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明治大学バイオリソース研究国際インステュテュートが、 稀少難治性疾患モデルブタの繁殖・生産・供給システムの開発に成功

致死性X連鎖性遺伝病を発症する疾患モデルブタの開発と、その繁殖・供給システムの確立に関する論文を、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United  States of America)に発表しました。

 

オンライン発表(Early Edition):2018年1月8日 (doi: 10.1073/pnas.1715940115)

論文タイトル:Modeling lethal X-linked  genetic disorders in pigs with ensured fertility

著者:松成ひとみ(研究・知財戦略機構 特任講師)

責任著者:長嶋比呂志(農学部生命科学科 専任教授)


1.研究の背景

治療法の確立されていない稀少難治性疾患の研究には、その病気を再現する動物、すなわち疾患モデル動物が重要な役割を果たします。多くの遺伝性疾患について、疾患モデルマウスやラットが開発されていますが、それらの動物が現す症状がヒト患者のそれと異なることも多く、治療法や薬剤の開発に支障をきたす場合が少なくありません。ブタは近年、生理・解剖学的にヒトとの共通点が多い大型実験動物として、医学研究に多用されるようになっています。このようなブタの利点から、遺伝性の稀少難治性疾患モデルをブタで開発して研究に利用する動きが活発化しています。既に開発された数種類の疾患モデルブタには、ヒト患者に類似した症状が現れ、その有用性が確認されています。患者数の少ない稀少難治性疾患の治療薬や治療法の開発は立ち遅れており、疾患モデルブタの供給・利用が進むことで、患者の救済が加速化することが期待されます。

一方、遺伝性疾患モデルとしての遺伝子改変ブタの開発や維持に要する労力や経費が、研究開発上の大きな課題として存在します。疾患モデルには、若齢期に発症するものも多く、そのような場合は、有用な個体の維持・繁殖が困難となり、研究利用が妨げられます。


2.本研究で達成したこと

致死性の遺伝性疾患を発症するブタを、正常な細胞とのキメラ状態に誘導することで、その疾患の症状を緩和し、個体を健常な成長さらに繁殖可能な状態に導く方法を確立しました(添付図1,2参照)。具体的には、3種類のX連鎖性遺伝病(先天性代謝異常症の一種であるオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症 [尿素サイクル異常症])、重症複合免疫不全症、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを対象とし、それらの疾患の原因となる変異遺伝子を持ちながら、健常に成長して繁殖可能な雄のキメラブタを作出し、そのブタの繁殖によって後代の研究用モデルを生産、あるいは精子を採取して凍結保存する一連のシステムを確立しました。このシステムは、X連鎖性遺伝病以外の様々な遺伝性疾患に応用可能なので、多様な疾患モデルブタの凍結精子バンクの樹立に役立ち、貴重なモデルブタの研究利用を促進することが期待されます。


3.研究内容

上記3種の疾患のモデルブタ(雄)を、ゲノム編集などの遺伝子改変技術と体細胞クローニング技術を用いて作製しました(添付図2参照)。これらのモデルはいずれも、新生仔〜幼若期から発症するため繁殖が不可能です。そこで、これらのモデルの細胞を用いてクローン胚を作製し、それらのクローン胚を別途作製した正常な雌のクローン胚の細胞と混ぜ合わせることで、キメラ胚の状態に導きました。キメラ胚から生まれた個体、すなわちキメラ個体は体組織の約半分が遺伝子変異を持つ雄の細胞で構成されているものの、残りの半分が正常な雌の細胞で構成されるため、結果的に繁殖能力を持つ健康な雄に成長することができます(添付図2参照)。雄細胞と雌細胞で構成されたキメラブタは、ほぼ確実に雄に性分化する(我々の以前の研究による)ので、このキメラ個体も雄となり、しかも都合の良いことに、変異遺伝子を持った精子が作られます。従って、このキメラ雄個体、あるいはこの個体の精子を用いて、次世代を残すことが可能になります(添付図1参照)。


4.利用の実際例

上記3種の疾患について、キメラ雄由来の遺伝子変異を有する精子が既に凍結保存されています。それらの精子を用いて、体外受精や人工授精によって、次世代個体を生産できることも確認されています。生産された次世代の雌は全て、一方のX染色体に変異遺伝子を持つ個体、いわゆる疾患の原因となる遺伝子変異のキャリアーとなります。変異遺伝子のキャリアー雌から生まれる雄個体は、実際に発症する個体として、すでに他研究機関等の研究に利用されています。大量に生産された凍結精子を維持する限り、キャリアー雌を経て、研究用のモデルブタが必要に応じて供給されることになります。本学発のバイオベンチャー「株式会社ポル・メド・テック」を通じて、疾患モデルブタの普及・利用を進めていく計画です。


5.共同研究先

国立成育医療研究センター、自治医科大学、東京大学医科学研究所

ルートヴィヒ・マキシミリアン大学ミュンヘン(LMU Munich)


6.支援を受けた研究費

明治大学バイオリソース研究国際インスティテュート

JST/CREST ヒトiPS細胞の高品質化とその検証・応用

JST/ERATO 中内幹細胞制御プロジェクト

AMED/LEAP 発生原理に基づく機能的立体臓器再生技術の開発  

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