HER2陰性乳がんの疫学規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表

    調査・報告
    2026年8月28日 17:00

    株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界のER陽性/HER2陰性乳がんの疫学規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:ER+/HER2− Breast Cancer Epidemiology Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。

    ■主な掲載内容

    本レポートは、ER陽性/HER2陰性乳がん(ER-positive/HER2-negative breast cancer:ER+/HER2−乳がん)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。ER+/HER2−乳がんは、腫瘍細胞にエストロゲン受容体(ER)が発現している一方、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の過剰発現を認めない乳がんサブタイプであり、エストロゲンを中心とするホルモンシグナルによって腫瘍増殖が促進される。Synapseの疫学データによると、全乳がんの約65~70%を占めるとされ、乳がんの中で最も大きな分子サブタイプの一つである。発症率は年齢とともに上昇する傾向があり、世界的な乳がん負担の中心的な患者集団を形成している。調査会社は、今後もこのサブタイプが内分泌療法を中心とする治療戦略の主要対象であり続けるとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などの疫学動向を分析している。

    ER+/HER2−乳がんでは、腫瘍細胞表面あるいは細胞内に存在するエストロゲン受容体を介したシグナルが腫瘍増殖に重要な役割を果たす。HER2は過剰発現していないため、HER2陽性乳がんとは異なる分子生物学的特徴を持ち、治療の中心は抗HER2療法ではなく、エストロゲンの作用を遮断または低下させる内分泌療法となる。

    一般にER+/HER2−乳がんはHER2陽性乳がんなどと比べて進行が比較的緩徐とされるが、病期、腫瘍グレード、増殖活性、分子プロファイルによって予後は大きく異なる。早期乳がんから転移性乳がんまで幅広い病期でみられ、分子的にはルミナルA型やルミナルB型などに分類されることがある。したがって、同じER+/HER2−というカテゴリーでも、再発リスクや治療反応性にはかなりの異質性が存在する。

    疫学的には、Oncology Nurse Advisorによると、米国ではホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんが乳がん全体の約69%を占める。これは他の主要分子サブタイプより明らかに高い割合であり、ER+/HER2−乳がんが米国乳がん診療の中心的な患者集団であることを示している。

    Jenny Gilchristの2024年の報告では、診断される乳がんの約65%がルミナル型、すなわちERおよび/またはPR陽性かつHER2陰性であり、診断年齢中央値は61歳とされる。このことから、ER+/HER2−乳がんは若年者にも生じるものの、より高齢の患者集団で頻度が高いことが示される。

    年齢との関連は市場予測においても重要である。乳がん全体の発症率は加齢とともに上昇し、ER陽性型は特に中高年以降で多い。そのため、米国、欧州、日本などで人口高齢化が進むことは、2026~2035年のER+/HER2−乳がん患者数を押し上げる要因の一つになると考えられる。

    性別では、患者の圧倒的大多数を女性が占める。ただし、乳がんは男性にも発生するため、ER+/HER2−乳がんも男性で完全に排除されるわけではない。本レポートでは男女別患者数も疫学セグメントとして扱うとしているものの、提示された具体的データは主として女性患者を対象としている。

    人種・民族別では、Pegah Farrokhiらの2026年の報告で、黒人女性におけるER+/HER2−乳がんの発症率は白人女性より約15%低い一方、死亡率は19%高いとされる。この差は、単純な発症頻度だけでは説明できず、診断時病期、医療アクセス、社会経済的要因、治療への到達度などの格差が予後に影響しているとされる。

    また、同じ報告では、黒人患者は白人患者に比べてより若い年齢で診断されることが多く、より侵襲的な病態を示す傾向があるとされる。したがって、ER+/HER2−乳がんの疫学評価では、患者数や有病率だけでなく、診断年齢、病期、腫瘍生物学、治療アクセスまで含めた格差の評価が重要になる。

    ER+/HER2−乳がんの中でも近年重要性が高まっているのがHER2-lowという概念である。Hong Lvらによると、HER2陰性乳がんの約60~67%がHER2-low腫瘍に該当するとされる。HER2-lowは従来のHER2陽性には分類されないものの、HER2タンパク質が低レベルで発現している腫瘍群を指し、ER+/HER2−患者の中にもかなり大きな割合で存在する。

    このHER2-low集団は、従来の二分法である「HER2陽性対HER2陰性」だけでは十分に捉えられない新たな治療対象群として注目されている。ただし、提示資料ではHER2-lowの地域別疫学、とりわけ中国を含む詳細な地域データはまだ限定的とされる。そのため、ER+/HER2−患者全体の中でHER2-lowがどの程度を占めるかについては、今後さらに精密な疫学把握が必要である。

    国別では、米国が大きな患者市場を形成している。Cancer Networkによる2024年のデータでは、米国全体で約2,001,140件の新規がん症例と611,720件のがん死亡が予測されている。ただし、この数値は乳がん単独ではなく全がんを含むため、ER+/HER2−乳がんの患者数として直接解釈することはできない。レポートでは、米国における乳がん診断・治療環境の改善によって死亡率が低下しているという広い文脈の中で、この数値が示されている。

    米国では乳がん患者の約69%がホルモン受容体陽性/HER2陰性であるとされるため、乳がんの新規患者数が増えればER+/HER2−患者数も比例して大きな規模になる。この患者数の多さに加えて、内分泌療法を長期間継続する患者が多いことから、治療市場としても非常に大きい。

    インドでは、Cancer Roundsによると乳がんの約60~70%がホルモン受容体陽性とされる。これは米国など先進国と同様に、ホルモン依存性乳がんが大きな割合を占めることを示している。ただし、この数値は必ずしもすべてがHER2陰性であることを意味するわけではなく、ER+/HER2−患者数を評価する際にはHER2ステータスを別途考慮する必要がある。

    欧州、日本を含むその他の主要市場でも、ER陽性/HER2陰性乳がんが乳がん全体の大きな割合を占める基本構造は共通しているとされる。ただし、国ごとの乳がん発症率、年齢構成、マンモグラフィ検診率、分子診断体制、治療アクセスなどによって、診断患者数や治療患者数には差が生じる。

    市場・疫学上の重要な特徴は、ER+/HER2−乳がんが単に「新規患者数が多い」だけではなく、早期乳がん治療後も長期にわたって再発リスクが持続する患者群を含むことである。ホルモン受容体陽性乳がんでは、診断後かなり長期間を経て再発することもあるため、サバイバー人口の蓄積や長期治療が有病患者数と医療需要を押し上げる可能性がある。

    さらに、早期乳がんから転移性乳がんまで治療期間が長く、複数の内分泌療法や分子標的治療を順次使用することが多い。このため、ER+/HER2−乳がん市場は新規発症数だけでなく、「治療を継続している長期生存患者」の規模に大きく影響される。

    治療の基本は内分泌療法である。これは、腫瘍細胞の増殖に必要なエストロゲンシグナルを遮断する、または体内のエストロゲン産生量を低下させることを目的とする。ER+/HER2−乳がんがホルモン依存性であるため、内分泌療法は早期から進行期まで広く使用される中核的治療となる。

    代表的な内分泌療法には、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、アロマターゼ阻害薬、エストロゲン受容体分解薬などがある。それぞれ作用機序が異なり、閉経前・閉経後、病期、再発リスク、過去の治療歴などに応じて使い分けられる。

    早期乳がんでは、手術が治療の中心となり、必要に応じて放射線療法、化学療法、内分泌療法が組み合わされる。ER+/HER2−乳がんでは、再発リスクが低い患者では化学療法の必要性が小さい場合もあり、腫瘍サイズ、リンパ節転移、グレード、分子プロファイルなどを用いて治療強度を決定する。

    進行・転移性ER+/HER2−乳がんでは、内分泌療法と分子標的治療の併用が治療の中心となる。代表的なのがCDK4/6阻害薬であり、細胞周期の進行を抑えることで腫瘍増殖を抑制する。内分泌療法との併用によって治療効果を高め、病勢進行を遅らせることを目的としている。

    さらに、PI3K阻害薬やmTOR阻害薬なども、特定の分子異常や治療歴を持つ患者で内分泌療法と組み合わせて使用される。これは、ERシグナルだけを抑えても腫瘍が別の増殖経路を利用して耐性を獲得するためである。したがって、進行ER+/HER2−乳がんでは、内分泌療法抵抗性の分子機序を理解し、それに応じて標的薬を追加する治療戦略が重要になる。

    このサブタイプにおける最大の長期的課題の一つは、内分泌療法耐性である。初期にはホルモン療法に反応しても、時間の経過とともに腫瘍がエストロゲン非依存的な増殖経路を獲得し、治療効果が低下することがある。このため、転移性疾患では治療ラインごとに異なる内分泌薬や分子標的薬を順次使用することになる。

    HER2-lowという新たな分類の拡大も、今後の治療市場に影響する可能性がある。HER2陰性とされてきた患者のうち60~67%程度がHER2-lowに分類され得るとされているため、ER+/HER2−という従来の大きな患者集団が、さらに治療可能なバイオマーカー別に細分化される方向にある。

    したがって、今後の患者評価ではER、PR、HER2だけでなく、腫瘍グレード、分子プロファイル、治療耐性に関わる遺伝子異常などを組み合わせる精密医療の重要性が高まる。これは疫学面でも、「ER+/HER2−乳がん」という一つの患者群をさらに細かい治療対象集団に分けて把握する必要性が増すことを意味する。

    全体として本レポートは、ER+/HER2−乳がんを「全乳がんの約65~70%を占める最大級の分子サブタイプであり、主として中高年女性に発症し、内分泌療法を中心とする長期治療が必要な疾患」と位置づけている。米国では約69%、広くルミナル型としてみても約65%を占め、診断年齢中央値は61歳とされる。したがって、乳がん全体の患者数が増加する地域では、ER+/HER2−患者の絶対数も大きく増加する可能性がある。

    一方で、人種・社会経済的格差は重要な課題であり、黒人女性では発症率が白人女性より約15%低いにもかかわらず、死亡率が19%高いというデータが示されている。このことから、患者数の大小だけでなく、早期診断へのアクセス、病期、治療導入、継続治療などの格差が最終的な疾患負担を左右すると考えられる。

    2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、高齢化、乳がん検診の普及、分子診断の高度化、乳がん生存者の増加などが診断・有病患者数を押し上げる重要な要因になると考えられる。特にER+/HER2−乳がんでは長期生存する患者が多いため、発症数だけでなく、長期間にわたり治療や再発監視を必要とする患者プールの拡大が市場に大きく影響する。

    したがって、今後のER+/HER2−乳がん管理における中心的課題は、早期発見をさらに進めること、病期や分子プロファイルに応じて内分泌療法の強度を個別化すること、CDK4/6阻害薬、PI3K阻害薬、mTOR阻害薬などを適切に組み合わせること、そして内分泌療法耐性やHER2-lowを含む新たな分子サブグループに対応することである。2026~2035年は、ER+/HER2−乳がんを単一の「ホルモン感受性乳がん」として扱うのではなく、分子特性と耐性機序に応じてさらに細分化し、より精密な内分泌・標的治療へ移行していくことが、臨床・市場双方の中心テーマになるとまとめられる。

    ※目次構成

    01
    序文
    1.1 はじめに
    1.2 調査目的
    1.3 調査方法および前提条件

    02
    エグゼクティブサマリー

    03
    ER陽性/HER2陰性乳がん市場概要(8主要市場)
    3.1 ER陽性/HER2陰性乳がん市場の過去市場規模(2019年~2025年)
    3.2 ER陽性/HER2陰性乳がん市場の予測市場規模(2026年~2035年)

    04
    ER陽性/HER2陰性乳がん疫学概要(8主要市場)
    4.1 ER陽性/HER2陰性乳がん疫学状況(2019年~2025年)
    4.2 ER陽性/HER2陰性乳がん疫学予測(2026年~2035年)

    05
    疾患概要
    5.1 症状および徴候
    5.2 原因
    5.3 リスク要因
    5.4 ガイドラインおよび病期分類
    5.5 病態生理
    5.6 スクリーニングおよび診断
    5.7 ER陽性/HER2陰性乳がんの種類

    06
    患者プロファイル
    6.1 患者プロファイル概要
    6.2 患者心理および感情面への影響要因

    07
    疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
    7.1 主要調査結果
    7.2 前提条件および根拠
    7.3 ER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    7.4 種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    7.5 性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    7.6 年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    08
    疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
    8.1 米国における前提条件および根拠
    8.2 米国におけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    8.3 米国における種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    8.4 米国における性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    8.5 米国における年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    09
    疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
    9.1 英国における前提条件および根拠
    9.2 英国におけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    9.3 英国における種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    9.4 英国における性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    9.5 英国における年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    10
    疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
    10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
    10.2 ドイツにおけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    10.3 ドイツにおける種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    10.4 ドイツにおける性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    10.5 ドイツにおける年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    11
    疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
    11.1 フランスにおける前提条件および根拠
    11.2 フランスにおけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    11.3 フランスにおける種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    11.4 フランスにおける性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    11.5 フランスにおける年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    12
    疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
    12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
    12.2 イタリアにおけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    12.3 イタリアにおける種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    12.4 イタリアにおける性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    12.5 イタリアにおける年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    13
    疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
    13.1 スペインにおける前提条件および根拠
    13.2 スペインにおけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    13.3 スペインにおける種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    13.4 スペインにおける性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    13.5 スペインにおける年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    14
    疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
    14.1 日本における前提条件および根拠
    14.2 日本におけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    14.3 日本における種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    14.4 日本における性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    14.5 日本における年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    15
    疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
    15.1 インドにおける前提条件および根拠
    15.2 インドにおけるER陽性/HER2陰性乳がんの診断済み有病患者数
    15.3 インドにおける種類別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    15.4 インドにおける性別別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数
    15.5 インドにおける年齢別のER陽性/HER2陰性乳がん患者数

    16
    患者経路

    17
    治療課題および未充足ニーズ

    18
    キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察

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