待望の最新作『ノーマン・ザ・スノーマン 〜こどもたちのひとつ星〜 』ティザーお披露目!10周年を迎えるTECARAT制作の裏側を聞く:開催レポート(第12回新千歳空港国際アニメーション映画祭)
新千歳空港ターミナルビルを舞台に11月21日より開催している「第12回新千歳空港国際アニメーション映画祭」では、設立10周年を迎えるスタジオ「TECARAT(テカラ)」による特集上映と特設会場での単独講演「スタジオトーク:TECARAT(テカラ)「TECARAT 10年の歩み」」としてトークプログラムが開催されました。
今回のトークでは、プロデューサーの及川雅昭さん、日下部泰寛さん、監督の八代健志さん、そして次回作の監督を務める廣木綾子さんが登壇し、シリーズ誕生のきっかけや制作の背景、この先の展望を語りました。
TECARAT、10年の歩み
TECARATは、太陽企画の美術部門として2015年に設立されました。きっかけとなったのは、プラネタリウム向けに制作した『ノーマン・ザ・スノーマン 〜北の国のオーロラ 〜』(2013年)。予想以上の反響を受け、次作『眠れない夜の月』を経て、TECARATが誕生しました。
名称の“TECARAT(てから)”には、「手から生まれるものづくり」の意志が込められています。八代さんは、「分業を前提とした制作ではなく、数人のチームで手作業を通じて表現を作り上げることで、新しい発想や自由な表現が生まれた」と振り返ります。立体的な造形と緻密な美術が一体となる“非分業”のスタイルは、TECARATの個性を形づくってきました。

廣木さんは、「分業にとらわれず、全員が作品全体に関わる環境で、自分の手で考えてつくる経験が大きかった」と当時を振り返り、日下部さんは、「100年後も残る映像を目指して」という理念を掲げ、次世代に伝わる映像づくりへの想いを語りました。
『ノーマン・ザ・スノーマン』シリーズの魅力
『ノーマン・ザ・スノーマン』は、少年の成長と親子の絆を描いた温かな物語として、多くの人に愛される作品です。シリーズはもともと、プラネタリウム向けのオリジナル作品として構想されたものでした。及川さんは「300館を超える全国のプラネタリウムで上映する作品を作りたいと思った」と語り、当時一人で人形アニメーションを制作していた八代さんの短編を見て「この世界観を物語にしたい」と声をかけたことが始まりだったと振り返りました。「天文にまつわる要素を入れるというルールだけ決めて、あとは自由に作ろうというところから始まったんです」と、創作の原点を明かします。
八代さんは、「雪国で過ごした子どもの頃の記憶や、親が子に雪だるまを作ってあげる光景などをもとに物語を組み立てた」と話し、作品に込めた郷愁や家族の想いを語りました。
最新作『こどもたちのひとつ星』、初のティザー映像公開
イベントでは、シリーズ最新作『ノーマン・ザ・スノーマン 〜こどもたちのひとつ星〜』のティザー映像が初披露されました。物語の舞台は前作から数年後。成長した少年が久しぶりに故郷へ帰り、母親との再会や、雪の華を探す謎のこどもとの出会いから始まる物語となります。

日下部さんは「青年期の繊細な感情や、母親との関係性を丁寧に描きたい」と語り、物語のテーマについて触れました。さらに本作では、これまで監督を務めてきた八代さんから廣木さんへとバトンが渡されます。新たな監督としての思いを問われた廣木さんは、「これまでの世界観を壊さずに受け継ぎながらも、男の子を育てている母親として子に向ける目線など、自分らしい表現を大切にしていきたい」と力を込めました。
作品は2026年12月から全国のプラネタリウムで上映予定。過去2作とあわせた三部作としての劇場公開も計画されており、今後の展開にも期待が高まります。最後に日下部さんは、「公式サイトやSNSで情報を発信していきます。来年の冬を楽しみにしていてください」と語り、会場からは大きな拍手が送られました。
手づくりの温度を未来へ――TECARATが目指すこれからの10年に向けて
イベントの終盤では、TECARATのメンバーが次の10年への展望を語りました。
八代さんは「長編映画の制作に挑戦したい」と意欲を示し、「非分業の良さを活かしながらも、分業と協働を両立させる新しい形を探りたい」と語りました。
及川さんは「10年でTECARATの名前を知ってもらえるようになった。次の10年は“100年後も残る組織”をつくっていきたい」と述べました。

廣木さんは「今は目の前の制作で精一杯ですが、1本1本の積み重ねが未来につながると信じて頑張りたい」と話し、日下部さんは「この場所が続いていくこと自体が大切。新しい代表作を自分の手で生み出したい」と抱負を語りました。
最後に八代さんが「水面下で進めている新しい企画もあります。長く応援していただければうれしいです」と来場者に感謝の言葉を伝え、10周年の節目を締めくくりました。

新千歳空港国際アニメーション映画祭
国内外の話題作など招待作品の上映はもちろん、多様な未来につながるアニメーションの体験を提供する70以上のプログラムを展開します。今年もゲストと観客が密接に交流できる独自の場を活かし、アニメーションの意義を拡張するような新しい価値を生み出す「遊び場」として、エネルギーを持ち帰ることができる文化交流拠点の創造を目指します。
開催日時:2025年11月21日(金)〜25日(火) 5日間
場所:新千歳空港ターミナルビル(新千歳空港シアターほか)
















