「精神疾患を正しく理解し、子ども自身に寄り添い、支援する自信が持てる」教員向け動画プログラムを開発。プログラムの有効性も実証され3/18より無料配信
大阪大学 蔭山正子教授(公衆衛生看護)らの研究グループ
「精神疾患の親をもつ子どもたち、小学生の91.7%が相談経験なし。それでも相談しやすかったおとなは担任の先生」との研究結果踏まえ、教員向け研修動画を開発。プログラムの有効性も実証
精神疾患は生涯に5人に1人は罹患する身近な病気。しかし、精神疾患の適切な治療や支援を受けられていないことも多い。そのため、親をもつ子どもたちは、極度の不安、心身の不調と、子ども自身への支援が必要であるにもかかわらず、小学生の91.7%、高校生でも78.6%が学校に相談経験なしと回答。それでも相談しやすかったおとなは担任の先生。小さなサインを見逃さず早期発見と周囲の理解が必要。
2021年、大阪大学 蔭山正子教授(公衆衛生看護)らの研究グループはこのような論文を発表しました。
https://doi.org/10.11236/jph.20-036
この調査結果を踏まえ、このたび蔭山教授らの研究グループは、学校教員が、精神疾患等の知識を獲得し、支援が必要な子どもの存在に気づき、子どもを支援する自信を得ることを目的とした動画プログラム「私ここプログラム」を開発。
学校教員を対象とした調査では、プログラムの有効性が実証され、2023年3月18日よりウェブで動画を無料配信しています。
またDVDも制作。希望の学校等には無料(郵送料は実費負担)でお渡しします。
蔭山教授は「30分と短い動画であるため、学校の研修などで使っていただきたい。教員個人の努力だけでは対応が難しいこともあるので、視聴後に学校の対応を一緒に考えるとより効果的だと思います」と話しています。
動画「私ここプログラム」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
2021年、大阪大学 蔭山正子教授(公衆衛生看護)らの研究グループはこのような論文を発表しました。
https://doi.org/10.11236/jph.20-036
この調査結果を踏まえ、このたび蔭山教授らの研究グループは、学校教員が、精神疾患等の知識を獲得し、支援が必要な子どもの存在に気づき、子どもを支援する自信を得ることを目的とした動画プログラム「私ここプログラム」を開発。
学校教員を対象とした調査では、プログラムの有効性が実証され、2023年3月18日よりウェブで動画を無料配信しています。
またDVDも制作。希望の学校等には無料(郵送料は実費負担)でお渡しします。
蔭山教授は「30分と短い動画であるため、学校の研修などで使っていただきたい。教員個人の努力だけでは対応が難しいこともあるので、視聴後に学校の対応を一緒に考えるとより効果的だと思います」と話しています。
動画「私ここプログラム」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
研究の背景、目的及び意義
精神疾患を患う方は増えています。海外では少なくとも子どもの7人に1人で親が精神疾患を罹患していると報告されています。子どもの中にはヤングケアラーなど困難を抱えている子もいますが、多くは大人に相談していません。「支援を必要とする子どもの存在に気づくこと」が支援の入り口になるため、学校の教員が果たす役割は大きいと思います。
そこで、本研究では、精神疾患のある親をもつ子どもを支援するための学校の教員向け研修動画を作成しました。
そして、精神疾患等の知識を獲得し、支援が必要な子どもの存在に気づき、子どもを支援する自信を得ることについて、本プログラムの有効性が評価されました。(論文公開日 2023年3月18日)
https://doi.org/10.1186/s12889-023-15426-z
以下に、プログラムの内容と検証内容について紹介します。
そこで、本研究では、精神疾患のある親をもつ子どもを支援するための学校の教員向け研修動画を作成しました。
そして、精神疾患等の知識を獲得し、支援が必要な子どもの存在に気づき、子どもを支援する自信を得ることについて、本プログラムの有効性が評価されました。(論文公開日 2023年3月18日)
https://doi.org/10.1186/s12889-023-15426-z
以下に、プログラムの内容と検証内容について紹介します。
プログラム内容
動画は30分で、プログラムは先生に見つけてほしいという意味を込めて「私ここプログラム」と名付けました。成人した子どもの会「こどもぴあ」のメンバー、学校教員、保健師、看護師、精神保健福祉士などで作成しました。
プログラムは、「知識を得る・理解する・行動する」を目標に、
・精神疾患の親をもつ子どもの存在を知る
・親の精神疾患に関する基本的な知識を得る
・子どもの生活・感情を理解できる
・困っている子どもの存在に気づく
・困っている子どもに気づいた時に行動できる
内容となっています。
具体的には、精神疾患の種類、子どもの生活体験、ヤングケアラーの役割、子どもの健康に関する知識提供を行い、次に、気になる子どもの存在に気づくサイン、どのように関わればよいか、学校での支援の進め方を示しています。最後には成人した子どもの立場の人からのメッセージがあります。
プログラムは、「知識を得る・理解する・行動する」を目標に、
・精神疾患の親をもつ子どもの存在を知る
・親の精神疾患に関する基本的な知識を得る
・子どもの生活・感情を理解できる
・困っている子どもの存在に気づく
・困っている子どもに気づいた時に行動できる
内容となっています。
具体的には、精神疾患の種類、子どもの生活体験、ヤングケアラーの役割、子どもの健康に関する知識提供を行い、次に、気になる子どもの存在に気づくサイン、どのように関わればよいか、学校での支援の進め方を示しています。最後には成人した子どもの立場の人からのメッセージがあります。
効果検証について
効果検証では、47の小学校から171名の教員が参加。学校単位で先行群と後行群に分かれてもらうクラスターランダム化比較試験を行いました。
評価指標には、支援の対処困難感(子どもや親の対応への困難感)、支援が必要な子どもという視点で子どもを見た、支援が必要な子どもに気付いた、支援が必要な子どもについて学校内で相談した、という行動、精神疾患や子どもに関する知識に関する質問項目を用いました。視聴前、視聴直後、視聴後1カ月の3時点でウェブアンケートに答えてもらいました。
評価指標には、支援の対処困難感(子どもや親の対応への困難感)、支援が必要な子どもという視点で子どもを見た、支援が必要な子どもに気付いた、支援が必要な子どもについて学校内で相談した、という行動、精神疾患や子どもに関する知識に関する質問項目を用いました。視聴前、視聴直後、視聴後1カ月の3時点でウェブアンケートに答えてもらいました。
結果
視聴したことによって、子どもや家族の対応への困難感(対処困難感)が1か月にわたって軽減されました。
「支援が必要な子どもという視点で子どもを見た」という行動、および、「精神疾患は生涯で5人に1人が発症する」「精神疾患に罹患した人のうち半数は10代半ばまでに発症する」という知識について受講後1か月にわたって効果がありました。
自由記載では、新しく知ったことで印象に残ったこととして、多い順に「子どもに寄り添う大切さ」「子どもの想いや考え」「発症率の高さ」「精神疾患のある親をもつ子どもの多さ」でした。今後の行動としては、多い順から「子どもの背景を丁寧にみる」「寄り添い続ける」「困っている子どもに気づけるようにする」などの他、「学校全体で対応する」などの組織的対応もあげられていました。
「支援が必要な子どもという視点で子どもを見た」という行動、および、「精神疾患は生涯で5人に1人が発症する」「精神疾患に罹患した人のうち半数は10代半ばまでに発症する」という知識について受講後1か月にわたって効果がありました。
自由記載では、新しく知ったことで印象に残ったこととして、多い順に「子どもに寄り添う大切さ」「子どもの想いや考え」「発症率の高さ」「精神疾患のある親をもつ子どもの多さ」でした。今後の行動としては、多い順から「子どもの背景を丁寧にみる」「寄り添い続ける」「困っている子どもに気づけるようにする」などの他、「学校全体で対応する」などの組織的対応もあげられていました。
考察
本プログラムは、精神疾患の親やその子どもの対応への困難感を減らすことに十分な効果があり、知識や行動にも効果が見られました。
研究責任者 蔭山正子教授 まとめ
これまでの研究から、精神疾患の親をもつ子どもを発見する難しさが明らかになり、子ども自身から、SOSを出させようとするには限界があると考えました。
子どもたちが、学校で先生にしてもらって嬉しかったことは、話を聴いてくれたこと、認めてくれたこと、気にかけてくれたことなどであり、性急に家庭の問題に介入するのではなく、まず子ども自身に寄り添うことが大切だと考えられました。
また、精神疾患への偏見は、子どもが問題を隠すことにつながるため、周囲の正しい理解が必要だと考えられました。
本プログラムは、30分と短い動画であるため、学校の研修などで使っていただきたいです。教員個人の努力だけでは対応が難しいこともあるので、視聴後に学校の対応を一緒に考えるとより効果的だと思います。
子どもたちが、学校で先生にしてもらって嬉しかったことは、話を聴いてくれたこと、認めてくれたこと、気にかけてくれたことなどであり、性急に家庭の問題に介入するのではなく、まず子ども自身に寄り添うことが大切だと考えられました。
また、精神疾患への偏見は、子どもが問題を隠すことにつながるため、周囲の正しい理解が必要だと考えられました。
本プログラムは、30分と短い動画であるため、学校の研修などで使っていただきたいです。教員個人の努力だけでは対応が難しいこともあるので、視聴後に学校の対応を一緒に考えるとより効果的だと思います。
「私ここライブラリー」に関連して
ホームページ「私ここライブラリー」
こどもぴあと協力して行ってきた研究成果をまとめ、精神疾患の親をもつ子どもを支援される方に役立つ情報をとどめるホームページです。
「私ここライブラリー」では、学校の先生向けの動画「私ここプログラム」、子ども版家族による家族学習会、小学生から高校生の経験に関する実態調査、その他書籍や論文をご紹介します。
●ホームページ「私ここライブラリー」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
「私ここライブラリー」では、学校の先生向けの動画「私ここプログラム」、子ども版家族による家族学習会、小学生から高校生の経験に関する実態調査、その他書籍や論文をご紹介します。
●ホームページ「私ここライブラリー」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
「私ここプログラム」DVDを学校等に無料でお渡しします(郵送料の負担あり)
『静かなる変革者たち 〜精神障がいのある親に育てられ、成長して支援職についた子どもたちの語り』(ペンコム,2019)について
この本は、精神疾患の親に育てられ成長して支援職に就いた子どもの立場4名が体験談を書きました。具体的な体験談を知ることで子どもの気持ちや経験をより理解できるようになると思います。
著者・横山恵子、蔭山正子 こどもぴあ 出版:ペンコム
https://pencom.co.jp/product/20191007
著者・横山恵子、蔭山正子 こどもぴあ 出版:ペンコム
https://pencom.co.jp/product/20191007
調査資料
●書誌情報 公開日2023年3月18日
Masako Kageyama,Atsunori Matsushita, Ayuna Kobayashi, Taku Sakamoto, Yasuhiro Endo, Setsuko Sakae, Keiko Koide, Ryotaro Saita, Hiyuka Kosaka, Satoko Iga, Keiko Yokoyama. Video-based e-learning program for schoolteachers to support children of parents with mental illness: a cluster randomized trial. BMC Public Health.
https://doi.org/10.1186/s12889-023-15426-z
●ホームページ「私ここライブラリー」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
●こどもぴあホームページ
https://kodomoftf.amebaownd.com/
●こどもぴあ大阪ホームページ
https://kodomoftf-osaka.amebaownd.com/
Masako Kageyama,Atsunori Matsushita, Ayuna Kobayashi, Taku Sakamoto, Yasuhiro Endo, Setsuko Sakae, Keiko Koide, Ryotaro Saita, Hiyuka Kosaka, Satoko Iga, Keiko Yokoyama. Video-based e-learning program for schoolteachers to support children of parents with mental illness: a cluster randomized trial. BMC Public Health.
https://doi.org/10.1186/s12889-023-15426-z
●ホームページ「私ここライブラリー」
https://kageyamaresearch.wixsite.com/watashikoko
●こどもぴあホームページ
https://kodomoftf.amebaownd.com/
●こどもぴあ大阪ホームページ
https://kodomoftf-osaka.amebaownd.com/
研究に関するお問い合わせ先:蔭山正子(研究責任者)
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘1-7 大阪大学高等共創研究院/医学系研究科保健学専攻
Eメール:kageyama@sahs.med.osaka-u.ac.jp
Eメール:kageyama@sahs.med.osaka-u.ac.jp
- カテゴリ:
- サービス
- ジャンル:
- その他ライフスタイル
記事掲載数No.1!「@Press(アットプレス)」は2001年に開設されたプレスリリース配信サービスです。専任スタッフのサポート&充実したSNS拡散機能により、効果的な情報発信をサポートします。(運営:ソーシャルワイヤー株式会社)