シーボルトがヨーロッパへ持ち帰った日本の淡水魚が今も生息する波佐見川を展示で「見える化」
波佐見・緑と水を考える会(所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1765、代表:田﨑武詞)は、長崎県波佐見町の波佐見川における環境学習と地域の自然を紹介する展示企画を推進しています。江戸時代の自然研究者フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトがヨーロッパへ持ち帰ったとされる日本の淡水魚が現在も生息している可能性のある同河川について、波佐見町総合文化会館での水槽展示を通じて、地域と歴史のつながりを伝える拠点づくりに取り組んでいます。
川との接触機会の減少が地域の自然への認識低下につながっている
同会は平成2年の発足以来、身近な自然と触れ合える活動を継続してきました。平成21年からは「シーボルトの川づくり塾」と題した地域環境学習活動を展開し、九州大学総合研究博物館協力研究員の中島淳氏を講師に迎えて、魚類調査や水生生物調査、水質検査(パックテスト)などを毎年実施しています。この10年以上にわたる継続調査により、波佐見川の生態系に関する貴重なデータが蓄積されてきました。
しかし現在、子どもたちが川に直接入り、魚に触れる機会は減少傾向にあります。結果として「この川にどんな魚が生息しているのか」という基礎的な知識を持たないまま成長する子どもが増えているという課題に直面しています。同会はこうした地域との自然の分断に対して、実際に魚を見られる展示環境の整備により、川の環境変化やシーボルトとの歴史的つながりを可視化する必要があると認識しています。
江戸時代の自然研究の記録を未来へ継承する展示拠点を構想
シーボルトは長崎の出島に滞在した際、日本の自然の豊かさに着目し、多くの動植物をヨーロッパへ紹介しました。その対象には日本の河川に生息する小型魚類も含まれていました。波佐見川には、シーボルトが目撃した時代と生態系的につながる魚たちが現在も静かに暮らしていると考えられます。
同会の調査活動を通じて、見られなくなった魚の種類が増加し、外来種の分布が拡大しつつあることが判明しています。また水質の段階的な変化も記録されており、「かつての川の姿」がやがて記録と記憶の双方から消失する可能性が高まっています。この危機感から、波佐見川の魚を展示し、川の環境やシーボルトとのつながりを広く伝える場所の整備を企画しています。
波佐見町総合文化会館に設置予定の展示では、水槽による生きた魚の展示と、河川環境やシーボルトとの関連性を解説するパネルを組み合わせます。同展示は、地域の子どもたちの環境学習の場として機能するとともに、波佐見川の河川環境を観光資源としての価値を高める契機となることを目指しています。さらに将来的には、この展示活動を発展させ、「波佐見川水辺館(仮称)」という地域の自然と学びの拠点を実現する基盤づくりへとつなげる構想を抱いています。
企画概要と実現体制
波佐見・緑と水を考える会による本展示企画は、地域の自然(波佐見川)と歴史(シーボルトとの関連性)を「見える化」することで、子どもたちが環境について学ぶ場を創出します。同時に波佐見川の河川環境とそこに生息する魚類の棲みか(水辺)を観光資源としての価値向上を図るものです。
展示内容としては、「波佐見川たんけん図鑑」と「シーボルトの魚の絵はがき」をリターンとして準備しており、プロジェクト支援者に対して提供予定です。図鑑はA5判(21cm×15cm)で、波佐見川のプロフィールと同河川に生息する生き物たちの情報を記載しています。絵はがきは5枚1組の構成となっており、波佐見川に関連する魚類を視覚的に紹介するものです。
実施スケジュールについては、7月上旬に水槽などの展示設備を設置し、8月のミニ水族館オープンを目指しています。同年9月にはリターン品の発送が予定されており、プロジェクト完了から支援者への物品提供までの段階的な進行が計画されています。
30年超の活動実績に基づく地域環境学習の展開
同会は平成2年の設立から現在まで、波佐見町における身近な自然との接触機会を増やすための多様な活動を展開してきた実績を有しています。特に「シーボルトの川づくり塾」は平成21年の開始以降、継続的に地域の子どもたちに対して、水生生物調査や水質検査といった科学的な観察活動を提供し続けてきました。
中島淳氏による専門的な講師指導のもと、蓄積されたデータは単なる学習教材にとどまらず、波佐見川の生態系変化を記録する歴史的資料としての価値を持ち始めています。同会はこれらの調査成果と地域資源を統合させることで、より多くの住民と来訪者に対して、自然保全と地域文化の重要性を伝える機会を創出しようとしています。
本展示企画は、30年超にわたる環境学習活動の蓄積を地域全体へ還元する取り組みであり、波佐見川という具体的な水環境を通じて、シーボルトという歴史的人物との関連性を伝える教育的意義を持つものです。
企業概要
企業名:波佐見・緑と水を考える会
所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷1765
代表者:田﨑武詞
設立:平成2年
事業内容:身近な自然と触れ合える活動、地域環境学習活動「シーボルトの川づくり塾」の実施、波佐見川の生態系に関する調査研究
















