「会社に言う」「家族にばらす」「SNSに晒す」――お金を払わないと暴露すると脅されたら?交際・不倫・パパ活の"暴露脅迫"に弁護士が解説

「別れるなら、これまでのことをSNSに全部載せる」
「お金を払わないなら、会社や家族に不倫していたことを話す」
「パパ活のやり取りや写真を公開されたくなければ、○万円払え」
「性的な画像を持っている。言うことを聞かないならネットにばらす」
交際・不倫・パパ活・マッチングアプリなどをきっかけとした男女トラブルでは、このように知られたくない情報を公開する"ことを材料に、金銭の支払いや関係の継続などを求められるケースがあります。
「自分にも知られたくない事情があるから、警察や弁護士には相談しにくい」
「お金を払えば終わるなら、払ってしまった方がいいのではないか」
「相手を刺激して、本当にSNSに投稿されたらどうしよう」
そう考えて、相手の要求にそのまま応じてしまう人も少なくありません。
しかし、自分自身に落ち度があることと、相手がどのような方法で要求しているかは、別に考える必要があります。
たとえば、「SNSでばらす」という発言があったとしても、その一言だけで直ちに脅迫罪が成立するとは限りません。一方で、暴露を材料に金銭を要求したり、義務のない行為を強制したりするなど、具体的な事情によっては、脅迫罪・恐喝罪・強要罪などが問題となる可能性があります。
さらに、実際に交際関係や個人情報をSNSなどで公開された場合には、名誉毀損やプライバシー侵害などの問題が生じることがあります。性的な画像・動画については、いわゆるリベンジポルノ防止法による規制の対象となる場合もあります。警察庁も、性的画像をネット上に公開すると脅された場合には、まだ公開されていない段階でも警察等への相談を促し、相手からのメッセージや着信履歴などを保存するよう案内しています。
本記事では、「家族や会社にばらす」「SNSに晒す」と言われたとき、どこからが法的な問題になり得るのか、相手から金銭を要求された場合にどう考えるべきなのか、そして慌ててお金を払ったり、証拠を消したりする前に何をすべきなのかを、弁護士が解説します。
「自分にも非があるから、相手の要求に従うしかない」と考える必要はありません。
一方で、相手の請求がすべて不当とは限らないため、自分が負うべき責任と、相手による脅迫・恐喝・強要などの問題を切り分けて考えることが重要です。
「家族や会社に言う」と「SNSに上げる」は、同じ脅しでも性質が違う
「ばらす」と言われたとき、伝える先が家族や勤務先なのか、SNSなのかで、その後に起きることは変わります。
家族や勤務先に伝えられる場合、伝わる相手は相手が選んだ特定の人に限られます。事後に自分から説明する余地も残ります。これに対してSNSへの投稿は、どこまで広がるかを相手自身も決められません。転載や保存によって、後から削除しても元どおりにはなりにくいという性質があります。
一方で、SNSへの投稿には、家族や勤務先に伝えられた場合にはない手当てもあります。投稿されてしまった後であれば、プラットフォーム事業者への削除の申出や、投稿者を特定するための発信者情報の開示という制度上の手続を検討できます。これらは、2025年4月1日に施行された情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)を根拠とするものです。
つまり、SNSでの暴露予告は「広がり方を制御しにくい」という点で厳しい一方、「投稿という形が残るため、後から手を打つ足がかりがある」という側面も持っています。この両面を踏まえて、投稿される前の段階でできることと、投稿された後にできることを分けて考えることが出発点になります。
「ばらす」と言われた段階で問題になり得る犯罪
告げること自体は脅迫罪の問題になり得る
脅迫罪は、相手やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて人を脅迫した場合に成立します(刑法222条/2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。2025年6月1日の法改正により、懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されています)。
「SNSで全部ばらす」という発言は、名誉に対する害を加える告知にあたり得ます。ただし、この言葉が出れば直ちに脅迫罪になるというものではありません。前後のやり取り、どのような要求と結びついているか、告げ方や繰り返しの有無などから、人を怖がらせるに足りる内容といえるかどうかが判断されます。
金銭の要求と結びつけば恐喝罪の問題になる
暴露をちらつかせて金銭を要求し、実際に支払わせた場合には、恐喝罪が問題になります(刑法249条/10年以下の拘禁刑)。支払いに至らなくても、恐喝未遂罪が成立し得ます(同250条)。
男女トラブルでは、「口止め料」「迷惑料」「慰謝料」「返金」と名目が入れ替わることがありますが、名目そのものよりも、暴露を材料にして支払わせようとしている構造かどうかが問題になります。
注意が必要なのは、正当な請求との区別です。不貞行為によって被害を受けた配偶者が慰謝料を請求すること自体は、正当な権利の行使です。もっとも、権利があることと、その通し方が適法であることは別の問題として評価されます。
義務のないことを迫れば強要罪の問題になる
暴露をちらつかせて、法的な義務のない行為を迫ったり、正当な権利の行使を妨げたりする場合は、強要罪が問題になります(刑法223条/3年以下の拘禁刑)。婚約や内縁にあたらない交際は、本来いつでも解消できます。「別れるならSNSに上げる」と言って関係の継続を迫る行為や、退職・謝罪文の作成を強いる行為が、これにあたり得ます。
実際に投稿された場合
投稿が実行された場合には、別の枠組みが加わります。公然と事実を摘示して社会的評価を下げれば名誉毀損罪(刑法230条1項)の問題になり、この規定では事実であったかどうかを問わないとされています。私生活上の事柄や個人情報の公開は、プライバシーの侵害として損害賠償の対象になり得ます(民法709条・710条)。性的な画像や動画については、いわゆるリベンジポルノ防止法が別に処罰の規定を置いています。
交際・不倫・パパ活それぞれで注意したい点
元交際相手から言われた場合は、交際していた事実そのものを公開すると告げられるケースのほか、交際中に撮影した画像を持ち出されるケースがあります。画像が絡む場合は、相手の手元にデータが残っている段階での対応が中心になります。
不倫関係で言われた場合は、自分が負っている責任の相手が誰なのかを整理する必要があります。不倫の当事者同士は、関係の解消をめぐって当然に慰謝料を請求し合える関係にはありません。他方で、相手の配偶者に対する責任は別に残ることがあります。「正当な清算に応じるべき部分」と「暴露を材料にした上乗せの要求」を切り分けて考えることになります。
パパ活で言われた場合は、渡した金銭の返還要求と結びつく形で圧力がかかることがあります。また、やり取りの経緯によっては、相手が勤務先や学校、家族構成といった情報を知っているケースもあり、その場合は暴露の予告がより具体的な形を取ることがあります。相手の年齢に関わる事情がある場合など、自分の側にも刑事上の問題が生じ得る事案もあります。この場合、暴露への対処と自分の立場の整理を同時に進める必要があるため、早い段階で専門家に事情を伝えておくことが特に重要になります。
やってはいけない対応
1. その場で支払う、口止め料を渡す
恐怖から支払ってしまうと、要求が一度で終わらないことが少なくありません。支払った事実が、相手にとっては「応じる人だ」という判断材料にもなります。まず「今この場では決められない」と伝えて持ち帰ってください。
2. 内容を確かめないまま書面に署名する
その場で示された念書や誓約書に署名すると、支払義務や条件を自分で作り出してしまうことがあります。署名を急かされること自体が、慎重に検討すべきサインです。
3. やり取りを消す、アカウントを削除する
「見たくない」という気持ちから消してしまうと、暴露を材料に何を要求されたのかを示す資料が失われます。ブロックやアカウント削除の判断も、記録を保存してからにしてください。
4. 「それは脅迫罪だ」と面と向かって言い返す
相手を追い詰める形になり、実際の投稿を早めてしまうことがあります。罪名の指摘は、代理人を通じて行うほうが安全です。
5. 脅し返す、先回りしてSNSに書く
「こちらも警察に行く」「そちらのことも書く」といった対応は、自分の側が脅迫や名誉毀損を問われる立場に回るおそれがあります。被害を受けている側であっても、手段を誤ると評価が変わります。
6. 相手の家族や勤務先に連絡する
相手を止めるつもりの連絡が、関係のない範囲まで事態を広げ、相手の行動をかえって激しくすることがあります。
7. 共通の知人に間に入ってもらう
事情を知る人が増えるほど、情報が漏れる経路も増えます。善意の第三者が交渉に加わることで、内容が正確に伝わらなくなることもあります。
8. 何の記録も残さないまま放置する
無視すること自体が誤りとは限りませんが、記録を残さないまま時間が経つと、後から相手の要求内容を示すことが難しくなります。少なくとも、やり取りの保存と日時のメモは残してください。
負い目があると感じている場合の考え方
自分にも落ち度があると感じていると、相談すること自体をためらってしまいます。しかし、交際や不倫、パパ活の場面で自分の側に問題があったことと、相手が暴露を材料に不当な要求をしていることは、法律上は別々に評価されます。負い目があることは、要求に無条件で応じなければならない理由にはなりません。
同時に、正当な請求まで拒めるわけではありません。応じるべき部分があるならその範囲で清算し、それを超える要求は根拠を示して断る。この線引きを自分一人で行うのは難しいため、専門家の判断を挟むことに意味があります。
相談する前に整理しておきたいこと
相手とのやり取り(メッセージ、通話の録音、日時のメモ)を削除せずに保存する
相手が把握している自分の情報(勤務先、家族、住所、画像の有無)を書き出す
要求の内容(金額、期限、金銭以外の条件)を時系列でまとめる
すでに支払った金銭や署名した書面があれば、その控えを用意する
身の危険を感じる場合は110番を、緊急でない相談は警察相談専用電話「#9110」を利用できます。
まとめ
「SNSで全部ばらす」という言葉は、それだけで直ちに犯罪が成立するわけではありませんが、要求の内容や告げ方によって、脅迫罪・恐喝罪・強要罪の問題になり得ます。実際に投稿された場合には、名誉毀損やプライバシー侵害として、削除や損害賠償を求める道もあります。
避けたいのは、その場をしのぐための支払いや署名、そして記録を消してしまうことです。自分の側の事情と相手の要求の当否を切り分け、記録を残したうえで、対応の窓口を一本化する。この順序を守ることが、被害を広げないための現実的な方法になります。

















