染工場がアート業界へ、「つくる」から「表現する」への事業転換　廃棄物から生まれる人形劇＆トークショー6月28日開催

イベント

2025年6月24日 10:30

染色・クリーニングなど繊維加工を行う株式会社福井プレス(代表：福井伸)は、モノ消費からコト消費への価値観の変化を受け、事業所から出る食品残渣や産業廃棄物を活用した資源循環プロセスを人形劇作品として表現する新たな取り組みを始めました。三作目の発表の場として、6月28日(土)に人形劇鑑賞会＆トークショーを開催します。

落穂拾いモチーフの人形

【製造業に広がる「コト消費」への対応】

近年、消費者の価値観は「モノ」そのものよりも、体験や共感といった「コト」を重視する流れへ変化しています。製造業でも従来の大量生産・下請け中心のビジネスモデルからの脱却を図り、自社ブランド製品の開発や体験型サービスの提供に取り組む中小企業が増加しました。こうした事業転換の動きが広がる背景には、長期的な価格競争や外注依存による収益性の低下といった課題があります。実際に、製造技術を活かした一般消費者向けの事業を展開し、業績を回復させた企業の事例も各地でみられるようになりました。体験型事業で顧客とのつながりを強め、新たな独自価値を生み出そうとする企業に注目が集まっています。

最後の晩餐モチーフの人形

【製造からアートの世界へ、新事業への一歩】

当社は、食品残渣や事業所の産業廃棄物を捨てずに活用し、天然素材の染料、キノコ栽培の培土、バイオコークス(人工薪)といった新たな資源へと再生する循環プロセスを構築してきました。特に染色においては、天然由来の色素として再利用し、環境負荷を抑えつつ独自の色味や質感を持つ素材を生み出しています。

こうした取り組みの中で、社内スタッフが染め布を使って偶然生み出したアート作品の完成度の高さに驚き、それが新たな挑戦のきっかけとなりました。産業廃棄物が次の資源として生まれ変わるプロセスそのものを、人形劇というアプローチでアートに昇華し、これまでに2作品制作しています。目に見える物語として届けることで、循環の価値を実感できる共感型の体験として提供する狙いです。

2作目には、製茶会社様からご提供いただいた廃棄材を染色に活用しています。染めた風呂敷をお届けした際、「自分たちが日々捨ててしまうものから、こんなに素敵なものができるとは思わなかった」と、多くの社員の皆様から喜びと驚きの声をいただきました。この出来事は私たちにとって、仕事への誇りと新たな挑戦への勇気を与えてくれる貴重な経験となりました。当社には美大出身の社員が多く、日頃からものづくりの技術とアートの感性が自然と混ざり合う環境があります。その土壌があるからこそ、「つくる」だけで終わらせない、届ける先の心まで響く仕事をしたいという思いが高まりました。従来の量産・加工中心の製造業の枠を越え、アートの世界へ踏み出すことで、私たちは製造業の新たな価値を生み出し、社会に必要とされる存在であり続けたいと考えています。

2作目「廃棄の舞」

【見て、触れて、味わう。資源循環の体験イベント】

こうした新しい取り組みを広く知っていただく機会として、6月28日(土)に人形劇鑑賞会＆トークショーを開催します。当社が実践してきた資源循環のプロセスを題材にした、三作目となる人形劇を上演。ゲストには、国内外で注目される現代アート集団「Chim↑Pom from Smappa!Group」のメンバー・エリイ氏を迎え、循環型モノづくりと表現活動の未来、企業コミュニケーションにおけるアートの可能性について語り合います。当日は、廃棄される靴下とコーヒー豆でぬいぐるみを作るワークショップ、コーヒー粕から育てたきのこラボの見学ツアーも実施。さらに、ヨモギビールやカレー、スイーツなどを「染食還食堂」にて提供し、資源循環の世界観を体験いただける内容となっています。

染食還食堂の様子