【名城大学】文武両道! TOEIC965点の異色ランナー

    ー FEATURE PEOPLE ー

    サービス
    2026年2月9日 18:00

    日・米・北欧、自身のアイデンティティと向き合う哲学者

    外国語学部 国際英語学科3年 石黒碧海(いしぐろあおみ)さん

    日本、アメリカ、スウェーデンの3つの国の文化を背景に持つ石黒さん。
    強豪名城大学駅伝部に所属しながらも、思うように走れない。自分自身のアイデンティティは何かと模索する日々。
    そんな中、人生観が大きく変わるきっかけとなった様々な出会いがありました。
    アスリートとして、学生として、また一人の女性として、抱えていた複雑な心の内と、この先の人生について語ってくれました。

    日本有数の駅伝部に所属しているのですよね?どんなきっかけだったのですか?

    陸上を始めたのは、母が中学時代に陸上をやっていたと聞いて興味を持ったからです。当初は短距離選手だったのですが、体育の授業で行われた「12分間走」でタイムが良かったため、先生に勧められて800メートルに種目を変更、そこから長距離に転向しました。中学3年生の時には全国標準記録を突破し、ジュニアオリンピックにも出場しました。高校は、全国でも駅伝のトップクラスである大阪薫英女学院に進学し、2年時には全国高校駅伝の3区で出場、準優勝に貢献することができました。この時の監督が、名城大学の米田監督と知り合いで、「文武両道なら名城大学」と勧めてくださったことと、高校の多くの先輩たちが名城大学で活躍されていたことから、名城大学への進学を決めました。

    大学ではどのような競技成績だったのでしょう?

    残念ながら、名城大学入学後はまだ一度も公式試合に出場できていません。
    実は中学3年生の時に脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)という背骨の病気にかかってしまい全身に痛みが出ていました。高校時代は疲労骨折もしてしまったことで満足な練習ができませんでした。なんとか高校2年生で全国高校駅伝に代表として出場できたことは今でも奇跡だと思っています。それからは身体との付き合い方を学びながら自分なりのペースで競技を続けてきました。
    大学ではなんとか走れるようにと努力したのですが、なかなか体調は戻らず競技に戻れていません。仲間たちとは同じように練習はできないのですが、少しでも追いつけるように自分なりに小さな目標を立てて、今までできなかったことを少しずつでもできるようにしたいと考えるようになりました。強豪チームの中で結果を出せない辛さやもどかしさは、常に心に付きまとっていますが、その葛藤が今の自分自身の内面を見つめることにつながっているように思います。

    それでもまだ走ることを止めないのですね

    そもそも原始的にただひたすら走るということが好きなんだと思います。小さなころ近所の公園で走り回っていたのをよく覚えています。走っている時何を考えているの?とよく聞かれますが、頭を空っぽにして無心で走っています。
    また「駅伝」という競技は、チームのために頑張ろうと思うと想像以上に力が湧いてくるところがとても素敵だと思います。名城大学は大学駅伝二冠という偉業を7年連続重ねたこともある強豪校ですが、だからこそ付きまとう身体的、精神的な負担があります。チームのメンバーがそれをいかに克服していくかといった面を、私もチームの一員として間近で体験させていただいていることはとても感謝しています。

    石黒さんは外国にルーツがあるとか?

    そうですね。父がスウェーデン人の画家で、母は日本人で芸術関係の仕事をしていました。幼い頃から、大半はニューヨークで過ごしながら、夏休みはスウェーデン、冬休みは日本の祖父母の家という生活を続けてきました。それぞれの国のことを知ってほしい、という両親の思いからです。
    11歳の時に「日本のことをもっと知りたい」と思い、母の母校である大阪の小学校に転入しました。当初は卒業後にアメリカへ行く予定でしたが、日本の学校生活や友人との生活がとても楽しく、そのまま日本で中学・高校と過ごすことに決めました。

    英語能力テストのTOEICでは満点近い点数だそうですね

    はい、965点を取ることができました。幼い頃から英語、日本語、スウェーデン語の3言語の環境で育ったことが活きているのだと思います。
    3年次には学部奨励賞もいただきましたましたが、語学だけでなく様々な経験を通じて多様な知識を得られたことが評価いただけたのではないでしょうか。そういう意味で私は駅伝部の仲間から多くの刺激を受けていると思います。例えば農学部に同級生がいるのですが、彼女は研究とレポートに追われながらも、しっかりと大会に出場して結果を残しています。まさに文武両道を体現していて、彼女はじめ、文武を両立させながら活躍しているチームの皆を尊敬しています。

    外国語学部の授業はどうですか?

    外国語学部の2年次に履修した「異文化コミュニケーション」の授業が私の人生を大きく変えました。それまで複数の文化背景を持つことで感じていた違和感、「本当の自分とは何なのか」というどこかモヤモヤしていたことを、先生が学術的に言語化してくださったのです。
    特に印象的だったのは、「本当の自分というものは存在しない」という考え方でした。家族といる時の自分、学校にいる時の自分、部活での自分、それぞれの集団の中で、無意識のうちに自分を適応させている。それは自然なことで、「違っていてもいいんだ」と思えたことが、今の自分にはとても救いになりました。

    現在はどのようなテーマで研究を進めていますか?

    コミュニケーション学を専攻し、「女性アスリートのアイデンティティ形成と摂食障害」について研究しています。女性アスリートとして、一人の女性として、また家族の一員としてなど、様々な立場やアイデンティティが、競技や自分自身にどのように影響しているのか。そしてそれが摂食に関する問題とどのように関係しているのかを探求しています。私自身も競技生活を続ける中で、食生活に悩んだ経験があり、この研究を通して、自分自身について知る機会にもなっています。

    名城大学を選んで良かったと思うことは何ですか?

    大学ではさまざまな先生方との出会いです。
    ゼミの先生だけでなく、同じニューヨーク出身の先生とは写真や芸術に関して話す機会をいただいています。外国語学部は比較的少人数なので、先生方と深く関われるのはとても魅力です。
    この3年間は、とにかくいろいろなことについて「考え、知り、悩む」ことを繰り返し、様々な角度から人生について考える機会にも、人脈を広げる機会にも恵まれました。これが名城大学での最大の財産だと思っています。

    卒業後の目標を聞かせてください。

    大学院への進学を考えています。まだ専攻は決めかねていますが、コミュニケーション学の研究を続けようと思っています。これから書く卒業論文の結果次第ですが、もう少し深く研究してみたいという思いが強いので。競技としての陸上は、一区切りつけるつもりです。ただ「走ること」自体は大好きなので、自分のペースで走り続けることは変わらないと思います。
    これまで、様々な国の文化や環境、そして競技を通じて「自分とは何か」「他者とどう関わるか」について考え続けてきました。これからもこの模索は続けていきたいと思っています。この研究を通じて、私と同じように複数の文化背景をもつ人や、アスリートとしてのアイデンティティに悩む人たちの助けになれたら嬉しいですし、自分の経験を活かして、多様な背景をもつ人たちが生きやすい社会づくりに貢献できればと考えています。

    外国語学部 国際英語学科3年 石黒碧海(いしぐろあおみ)さん

    母親の希望で、日本国籍取得のために沖縄で出生。その後すぐに両親が生活するアメリカに戻り、11歳で日本の小学校へ転入。高校まで大阪で過ごし、名城大学へ駅伝部の推薦で入学。母親がやりたいことを何でもやらせてくれた環境で育ち、好奇心や探究心が旺盛。読書が大好きで、小説をはじめ、身体の動かし方から句集まで、様々なジャンルの本を読む。日本で長く生活してきたので、今度は父親の母国・スウェーデンでも生活してみたいと思っている。

    すべての画像