【青森屋】青森屋×十和田市立第一中学校 第1回協働授業実施の報告 ~伝統工芸品「きみがらスリッパ」に関するふるさと学習~|2020年7月14日

    サービス
    2020年7月27日 16:00

    青森の文化を満喫できる宿「星野リゾート 青森屋」は、2020年7月14日、十和田市立第一中学校(以下第一中学校)が実施するふるさと学習に参加しました。第一中学校では、地域の歴史や産業、伝統文化を学び、未来に継承していくための活動として、毎年全学年でふるさと学習を行っています。今回、十和田市の伝統工芸品「きみがらスリッパ」の調査をしている 2 学年の生徒が来館し、青森屋で取り組んでいる「きみがら(*1)プロジェクト」を学びました。授業では、プロジェクトに関わるスタッフが、デントコーン畑やミニぞうり作り体験を案内しました。
    *1 青森の方言でトウモロコシの皮の意味。

    協働授業の概要

    第一中学校の2学年は「十和田の歴史と伝統~過去・現在・未来へつなぐ~」というテーマのもと、伝統工芸品「きみがらスリッパ」を調査しています。ゴールは、学んだことをポスターやリーフレット等にまとめ、11月中旬に予定している修学旅行先で十和田市及び青森県の魅力をPRすることです(*2)。
    第1回協働授業の今回は、青森屋スタッフがきみがらスリッパの材料となるデントコーン畑を案内し、きみがらプロジェクトの取り組みを説明しました。また、実際に手編みの大変さを体験するため、きみがらを使用したミニぞうり作りに挑戦しました。
    10月下旬に予定している第2回協働授業では、生徒が作成したきみがらスリッパの資料を青森屋スタッフに発表します。修学旅行先でのPR活動を見据えて、地域の魅力を伝える方法を共に考えます。
    *2 7月14日時点で修学旅行の実施及び詳細については未定。

    第1回協働授業のご報告

    実施日時:2020年7月14日(火)10:00~13:00
    場所  :星野リゾート 青森屋

    授業内容:

    1 デントコーン畑の見学

    畑では、栽培方法と馬耕、生育状況について説明をしました。生徒は、鳥よけの薬剤をコーティングしたデントコーンの種、馬糞を使用している土を実際に触りながら学んでいました。青森屋スタッフからは、より良い生育を望む思いと、草取りの時間を十分に取れない現実との葛藤を伝えました。

    2 手編みの大変さを知るミニぞうり作り体験

    1人1つ、長さ10㎝ほどのミニぞうり作りに挑戦しました。全生徒が初めての体験で、皮の表裏や編み方を一から学びました。約50分かけて、片足分のミニぞうりが完成。実際に手編みをしたことで、大人用スリッパを作る大変さや機械では作れない難しさや温かさを感じてもらうことができました。

    <参加生徒の感想>

    十和田市立第一中学校2年 中川百花(なかがわももか)

    ミニぞうり作りが一番印象に残っています。実際に作ってみて、意外と力が必要で細かい作業も多く、大変なことがわかりました。これを伝統として残していくことがこれからの課題なのだと思いました。修学旅行では、十和田の魅力をわかりやすく伝えられるように、工夫を凝らして臨みたいと思います。

    <参加教諭の感想>

    2学年 学年主任 工藤信子(くどうのぶこ)

    ふるさと学習では、地元の魅力を再発見し、課題に気づき、生徒自身でできる解決策を考えることを目標にしています。今回は、青森屋のスタッフのプロジェクトに対する熱意を肌で感じることができ、伝統工芸品の大変さや良さ、温もりを体験できたことが大きな収穫だったと思います。今日の学びを活かし、普段は気づかないようなふるさとの良さに着目し、自分たちなりのアイデアで自由に発信してもらいたいと思っています。

    <青森屋スタッフの感想>

    きみがらプロジェクトメンバー 新井瑠莉(あらいるり)

    今回のように授業に参加させていただくのは初めてでしたが、生徒の皆さんが新たな気づきを得ることをお手伝いでき大変嬉しく思います。ミニぞうり作り体験では、手編みの難しさを乗り越えながら一生懸命に製作されている姿が印象的でした。次回の授業で、生徒のみなさんの発表を拝見できることを楽しみにしております。

    青森屋が取り組む「きみがらプロジェクト」とは

    きみがらスリッパは、トウモコロシの皮を材料にスリッパを作る十和田市の伝統工芸品です。軽くて丈夫な上、履き心地がよく、夏は涼しく、冬は温かく過ごせます。かつて国内有数の馬産地だった青森県で、馬の飼料であるトウモロコシの残った皮を活用したことで生まれ、農閑期に家庭で作られてきました。現在、その作り手が減少しており、高齢化や後継者不足が課題です。きみがらスリッパを継承するため、青森屋は、作り手である「十和田(とわだ)きみがらスリッパ生産組合」の協力を得ながら、馬耕を復活し材料となるトウモロコシをホテルの敷地内で生産し、工芸品の製作技術をスタッフが習得する取り組みを開始しました。

    ■きみがらプロジェクト紹介動画:

    <参考資料>

    ■馬耕の技術を身に着けるまで

    青森をはじめ全国各地で盛んだった馬耕は、昭和30年代頃から耕うん機が普及するにしたがい行われなくなり、現在では限られた地域や人々にのみ受け継がれています。青森屋で挑戦するにあたり、まずは知識を深め農機具を調達するところから始まりました。北海道や長野県など全国へ足を運び、農機具の扱い方や、人間と馬を訓練する方法など、専門的な知識を学びました。上手に耕すには、馬に決まったコースを一定の間隔で進んでもらい、人間が手先に伝わる振動と土の状態を見て鋤を調整する必要があります。実際に訓練してみると、普段運行する馬車やお客様のお出迎えの業務とは大きく異なる技術が必要なことに、馬も人間も苦労しました。未熟な点はありながらも、春の耕作で実施することができました。

    管理は手作業!トウモロコシの栽培を勉強

    きみがらスリッパに使われるトウモロコシには、主に飼料用に栽培される「デントコーン」という品種が最も適しています。デントコーンは日本国内でも各地で栽培されていますが、多くは茎や実を農機械で破砕して収穫されます。きみがらスリッパの材料を揃えるには、実をひとつずつ収穫し、皮をむき、乾燥させる昔ながらの手作業が必要です。栽培方法を勉強するため、生産組合の畑に伺い、昨年10月に収穫、今年5月に種まきに参加させていただきました。実際に体験してみると、書籍を読むだけでは分からないことや、作業の大変さを知ることができました。

    敷地内のトウモロコシ畑で初めての種まき

    初めての種まきは、2020年6月8日に行いました。この畑は、青森屋で働く馬のスタッフが耕しました。馬が農機具の鋤(すき)を引き、人間が馬と息を合わせ鋤のバランスを調整しながら、土を起こしました。当日は、約1,000株分の種をひとつずつ手作業で畑にまきました。ほとんどのスタッフは農業経験がなく、工芸品の材料を揃えるためには多くの手間ひまがかかることを改めて実感しました。スリッパ1足編むのにはトウモロコシ20本分以上の皮が必要です。今後、草取りや害獣・台風対策など栽培作業が続きますが、アクティビティに向け材料を着実に確保できるように、ひとつひとつ大切に育てていきます。

    <繊細な技術が必要な工芸品製作修行の日々>

    昨年の12月から、きみがらスリッパや小さなぞうりを編む技術を生産組合の方々から学ばせていただいています。編む手順を覚えるのはもちろん、1枚1枚異なる皮の状態を見極め、部位に合った皮を選定・加工し、適切な力加減で編む能力を身に付けなければいけません。アクティビティで宿泊者にどんな体験をしてもらうか考えを巡らせながら、作り手としても一人前に近づけるように、修行を続けています。

    今後の予定

    2020年7月~ 草取り、害獣・台風対策など栽培作業
    10月  青森屋でトウモロコシの初収穫
       十和田市立第一中学校との第2回協働授業
    11月~ 収穫したトウモロコシの皮むき、加工
    12月~ きみがら作品製作体験開始
    備考:状況により、予定が変更になる場合があります。

    目指すのは、青森本来の暮らしの再現

    かつて、国内有数の馬産地だった青森県では、馬が農耕や荷物運搬の働き手として活躍していました。馬の飼料であるトウモロコシが大規模に栽培され、大量に余るトウモロコシの皮がもったいない、ということでスリッパを編むようになったのが、きみがらスリッパの始まりです。馬の力を借りて畑を耕し、馬糞(ばふん)は堆肥となり、飼料を育て食料を確保し、食には不要な材料まで無駄なく工芸品に生まれ変わらせる資源の循環が、青森では昔から行われてきました。青森屋では、地域本来の暮らしを再現し、観光資源として活用することで、持続可能な地域文化の継承活動に繋げていきます。

    星野リゾート 青森屋

    「のれそれ(*青森の方言で目一杯の意味)青森~ひとものがたり~」をコンセプトに、青森の祭りや方言などの文化を満喫できる温泉宿。約22万坪の敷地内には、池や古民家の点在する公園もあり、食事や多彩なアクティビティを楽しむことができます。
    青森県三沢市字古間木山56/客室数236室
    https://www.hoshinoresorts.com/ja/hotels/aomoriya/

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