半田市立図書館で音環境設計による 空間ゾーニングの実証実験を実施  「会話可能エリア」賛成60.4%と過半数を得るも、反対18.1%  異なるニーズを満たす空間実現には、 BGM選定やゾーニングで改善余地

    調査・報告
    2026年6月12日 13:00

    TOA株式会社(本社:神戸市、代表取締役社長:谷口 方啓、以下「TOA」)と株式会社otonoha(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:稲畑 伸一郎、以下「otonoha」)は、半田市(愛知県)および株式会社図書館総合研究所(本社:東京都文京区、代表取締役社長:廣木 響平、以下「図書館総研」)と協働し、半田市立図書館にて2026年2月初旬から3月中旬にかけて、館内の音環境に関する実証実験を実施しました。


    期間中に来館者を対象として行ったアンケート調査(回答161名)をもとに、「静寂が前提」とされてきた図書館空間において、音や会話を一定程度許容する新たな利用スタイルが受容されるか、また来館者の体験にどのような影響を与えるかを検証しました。

    本実証では、TOAおよびotonohaが音環境設計ならびにサウンドシステムの提供・設置・運用を担い、半田市および図書館総研と連携して、改修工事を伴わず“音”で空間の使われ方を段階的に整える手法の有効性を検証しました。館内には植栽型サウンドデバイス等を配置し、音環境の違いによる利用者評価の変化を比較できるよう、図書館1階に以下の3つの実験エリアを設置しました。


    ・エリア(1) 音あり読書エリア

    自然環境音(川のせせらぎ・鳥の声など)やBGMを流し、周囲音をマスキングするとともに、静かすぎる緊張感を緩和する空間

    ・エリア(2) 音なし読書エリア

    従来型の静寂環境で、比較対象として設置

    ・エリア(3) 会話可能エリア

    BGMを流しながら小声での会話を許容し、子連れや複数人利用を想定


    図1.今回設置した3つの実験エリア

    図1.今回設置した3つの実験エリア


    この3環境を、来館者アンケートによって比較し、利用者の満足度、心理的影響、賛否意識等を多面的に分析しました。



    ■ 実証実験の背景

    近年の図書館は、本を読む・借りる場所にとどまらず、地域における学び・交流・創造の拠点として役割を拡張しています。しかし、「静かにする場所」という従来のイメージも根強く、一定の会話を伴う子ども連れ利用などに心理的なハードルが生じるケースがあります。

    一方で、静かな環境で読書や勉強に集中したい利用者も多く、図書館において静寂と適度なにぎわいをどのように両立するかが課題となっています。

    今回の実証では、大規模改修を伴わず、音環境設計によって空間利用を調整する手法を検証しました。



    ■ 実証実験の内容

    期間:2026年2月5日(木)から3月中旬までの約1カ月間

    場所:半田市立図書館 本館(愛知県半田市桐ケ丘4丁目209-1)

    対象:来館者アンケート回答者161名


    回答者属性・利用実態

    ・90%が貸出券保有者:既存利用者中心

    ・性別は女性 72%

    ・年代は40代が21%で最多、次いで50代が18%、30代が17%、60代が13%と続く

    ・利用目的は「資料閲覧・貸出」が最多

    ・子ども連れ利用が約35%

    ・エリア(3) 会話可能エリアの利用が42%で最多で、回答者の約68%が一度は利用



    ■ 留意点

    ・サンプル数が限定的であるため統計的な検定力には制約がある

    ・本結果は回答者の傾向を示すものであり、回答者については、自発的に回答いただいた群という点で偏りがあるため、利用者全体への一般化には注意が必要


    ■ 実証実験の主要ポイント

    1.音・会話を許容する環境は一定の支持を獲得


    図2.「音や会話を許容するエリア」を設けることについての賛否

    図2.「音や会話を許容するエリア」を設けることについての賛否


    エリア(3) 会話可能エリアの設置については、賛成が60.4%(96名)、どちらでもないが20.0%(31名)、反対が18.1%(28名)となり、過半数の来館者から支持を得る結果となりました。


    2.静かすぎることへの潜在的不満が顕在化

    図書館の音環境イメージについては、「静かで落ち着く」と回答した人が約51%(81名)であった一方、「静かすぎて気を遣う」と回答した人も約41%(66名)にのぼり、静寂が一定の利用者にとって心理的負担となっている状況が確認されました。


    図3.図書館の音環境についてのイメージ

    図3.図書館の音環境についてのイメージ


    3.自然環境音によるマスキング効果は高評価

    エリア(1) 音あり読書エリアについては、回答者72名のうち、「周囲音が気にならなかった」と回答した人が69%(50名)、「快適」と評価した人が68%(49名)と、いずれも高い割合を示しました。

    特に、「川のせせらぎ」「鳥の声」などの自然環境音に対する評価が高く、周囲音のマスキングや心理的な緊張感の緩和に寄与する音環境設計の有効な方向性が示されました。


    4.エリア間の音漏れが課題

    エリア(2) 音なし読書エリアでは、回答者の27%(17名)が、他エリアからの音漏れを「気になる」と回答しました。


    図4.エリア(2)利用時における、他のエリアからの音による集中・読書への影響の有無

    図4.エリア(2)利用時における、他のエリアからの音による集中・読書への影響の有無


    特に、エリア(3) 会話可能エリアからのBGMや会話による音漏れが指摘されており、音環境のゾーニング(エリアごとに音を分ける設計・運用)が今後の重要な課題であることが示されました。



    ■ クロス分析から見えた構造的課題

    これまでの調査結果を属性や利用状況ごとに整理したところ、サンプル数が限定的であるため統計的な検定力には制約があることに加え、本結果は回答者の傾向を示すものであり、利用者全体への一般化には一定の留保が必要なものの、利用者の賛否意識について、いくつかの傾向が確認されました。


    ・年代による違い


    図5.年代ごとの賛成率

    図5.年代ごとの賛成率


    年代別に見ると、高齢層ほど音や会話を許容するエリアに対して慎重な傾向が見られました。特に70代では賛成率が31%にとどまっており、年代が上がるにつれて賛成率が低下する傾向がうかがえます。


    ・利用頻度による違い

    利用頻度が高い、いわゆるヘビーユーザーでは、反対意見が相対的に多い傾向が見られました。ただし、その内容は導入そのものへの否定というよりも、BGMの音質や音量など、音環境の品質改善を求める意見が中心でした。


    ・静穏ストレスが新環境支持を促進

    「静かすぎて気を遣う」「緊張する」と感じている45名では、エリア(3) 会話可能エリアへの賛成率が82%(37名)と高く、現状の過度に静かな環境に対する負担感が、新しい音環境への支持につながっていることを示しました。


    ・静音志向層の存在

    回答者の中には、「子ども連れであっても静かに利用したい」と考える層も一定数存在しました。会話可能エリアに否定的な回答をされた方のうち、約6割の方はお子様連れであったことから、お子様連れ=静寂に否定的、という単純な図式ではないことが示唆されました。


    ・会話可能エリアへの反対要因は「音源選定」に集中

    エリア(3) 会話可能エリアに対する反対意見の多くは、コンセプト自体ではなく、BGMの重低音やテンポの速さなど、音の質や選曲に対する不満に起因していることが確認されました。

    実際に、BGMを「不快」と感じた回答者8名全員が音や会話を許容するエリアを設けることに反対する一方、「快適」と感じた回答者37名の86%(32名)が賛成しており、音源選定が賛否を大きく左右する要因となっていることが示されました。


    ・評価を分ける本質的な要因

    賛否の分かれ方を整理すると、エリア設置の考え方そのものよりも、適切な音源選定が評価に影響している傾向が見られました。音環境の改善が、利用者評価を左右する重要なポイントである可能性が示されています。



    ■ 総合的な示唆

    本実証から得られた知見を総合すると、図書館における音環境のあり方について、以下のような示唆が得られました。

    ・図書館の静寂は「集中して読書するため」の重要な要素である一方、過度な静けさは一部の利用者(子連れの親等)にとって心理的な負担になっていることが改めて示された

    ・「集中して読書を行える」エリアと、「安心して子連れで滞在できる」エリアの共存について、音を活用したゾーニングによって一定程度実現できることがわかった

    ・各ゾーンで行われる活動に最適化した音源の選定と、各エリア外への音漏れを防ぐ緻密な音環境の設計によって、より多様な利用者の満足度向上が期待できる



    ■ 今後のアクション

    本実証実験は、図書館における音環境の工夫が、利用者の心理的負担の軽減や利用体験の質の向上に寄与し得ること、また新たな利用層の受け入れや空間価値の向上につながる可能性を示しました。加えて、アンケート結果からは、今後の社会実装に向けた具体的な課題とその解決の方向性が明確になっております。


    今後は、音源や音量、運用ルールをより利用者に受け入れられやすい形へと最適化するとともに、静かに過ごしたい利用者と、一定の音や会話を許容したい利用者が無理なく共存できるよう、ゾーニングの高度化やエリア間の音の干渉を抑制する技術的・運用的工夫を検討します。あわせて、取り組みの意図やエリアの使い分けが伝わる案内整備を行うことで、静音エリアが守られる安心感を示しながら、利用者が安心して目的に応じた空間を選択できる環境づくりを目指します。


    また、導入後も継続的に利用者の声を収集・分析し、段階的な改善を重ねることで、実用性と満足度の双方を高めていく運用モデルの確立を図ります。これらの取り組みに、TOAおよびotonohaが有する音環境設計に関する技術と豊富な実績を融合させることで、図書館における新たな空間価値創出の具体化と、再現性のあるサービスモデルへの展開が期待されます。


    今後も、半田市および図書館総研と連携のもと、本実証で得られた知見を基盤に実証を加速させ、持続的かつ拡張可能な形での展開を視野に入れた取り組みを推進してまいります。これにより、多様な利用者ニーズに応える図書館空間の実現とともに、本分野における新たなビジネスモデルの確立を目指します。



    ■ 半田市立図書館 館長のコメント

    今回の実証実験では、多くの市民の皆様に関心をお寄せいただき、貴重なご意見を多数いただきました。あらためて、図書館における静寂は大切な価値である一方で、過度な静けさが一部の利用者に心理的な緊張感や利用しづらさを感じさせていることも確認することができました。

    音によるマスキング効果によって、会話や物音が目立ちにくくなり、結果として静かで快適な環境の維持に寄与することも、実証実験の結果から確認することができました。

    図書館は「静かな場所」であることが大切ですが、それだけではありません。初めて訪れる方やお子さん連れの方、学生や社会人、高齢者の方など、誰もが過度な緊張を感じることなく安心して利用できる場所であることも、同じように大切な価値だと考えています。

    今回の実証実験を通じて、市民の皆様とともに図書館のあり方を考えることの重要性を改めて認識しました。今後もいただいたご意見や実証結果を丁寧に検証しつつ、静寂の価値を大切にしながら、本市図書館がより多くの方に親しまれ、安心して利用できる施設となるよう取り組んでまいります。



    ■ 問合せ

    【実証実験について】

    ・現地の様子や実施背景などについて

    半田市役所 教育部 図書館

    担当  : 太田

    電話番号: 0569-23-7171

    Mail  : tosho@city.handa.lg.jp


    ・技術的なことについて

    TOA株式会社 事業開発室

    担当  : 上妻

    電話番号: 070-2451-4153

    Mail  : s_kozuma@toa.co.jp


    【ニュースリリースについて】

    ・取材のご希望や上記以外のご質問について

    TOA株式会社 広報室

    担当  : 玉井

    電話番号: 078-303-5631(直通)

    Mail  : toapr@toa.co.jp



    ■ 関連情報

    ・半田市立図書館

    URL: https://www.city.handa.lg.jp/bunka/bunkashisetsu/1002662/index.html


    ・株式会社 図書館総合研究所

    URL: https://lib-soken.jp/


    ・株式会社 otonoha

    URL: https://otonoha.co.jp/


    ・2026年1月23日付ニュースリリース

    大規模改修なしに音環境設計で空間ゾーニング

    半田市立図書館で読書・会話のエリアをわけ、学びと交流を両立させる実証実験

    URL: https://www.toa-global.com/ja/news/corporate/202601/260123



    ■ otonohaのソリューション「sound veil」

    sound veil(サウンドヴェール)は、植栽型のサウンドデバイス(IoTスピーカー)を使ってオフィスの音環境改善を支援するコンサルティングサービスです。実証実験で得た豊富な知見に基づき、会議室の音漏れを改善するためのマスキングや、オフィス空間に合ったBGMなど、オフィスで起こる音のお悩みに応じて幅広くご提案し、働きやすく快適なオフィスづくりに向けた音環境の構築をサポートしています。

    詳細: https://soundveil.net/



    ■ TOA(ティーオーエー)株式会社について

    1934年創業、兵庫県神戸市に本社を置くTOAは、業務用音響・映像機器のグローバルメーカーです。国内35拠点、海外27拠点を展開し、交通施設や商業施設の案内放送・BGMから、大規模スポーツ施設の音響システム、防犯カメラ・録画機器まで、幅広いソリューションを提供しています。

    日本で初めて火災時に建物内の人々へ避難を呼びかける「非常用放送設備」を開発し、国内シェアNo.1を獲得。さらに、従来の2倍以上の距離まで明瞭な音声を届ける「防災用スピーカー」を開発し、大規模災害の警報用途として日本全国の自治体で採用されています。

    近年はAIやネットワークなどのデジタル技術を活用し、遠隔対応や双方向コミュニケーションを可能にする新たなソリューションを構築。すべての人が適切に情報を受け取れる社会の実現を目指し、多様なニーズに応える製品・サービスの開発に挑戦し続けています。

    URL: https://www.toa-global.com/ja



    ■ 会社概要

    設立   :1949年4月20日(創業:1934年9月1日)

    資本金  :52億79百万円

    従業員数 :3,144名(連結) 816名(単体)

    代表者  :代表取締役社長 谷口 方啓

    本社所在地:兵庫県神戸市中央区港島中町七丁目2番1号

    事業内容 :・拡声放送機器、通信機器、その他情報伝達機械器具の製造販売

          ・音響機器、映像機器、その他電子・電気機械器具の製造販売

          ・上記機器の賃貸ならびに工事の設計施工

          ・音響・映像に関するソフトウェアの企画・制作ならびに販売

          ・電気通信を利用した各種サービスの提供

          ・電気通信事業

          ・ホール・スタジオの賃貸経営ならびに音楽等のイベント・

           催し物の企画運営

    ※2025年3月現在

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