北海道のワイナリーがドローンとAI解析で 巡回・確認業務を82%削減へ ワイナリーの人手不足解決と良質なブドウの安定的な収穫目指す
~NIKI Hills Wineryでスマート農業実証実験成果報告会~
北海道仁木町でワインの製造・販売を行うNIKI Hills Winery(代表取締役社長:石川 和則)は、AIを活用した農業ソリューションを開発する韓国のテクノロジー企業DeepVisions(CEO:Kang bongsu)、および本プロジェクト全般の企画・コーディネーターとしての役割を果たすNAVER J.Hub Corporation(CEO:Kim Jinhee)と共同で「スマート農業実証実験」を進めてきました。本実証実験では、高齢化や人手不足という農業の根本的な課題に対応するため、人の作業時間と労力をいかに減らせるかに集中的に取り組みました。12月6日には成果報告会を実施し、関係者にその成果と今後の展望を報告しました。2026年も引き続き機能の多角化や高度化に取り組み、製品化と地域農業の実装を目指して、実証実験を続けます。

成果報告会の様子
■プロジェクトの背景と目的
NIKI Hills Wineryでは、6.8ヘクタールに及ぶ広大な畑で、シャルドネやピノ・ノワールといった高品質なワイン用ブドウを栽培しています。高品質なブドウを持続的に生産するためには、病害虫の早期発見や的確な生育管理が不可欠ですが、従来の人手に頼る管理では限界がありました。
この課題を解決するため、NAVER J.Hub CorporationとDeepVisionsが2024年に「Vineyard Management System (VMS)」を企画・開発、2025年4月から11月で、最先端テクノロジーを活用した新しいブドウ栽培の形を模索する実証実験を行いました 。この取り組みは、農業従事者の経験と勘をデータで裏付け、より精密で効率的な農業を実現することを目的としています。
■実証実験の概要と主な効果
本プロジェクトでは、ドローンによる圃場の自動撮影とAIによる画像解析を組み合わせ、ブドウの生育状況や病害虫の発生をリアルタイムで可視化するシステムを構築しました。
本実験は整地されていない露地や傾斜地といった厳しい環境、かつ6.8ヘクタールという広大な実際のフィールドで位置情報や病害虫の認識などの高精度を目指して行った、極めて稀な実証実験事例と言えます。
▼病害虫の自動検出と精密な位置特定
AIがドローン画像を解析し、「灰色かび病」や「マグネシウム欠乏」といった病気や生育不良を自動で検出します。発生箇所は高解像度のオルソマップ※上に正確に表示され、作業者は即座に適切な対応を取ることが可能になります 。これにより、農薬のピンポイント散布が実現し、年間農薬使用量の削減が期待されます。
※写真上の像の位置ズレをなくし空中写真を地図と同じく、真上から見たような傾きのない、正しい大きさと位置に表示される画像に変換したもの
▼データ連動型の農業日誌
散布した農薬や施肥、日々の作業内容をカレンダー形式で簡単に入力・管理できる農業日誌機能を活用。これにより、作業履歴がデータとして蓄積され、翌年以降の栽培計画の最適化に貢献します。
▼AI性能の高度化
実験で収集した膨大な画像データをAIに学習させることで、検出精度の向上を図りました 。特に、影になりやすい箇所も正確に識別できるよう、ガンマ補正などの画像前処理技術を適用しています。
■作業時間の大幅削減に
人が畑を歩いて確認する場合、約5,000時間かかると試算されますが、ドローンを利用した巡回・確認作業は上記が自動的にできるため、960時間で済み、確認作業に関して約82%の削減ができたと試算できます。
■今後の展望
NIKI Hills WineryとNAVER J.Hub Corporation、DeepVisionsは、2026年も実証実験を続け、機能の追加や高度化を予定しています。時期は未定ですが、このシステムの製品化を目指します。
▼予察機能の追加
気象観測機の設置や連動を検討し、気象データとドローンデータを組み合わせることで、病害の発生条件をAIが分析し、アラート機能を追加する予定です。これにより、病気の発生を未然に防ぐ予防的な管理を目指します。
▼生育状況の分析
マルチスペクトルデータに基づき、ブドウ畑の生育や栄養状況を分析し、栽培計画に役立てます。
▼収量予測モデルの開発
ブドウの画像を解析し、区画ごとの収穫量を高い精度で予測します。この機能によりワイナリー運用や収穫に必要とされるリソースを確保できます。
▼有害動物監視システム
シカや鳥など畑に被害を与える動物を自動で感知し、迅速な対策を可能にします。
私たちは、この先進的な取り組みを通じて、農業が抱える課題を解決するモデルケースとなり、日本における持続可能なワイン産業の発展に貢献してまいります。
■成果報告会を実施
12月6日(土)に当ワイナリーにて成果報告会を開催し、関係者の皆様に実証実験の概要や成果を報告。当日はドローンを用いたデモンストレーションを実施しました。
仁木町長の佐藤 聖一郎氏からは、「就農者の高齢化、労働力不足、気候変動への対応、鳥獣被害対策といった農業を取り巻く課題を克服するための対策であり、この実証実験がこれからの地域農業を切り開いていくための非常に大きな礎になる」、北海道大学教授/北海道ワイン教育研究センター長の曾根 輝雄氏からは「病害の情報だけでなく、農作業の管理や就業管理といった側面にも通じるものであり、非常に素晴らしい。今後、病害の予察機能を期待する」といったコメントがありました。
<質疑応答内容(一例)>
Q:低い高度(6m)でドローンを飛行させる際の、事故防止システムや安全対策について知りたい。
A:ドローンには安全システムが搭載されている。障害物センサーが付いており、周りの木や葉の揺れを検知すると一時停止する。また、バッテリー切れなどの際には自動的に離陸場所へ戻る機能(リターンホーム)もついている。運転者もコントローラーだけでなく実機を近くで確認しながら慎重に操作している。
Q:ドローンを防除(農薬散布)に利用する予定はあるか。
A:現時点ではドローンによる農薬散布の導入予定はない。しかし、AIが算出した病害や欠乏症の発生率に基づき、予防としてピンポイントで葉面散布管理ができれば、改善につながると考えている。
Q:実装についてどのように考えるか。
A:ドローン導入コストが高いという課題があるため、2026年には予測システムに注力する。安価なドローン写真と気象データを活用した予測システムが可能になれば、毎回ドローンを飛ばさなくても病害を予防できると考える。

仁木町佐藤町長のあいさつ
■NIKI Hills Wineryについて
広告会社DACグループが運営する複合型ワイナリー。準限界集落となった仁木町の再生に向け、2014年に事業をスタート。2019年にグランドオープンした33haの敷地に醸造所、ブドウ畑、ナチュラルガーデン、レストラン、宿泊棟を備えています。醸造したワインが国際コンクールで金賞を受賞するなど質の高いワインづくりを続ける一方で、地域貢献にも注力しており、ワインツーリズムで国内外の観光客を誘致することで、仁木町の活性化を目指しています。
■NAVER J.Hub Corporationついて
韓国最大のIT 企業であるNAVER Corporation が株式を100%保有する日本法人であり、日本国内における事業投資および運営を担当する会社です。主に日本でNAVERのサービス関連事業を展開しており、2020年のLINE株式取得といった主要な投資決定などにも携わっています。
URL: https://www.navercorp.com/
■DeepVisionsについて
「ビジョンAI技術で人類の課題を解決する」をミッションに掲げる韓国のテクノロジー企業です 。主力ソリューション「ビジョンプラス」は、映像データをAIで解析し、大気汚染測定のコストを99%削減するなど、さまざまな分野で社会課題の解決に貢献しています。
URL: https://www.deepvisions.co.kr/
■株式会社DACホールディングス 概要
社名 : 株式会社DACホールディングス
代表者: 代表取締役社長 石川 和則
所在地: 〒110-0015 東京都台東区東上野4-8-1 TIXTOWER UENO 13F
社員数: 903名(DACグループ総数)























