東京の価格調整は神奈川にも波及するのか? 横浜駅・川崎駅・武蔵小杉駅を比較すると「川崎駅」が強かった

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    2026年10月10日 10:00

    【調査概要】

    対象期間: 2023年1月期〜2026年8期
    実施主体: マンションリサーチ株式会社
    分析範囲:「横浜駅」「川崎駅」「武蔵小杉駅」周辺マンション販売事例より抽出
    データ数: 6,932件
    集計手法: 市場に流通している既存住宅の売り出しデータを系統的に取得・解析し、統計的調整を経て算出

    東京都の都市部においては、タワーマンションや高額な大型マンションが、実需だけではなく国内外の投資・投機対象となったことで価格が大きく上昇してきました。
    特に都心部では、マンションそのものの居住価値だけではなく、「将来的にさらに価格が上昇するのではないか」という期待によって購入されるケースも増え、市場価格が実需層の購入可能価格から乖離していった側面があります。
    しかし、価格が上昇し続ければ、当然ながら購入できる層は限定されていきます。さらに、金利上昇によって住宅ローンの借入可能額や返済負担にも変化が生じるため、高額マンションほど購入者層が狭くなりやすいという特徴があります。

    その結果として、東京都心では、価格そのものがすぐに大きく下落するというよりも、まず「売れにくくなる」という形で市場の変化が表面化しています。
    そこで今回は、東京都23区の状況をそのまま首都圏全体に当てはめるのではなく、首都圏で東京都に次ぐ人口を有する神奈川県の都市部に目を向けてみました。
    対象としたのは、横浜駅周辺、川崎駅周辺、武蔵小杉駅周辺の3エリアです。
    これらはいずれも神奈川県を代表する都市型住宅エリアですが、駅ごとに住宅需要や価格水準、購入者層が異なります。そのため、同じ神奈川県内であっても、市場の動きには違いが出てくる可能性があります。

    武蔵小杉では「価格」より先に「流動性」に変化

    まず、武蔵小杉駅周辺の中古マンション市場を見てみます。
    以下のグラフでは、平均の「販売日数」「値下げ率」「成約価格」の推移を確認しています。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    ここで注目したいのは、成約価格が大きく下落していない一方で、販売日数と値下げ率には明確な変化が表れていることです。
    2026年4月から6月にかけて、販売日数と値下げ率が大きく上昇し、その後も2026年9月現在まで比較的高い水準が続いています。
    この動きは、単純に「マンション価格が下落した」と考えるよりも、これまでと同じ価格では売却に時間がかかるようになり、成約するために価格を調整する物件が増えていると考えた方が、市場の変化を捉えやすいでしょう。
    つまり、武蔵小杉では、価格が大きく下落するよりも先に、マンションの「売れやすさ」、つまり流動性に変化が表れている可能性があります。
    中古マンション市場では、成約価格だけを見ていると、この変化を見落としてしまうことがあります。
    例えば、成約価格が前年とほとんど変わっていなかったとしても、売却までの期間が長くなり、値下げをしなければ売れにくくなっているのであれば、売主から見た市場環境は確実に変化しています。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    一方、在庫については増加傾向が見られるものの、東京都心の一部エリアで見られるような急激な増加には至っていません。
    ここも重要なポイントです。
    在庫が急激に増えていないということは、単純に売り物件が大量に市場へ流れ込んでいるというよりも、一定の価格帯では売却までの時間が長くなり、売れ残った物件が少しずつ在庫として積み上がっていると考えることができます。
    これは、東京都23区の一部で見られている市場変化とも共通しています。

    価格が高止まりしている一方で、販売日数や値下げ率が上昇しているということは、売主が希望する価格と、買主が実際に購入できるm価格との間に、徐々にギャップが生じている可能性があります。
    価格が下がってから市場の変化を捉えるのではなく、「売れにくくなっている」という先行指標を見ることが、今後の中古マンション市場を分析するうえで重要になるということです。

    横浜駅周辺にも同様の兆候

    次に、横浜駅周辺を見てみます。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    横浜駅は神奈川県を代表するターミナル駅であり、住宅需要だけでなく、商業・業務・交通の拠点としても非常に強いエリアです。
    こうした横浜駅周辺でも、武蔵小杉ほど明確ではないものの、市場の流動性に変化が表れています。
    2026年4月から6月にかけて、販売日数と値下げ率が大きく上昇し、2026年9月現在も比較的高い水準が続いています。
    一方で、成約価格は大きく崩れておらず、高い水準を維持しています。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    在庫については直近でやや増加しているものの、現時点では相対的に低い水準です。
    つまり横浜駅周辺では、現段階で在庫が急激に積み上がっているというよりも、販売日数や値下げ率が先に動き始めていると見ることができます。
    ただし、武蔵小杉と横浜駅では、在庫の動きに違いがあります。
    武蔵小杉では在庫が増加傾向にある一方、横浜駅周辺では在庫水準が比較的低く抑えられています。
    このことから、横浜駅周辺では、売主の希望価格と買主の購入可能価格とのギャップが徐々に価格調整によって埋められ、需給を緩やかに均衡させる動きが進んでいる可能性があります。
    したがって、横浜駅周辺についても、現時点の成約価格だけを見ると市場は堅調に見えますが、販売日数や値下げ率を見ると、買主側の購入可能価格に対して、売主側の希望価格が少しずつ調整を迫られている状況が見えてきます。

    今後、この動きがさらに進めば、販売日数や値下げ率の上昇が在庫の増加につながるのか、それとも価格調整によって需給が再び均衡するのかが、重要なポイントになります。
    このように見ると、マンション市場の変化は、まず「価格」に現れるとは限りません。
    販売日数や値下げ率といった流動性の指標が先に変化し、その後に在庫や成約価格へ影響が及ぶ可能性があります。

    川崎駅周辺は異なる動き

    一方で、川崎駅周辺を見ると、武蔵小杉や横浜駅周辺とは異なる動きが確認できます。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    川崎駅周辺では、「販売日数」「値下げ率」のいずれも比較的低い水準で推移しています。
    成約価格については一定のばらつきがあるものの、全体としては微増傾向が見られます。

    出典:福嶋総研
    出典:福嶋総研

    また、在庫についても直近ではやや増加しているものの、相対的には低い水準で推移しています。
    このようなデータを見る限り、川崎駅周辺では、現時点において需要が比較的顕在化しているマーケットであると考えられます。
    もちろん、これだけをもって今後も価格が上昇すると断定することはできません。
    金利や住宅ローン環境、所得、供給量などの変化によって市場環境は変わるためです。
    ただ、少なくとも現時点のデータからは、「価格が高いから売れない」という状況が、武蔵小杉や横浜駅周辺ほど明確には表れていないという違いを見ることができます。

    「東京都心が下がるから神奈川も下がる」とは限らない

    昨今、東京都心のマンション価格が急激に上昇してきたことや、住宅ローン金利の上昇などを背景として、「今後、不動産価格は大きく下落するのではないか」という論調が増えています。
    しかし、不動産市場を分析する際に注意しなければならないのは、東京都心の一部エリアで起きていることを、そのまま首都圏全体の現象として捉えることはできないということです。
    同じ首都圏でも、エリアによって価格水準、所得水準、住宅需要、交通利便性、購入者層、投資需要、新築供給量などは異なります。
    そのため、金利上昇や価格高騰という共通の外部環境があったとしても、それが各エリアの中古マンション市場に与える影響には違いが生じます。

    今回見た武蔵小杉、横浜駅、川崎駅の3エリアでも、その違いは明確です。
    武蔵小杉では販売日数と値下げ率の上昇が目立つ一方、横浜駅周辺でも類似した兆候が見られます。一方、川崎駅周辺では販売日数や値下げ率が比較的低く、価格も大きく崩れていません。
    この違いを考えるうえで重要なのが、「価格」だけではなく「流動性」を見ることです。
    マンション市場の変化は、必ずしも最初から価格下落として現れるわけではありません。
    まず売れ行きが悪化し、販売期間が長くなり、値下げを行う物件が増え、その後に成約価格へ影響が及ぶという順序で変化する可能性があります。

    したがって、今後の首都圏マンション市場を分析する際には、成約価格だけを見るのではなく、販売日数、値下げ率、在庫、成約件数など、複数のパラメーターを組み合わせて確認する必要があります。
    東京都心で見られる価格調整が、神奈川県の都市部でも同じ速度、同じ規模で進むとは限りません。
    むしろ重要なのは、「価格が下がるのか、下がらないのか」という二択ではなく、各エリアで需要と供給のバランスがどのように変化し、その変化が流動性にどのように表れているのかを確認することです。
    今後のマンション市場を見るうえでは、地域ごとの違いを細かく捉えながら、価格だけでは見えない「売れやすさ」の変化を追っていくことが、これまで以上に重要になってくると考えられます。

    筆者プロフィール

    福嶋 真司(ふくしましんじ)

    マンションリサーチ株式会社
    データ事業開発室 
    不動産データ分析責任者

    福嶋総研
    代表研究員

    福嶋総研代表研究員。早稲田大学理工学部卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
    建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。

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    会社名: マンションリサーチ株式会社
    代表取締役社長: 山田力
    所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
    設立年月日: 2011年4月
    資本金 : 1億円

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