日本の核医学市場2024~2031年、市場規模・企業動向・分析レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「日本の核医学市場2024~2031年、英文タイトル:Japan Nuclear Medicine Market Research 2024-2031」調査資料を発表しました。本資料には、日本市場規模、企業動向、セグメント別予測、市場シェアなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
日本の核医学市場は、2023年に5億5,030万米ドル規模となり、2031年には25億4,320万米ドルへ拡大すると予測されている。2024~2031年の年平均成長率(CAGR)は21.2%と非常に高く、がんや心血管疾患の増加、高齢化、PET・SPECTを中心とした画像診断技術の普及、新しい放射性医薬品の開発などを背景に、大幅な成長が見込まれている。
核医学は、放射性トレーサー、すなわち放射性医薬品を体内に投与し、その動きを特殊な画像装置で追跡することで、臓器や組織の機能を評価したり、病気を診断・治療したりする医療分野である。代表的な画像診断技術としてSPECT(単一光子放射断層撮影)とPET(陽電子放出断層撮影)があり、いずれも体内に投与された放射性医薬品の分布を3次元画像として可視化する。
SPECTでは、患者に投与した放射性トレーサーから放出されるガンマ線をガンマカメラで検出し、身体の周囲のさまざまな角度から得た多数の投影画像をコンピューター処理することで3次元画像を作成する。一方、PETも放射性医薬品を利用して3次元画像を生成するが、SPECTとの主な違いは使用するトレーサーにあり、PETでは放射性核種の崩壊時に放出される陽電子を利用する。こうした高度な機能画像技術の発展が、日本の核医学市場拡大を支える基盤となっている。
市場成長の最大の推進要因の一つは、がんと心血管疾患の増加である。PETやSPECTは、がんの早期発見、病変の位置や広がりの把握、治療方針の決定、治療効果の評価などに重要な役割を果たす。また、心血管疾患においても、心筋血流や心機能の評価などに活用されるため、疾病負担が増えるほど核医学診断の需要も高まりやすい。
日本は世界でも平均寿命が長い国の一つであり、その背景には国民皆保険による高度な医療技術へのアクセス、定期健診、心血管疾患やがんのスクリーニングなどの公衆衛生活動、伝統的な食生活や健康的な生活習慣があるとされる。一方、長寿化に伴って高齢者人口が増え、がんや心血管疾患の罹患も増加している。長期的な治療成績は改善しているものの、がんは依然として主要な死因であり、心血管疾患も大きな疾病負担を占めている。
特に高齢化によって、がんと心血管疾患を同時に抱える患者や、がん治療の影響によって心血管系の合併症を生じる患者への対応も重要になっている。そのため、病変の存在だけでなく、臓器機能や代謝活動を評価できる核医学画像の臨床的価値が高まっている。
核医学市場では、診断だけでなく治療用途の拡大も重要なテーマとなっている。特に注目されているのが、標的放射性医薬品(Targeted Radiopharmaceuticals:TRPs)である。これは、特定の分子標的を発現する細胞に放射性核種を選択的に届けることで、正常組織への影響を抑えながら病変を治療しようとするアプローチである。
標的放射性医薬品は一般に、標的分子に結合する部分、リンカー、キレート剤、放射性核種など複数の構成要素から成り、それらを組み合わせることで特定の腫瘍細胞などに治療用放射線を集中させる。がん領域を中心に利用が進んでいるが、将来的には非がん領域への応用も期待されており、核医学市場の成長を診断装置だけでなく医薬品側からも押し上げる可能性がある。
日本のがん疾病負担は大きい。本文によると、WHOの2022年データでは、日本では新規がん症例が100万5,157件、がん死亡が42万6,278件、過去5年間の有病患者数が274万1,718人に達している。こうした大規模な患者人口が、より高精度な診断と個別化治療への需要を強め、PET、SPECT、標的放射性医薬品などへの投資を促している。
市場成長には、企業・大学・国際機関による研究連携も寄与している。2023年3月には、国際原子力機関(IAEA)が、日本の大学・科学研究機関11組織から成るコンソーシアムと「Rays of Hope」イニシアチブの一環として協定を締結した。この取り組みは、アジア太平洋地域における核医学人材を強化し、増加するがん診療需要に対応することを目的としている。
同じく2023年3月には、日本の核医学スタートアップAdvanced Medical Science-Planning(AMS)が京都大学との共同研究を発表している。この研究では、ソマトスタチン受容体を標的とする放射性医薬品Gallium-68 DOTATOC(68Ga-DOTATOC)の日本市場への導入を目指している。こうした大学・企業連携は、新しいトレーサーの国内導入や臨床応用を加速させる要因となっている。
一方、市場成長を阻害する主な要因は、放射性医薬品や核医学検査・治療の高コストである。PETやSPECTなどの大型画像装置に加え、放射性医薬品の製造・調達、専用施設の運営、人員配置、安全管理などにも大きな費用がかかる。検査や治療の複雑性によって費用は数百ドルから数千ドル規模まで大きく変動し、高額な医療費が患者の利用を妨げる可能性がある。
本文では、診断画像、放射線医学、核医学関連機器の平均価格として5万8,657米ドルという数字も示されている。これは個別のPETやSPECT装置価格そのものを示すとは限らないが、核医学関連設備の導入に相応の資本支出が必要であることを示す一つの目安となっている。
高い費用は、特に所得が低い患者や医療資源の少ない地域におけるアクセス格差につながる可能性がある。保険で十分にカバーされない費用や自己負担が発生すれば、必要な検査や治療を断念する患者が出ることも考えられる。日本は国民皆保険制度を持つものの、高額な設備や放射性医薬品の費用は医療提供側にとっても負担となるため、費用対効果の評価が重要になる。
また、核医学はMRIやCTなど他の画像診断技術とも競合する。MRIやCTも高価ではあるが、施設によっては核医学検査より導入・運用が容易と認識される場合がある。さらに、放射線を使用しない画像診断の方が安全だというイメージを持つ患者もいるため、価格と放射線被ばくへの心理的懸念が核医学検査の利用を抑える可能性がある。
市場は、製品タイプ、手技件数、用途、エンドユーザー別に分類されている。製品タイプでは診断分野と治療分野に分けられ、診断分野が市場の主要部分を占め、今後も重要なシェアを維持すると予測されている。手技件数では診断手技と治療手技に分けられ、用途として循環器、腫瘍、神経、甲状腺疾患、内分泌腫瘍、リンパ腫・骨転移、肺スキャン、泌尿器などが含まれる。エンドユーザーは病院、診断センター、その他に分類される。
診断分野では、PETとSPECTが中心的な役割を担っている。これらは腫瘍の検出、進行度評価、転移の把握、治療計画策定などに利用される。特にがん診断では、単に解剖学的な形状を確認するだけでなく、腫瘍細胞の代謝活性や特定受容体の発現状況を画像化できることが核医学の強みである。
具体的な例として、F-18 PSMA-1007 PETが挙げられている。これは前立腺がんの再発や転移を高精度で検出するために開発された画像診断用トレーサーであり、CTや骨シンチグラフィなど従来の方法と比べて高い検出能力を示しているとされる。前立腺がん細胞に発現するPSMAを標的とすることで、より微小な病変の発見や再発評価に役立つ可能性がある。
また、St. Luke's MediLocusのような医療機関では、PET-CTを用いたがんの早期発見スクリーニングが提供されている。PETとCTを一体化することで、PETによる代謝・機能情報とCTによる詳細な解剖学的位置情報を同時に取得でき、腫瘍の位置や広がりをより正確に把握できる。早期診断は治療選択肢を増やし、治療成績を改善する可能性があるため、PET-CTの重要性は高い。
新しい放射性医薬品の開発も診断分野を拡大している。新規PET・SPECTトレーサーの研究によって、腫瘍の代謝、特定受容体の活性、脳機能など、従来より詳細な生体情報を可視化できるようになりつつある。これにより、核医学の用途は単なるがん発見だけでなく、個別化医療や神経疾患、内分泌疾患などへ広がる可能性がある。
企業間連携も診断・治療双方の進歩を促している。2024年10月にはCuriumがPeptiDreamの完全子会社PDRadiopharmaと戦略的提携を発表し、日本国内における177Lu-PSMA-I&Tと64Cu-PSMA-I&Tの臨床開発、承認申請、商業化に取り組むこととなった。
これら2つの薬剤はいずれも前立腺がん細胞に発現するPSMAを標的としており、177Lu-PSMA-I&Tは主に治療、64Cu-PSMA-I&Tは診断への応用が期待される。このように、同じ分子標的を診断と治療の双方で活用する「セラノスティクス」の考え方が、日本の核医学市場でも重要になっている。診断によって標的の存在を確認し、その同じ標的に治療用放射性核種を届けることで、患者ごとに治療適応を判断しやすくなる。
競争環境では、GE Healthcare、FUJIFILM Toyama Chemical、Siemens Healthineers、Bracco、Canon Medical Systems、Nihon Medi-Physics、ATOX、IBA Radiopharma Solutions、JFE Engineering、Philipsなどが主要企業として挙げられている。画像診断装置メーカー、放射性医薬品メーカー、設備エンジニアリング企業など、多様な企業が市場を構成している。
この市場では、画像装置単体の性能だけでなく、放射性医薬品の開発・供給能力も非常に重要である。PETやSPECTは適切なトレーサーがなければ診断価値を発揮できず、一部の放射性核種は半減期が短いため、製造拠点から医療施設まで迅速かつ安定的に供給する体制が必要になる。そのため、装置メーカー、製薬企業、大学、原子力関連施設、物流事業者などの連携が市場競争力に直結する。
最近の動向として、2024年11月にはChiyoda Technol Corporationの研究者Akio Ohtaが、同社がインドネシアのNational Research and Innovation Agency(BRIN)とモリブデン99(Mo-99)およびテクネチウム99m(Tc-99m)の抽出技術を共同開発していることを明らかにした。この連携はJapan Atomic Energy Agency(JAEA)を介して実施されている。
Mo-99とTc-99mは核医学診断にとって非常に重要な放射性同位体であり、その生産・供給技術を強化することは、核医学検査の安定供給に直結する。放射性医薬品市場では、製品そのものの性能だけでなく、原料となる核種の安定確保が極めて重要であり、国際協力による供給網の強化は日本市場にとって戦略的な意味を持つ。
市場全体としては、診断中心の既存市場から、診断と治療を一体化したセラノスティクス市場へと発展する可能性が高い。従来の核医学はPETやSPECTによる画像診断のイメージが強かったが、今後は特定の分子標的に対する診断用トレーサーと治療用放射性医薬品を組み合わせることで、患者ごとに治療適応を判断し、そのまま標的治療へつなげる個別化医療が拡大すると考えられる。
特にがん領域では、PSMAをはじめとする腫瘍特異的標的を利用した放射性医薬品の開発が重要になる。どの患者の腫瘍が対象分子を発現しているかをPETなどで確認し、その患者にだけ標的放射線治療を行うことで、治療効率を高めながら不必要な治療を減らすことができる。このため、核医学は「画像診断市場」だけではなく、「精密医療・個別化がん治療市場」の一部として成長する可能性が高い。
一方で、核医学特有の供給課題もある。放射性医薬品には半減期が短いものが多く、長期在庫を持ちにくいため、製造、品質管理、輸送、投与までを厳密な時間管理のもとで行う必要がある。市場が拡大するほど、サイクロトロンや核種製造設備、製剤拠点、物流網、放射線管理人材などへの投資も必要になる。
また、核医学を扱える専門人材の育成も重要である。核医学医、放射線技師、薬剤師、放射線安全管理者など、複数の専門職種が必要であり、新しい放射性医薬品や高度なPET・SPECT装置が導入されても、それを安全かつ適切に運用できる人材が不足すれば普及は進みにくい。IAEAと日本の大学・研究機関との人材育成連携は、この課題への対応策としても重要である。
総じて、日本の核医学市場は、がん・心血管疾患の増加、高齢化、PET・SPECTの高度化、新規放射性医薬品、標的放射線治療、産学連携を背景に、非常に高い成長率が期待される市場である。2023年の5億5,030万米ドルから2031年には25億4,320万米ドルへ拡大する予測は、従来型の画像診断だけでなく、治療用途を含む核医学の役割そのものが拡大していることを示している。
今後の競争では、PET・SPECT装置の画像性能だけでなく、新規トレーサーや治療用放射性医薬品の研究開発、PSMAなどの分子標的を利用したセラノスティクス、放射性核種の安定供給、臨床・規制対応、人材育成までを一体として構築できる企業や組織が有利になると考えられる。一方、高額な装置・薬剤費、専門施設の整備費、患者アクセスの格差、MRI・CTとの競争といった課題も残る。そのため、日本市場では今後、「高精度な診断・治療効果」と「医療経済性」「供給安定性」をどこまで両立できるかが、核医学市場の成長速度を左右する重要なポイントになる。
※目次構成
- 調査方法および調査範囲
調査方法
調査目的およびレポートの対象範囲 - 定義および概要
- エグゼクティブサマリー
製品タイプ別市場概要
手技件数評価別市場概要
用途別市場概要
エンドユーザー別市場概要 - 市場動向
市場への影響要因
成長要因
がんおよび心疾患の有病率上昇
XX
阻害要因
放射性医薬品の高コスト
市場機会
影響分析 - 業界分析
ポーターの5フォース分析
サプライチェーン分析
価格分析
特許分析
規制分析
SWOT分析
アンメットニーズ - 製品タイプ別
はじめに
製品タイプ別市場分析および前年比成長率分析(%)
製品タイプ別市場魅力度指数
一般・診断用機器*
はじめに
市場規模分析および前年比成長率分析(%)
診断用
単一光子放射断層撮影(SPECT)
テクネチウム99m(Tc-99m)
タリウム201(Tl-201)
ガリウム67(Ga-67)
ヨウ素123(I-123)
その他
陽電子放射断層撮影(PET)
フッ素18(F-18)
ルビジウム82(Rb-82)
その他
治療用
アルファ線放出核種
ラジウム223(Ra-223)
その他
ベータ線放出核種
ヨウ素131(I-131)
イットリウム90(Y-90)
ルテチウム177(Lu-177)
その他
小線源治療用核種
セシウム131(Cs-131)
ヨウ素125(I-125)
パラジウム103(Pd-103)
イリジウム192(Ir-192)
その他 - 手技件数評価別
はじめに
手技件数評価別市場規模分析および前年比成長率分析(%)
手技件数評価別市場魅力度指数
診断手技*
はじめに
市場規模分析および前年比成長率分析(%)
SPECT検査
PET検査
治療手技 - 用途別
はじめに
用途別市場規模分析および前年比成長率分析(%)
用途別市場魅力度指数
循環器領域*
はじめに
市場規模分析および前年比成長率分析(%)
腫瘍領域
神経領域
甲状腺疾患
内分泌腫瘍
リンパ腫および骨転移
肺スキャン
泌尿器領域
その他 - エンドユーザー別
はじめに
エンドユーザー別市場規模分析および前年比成長率分析(%)
エンドユーザー別市場魅力度指数
病院*
はじめに
市場規模分析および前年比成長率分析(%)
診断センター
その他 - 競争環境
競争状況
市場ポジショニング/市場シェア分析
M&A(合併・買収)分析 - 企業プロファイル
11.1 GE HealthCare*
企業概要
製品ポートフォリオおよび製品概要
財務概要
主な動向
11.2 その他の主要企業
FUJIFILM(FUJIFILM Toyama Chemical Co., Ltd.)
Siemens Healthineers
Bracco
Canon Medical Systems Corporation(キヤノンメディカルシステムズ株式会社)
Nihon Medi-Physics Co., Ltd.(日本メジフィジックス株式会社)
ATOX CO., Ltd.(株式会社アトックス)
IBA Radiopharma Solutions
JFE Engineering Corporation(JFEエンジニアリング株式会社)
Koninklijke Philips N.V.
※企業一覧は網羅的なものではありません。
- 付録
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