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【今すぐできる災害対策】ハザードマップは完璧じゃない!? 災害リスクを考えて土地を選ぶ・備える

新建新聞社/新建ハウジングjimosumuから今すぐできる災害対策を紹介します。

ここ数年、気候変動によって豪雨や大型台風が増え、それと同調するように水害が増えています。これから家を建てる人はもちろん、今住んでいる家の地域や土地、建物の災害リスクや対策について知ること、行動することが個人にも求められています。

先日、株式会社さくら事務所がメディア向けにオンラインで開催した「災害リスクセミナー」から、個人ができる災害対策をまとめました。
※株式会社さくら事務所ページ

災害が起きやすい地域、立地とは

豪雨の発生頻度が増加する近年、水害は同時多発的・広域に大被害が起きてしまうという傾向にあります。災害時に地形と地質の専門家として現地入りし、被害を調査してきた だいち災害リスク研究所 所長の横山芳春さんは、「水害・土砂災害が『起きて不思議だ』という場所で起きることはない」といいます。自然の原理原則に基づいて災害が起こっていて、気候変動や人工的改変が被害増大に拍車をかけているというのが実態なんだそう。
※だいち災害リスク研究所ページ
例えば、熱海の土石流が起きたエリアは、土石流を繰り返すことでできた「土石流推(どせきりゅうたい)」という土地で、ハザードマップ上でも土砂災害特別警戒区域(土石流)。全くのノーマークエリアではなかったそうです。そこに盛土や残土処理などの人による土地改変が行われたことで、大きな被害の土石流発生を助長させた可能性があるとのこと。
熱海市で土石流があったエリアのハザードマップ。急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりといった項目で色がついている。黄は警戒区域、赤は特別警戒区域(出典:ハザードマップ)
「災害リスクの低い土地」を知ることで、被災するリスクを最大限抑えることができるということはニュースなどでもよく聞きますよね。今年5月20日に避難勧告を廃止し、避難指示に1本化するという避難情報の見直しがあった災害対策基本法にも「危険な場所から避難」とありますが、「危険な場所」とはどのような場所を指すのでしょうか。「災害リスクの低い土地」、「危険な場所」について知っておくことができれば、どんな災害に注意がすべきかがわかってきます。
5月20日から避難勧告は廃止に。避難指示で避難に変わった(出典:内閣府防災)
ハザードマップから知ることができる水害リスクは、下記2つです。
・「家屋倒壊等氾濫想定区域」に該当しないか
・想定される水の深さ(想定浸水深)が、住まいの床の高さを超えているか
これらに該当する場合、水害時に区域外への避難が必要になるエリアということになります。
また、土砂災害リスクについては、自治体が土砂災害防止法に基づき、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)および土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を指定しています。このエリアは、土砂災害発生時に建築物の損害が生じ住民等の生命または身体に(著しい)危険が生ずる恐れがあると認められているエリアです。このように、ハザードマップで色がついているエリアは、要注意なのです。

ただし、ハザードマップはあくまで想定です。想定区域外(色がついていないエリア)で災害が起きることもあります。
では、ハザードマップで色がついていない場合、何をどのように想定できるのでしょうか? 横山さんによると、地形区分、土地の履歴、災害の履歴などを考慮することで災害リスクを検討することができるそうです。地形は山地、丘陵地、大地、低地、埋立地の5つに区分することができ、それぞれに異なるリスクがあります。「山地は地震で揺れにくいが土石流・地滑りの危険があり、低地は土石流・地滑りのリスクは低いが地震で揺れやすい」など、自分が住む予定の場所や住んでいる場所の地形の特性を知ることが重要で、「ハザードマップに色がついていない=安全」ではないことを理解して、十分に注意する必要があるといいます。

私たちができる対策

では、すでに住んでいる場合はどのように災害と向き合っていけば良いのでしょうか。だいち災害リスク研究所・研究員田村啓さんは、建物でできる土砂災害対策について、急傾斜地の崩壊(崖崩れ)には行える対策があるといいます。
街中には、高低差のある土地で側面の土が崩れるのを防ぐために設置される擁壁(ようへき)という壁状の構造物がたくさんあります。これらにクラックやずれ、折れなどの問題がある場合、崩落の危険性があるのです。排水が詰まっていないか、擁壁が膨らんでいないかなど、近所の擁壁に崩落の危険性が潜んでいないか、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」で確認しておきましょう。
街中でよく見られる擁壁。穴は排水を行うためのもの(PhotoAC)
ではもし、自宅の裏手の擁壁が崩落する可能性がある場合、個人でどんな対策ができるのでしょうか。
事前対策としては、擁壁側にRC(鉄筋コンクリート)の基礎で壁をつくることです。擁壁と並行に、家屋にぴったりくっつくような壁を建てることで、もし擁壁が崩れてしまったとしても、家本体を守ることができるそう。すぐに崩落の危険がある場合、時間に猶予があれば水平避難を基本としてその場所から離れる、緊急なら垂直(上の階)に避難をするなどの身を守る行動が必要です。

すぐにできる水害対策

水害対策は、浸水対策、逆流対策、水没対策の3つが挙げられます。この3つが兼ね備えられている家が、水害に強い家と言えます。
浸水対策としては、かさ上げ、高床、囲む、建物防水が挙げられます。都心部では、半地下になっている家屋が多くみられますが、大雨・洪水の際にはどんどん水が流れ込んでしまって、玄関を開けることすら難しくなってしまうそう。水害に弱い半地下の建物には、防水壁で囲む対策が有効です。止水板を使用するのも有効でしょう。

玄関からの浸水については土嚢(どのう)が広く知られていますが、土嚢がなくてもゴミ袋で作ることができる水のうや、ブランター、ポリタンク、レジャーシートといった身近なもので浸水を防ぐことができるそう。自宅に浸水対策に使用できるものがあるか確認しておきましょう。ない場合は万一に備えて購入するのも良いでしょう。

戸建て住宅に比べて、浸水の被害が少ないと考えられがちなマンションでも、浸水被害は深刻な問題になっています。電気設備やポンプといった設備を地下室に設置していることがあるからです。これらの設備が水没してしまうと、エレベーターの停止や停電、給水の停止など、生活に大きな影響を及ぼしてしまうので、自分が住むマンションのどこに止水板が設置されているか、また各種設備がどこに設置されているのかなど、事前に知っておくのも大事です。危険があると想定される場合は管理組合に相談しましょう。

もしもに備える

災害はいつ起きるかわかりません。それでも、事前に危険性を知ることや、対策を考えることはできます。
今、みなさんは自分の家のある場所、これから住む場所についてどれだけ知っているでしょうか?
まずは以下のハザードマップポータルサイトを開いて、色がついているエリアじゃないか、色がついていなくても地形から想定できる災害はなんなのかを知ること。周辺環境に危険なところはないかを知ること。実際に災害が起きたらどのような行動を取るべきか知ることから始めたいですね。

リスクを知った上で、緊急時に素早く行動できる、自分自身の身や家族の安全を確保できる、家を守れるように対策しておくに越したことはありません。
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