新収蔵のミニチュア約300点を中心に紹介 名人・小林礫斎を支えた二人の収集家に焦点をあてる たばこと塩の博物館で「新収蔵ミニチュア展」12月20日まで開催
たばこと塩の博物館では、2026年9月26日(土)から12月20日(日)まで、「新収蔵ミニチュア展 名人小林礫斎を支えた二人の中田」を開催します。
小林礫斎(1884-1959)は、木工や牙彫(げぼり)を得意とする職人で、たばこ盆などの指物(さしもの)や、和装の装身具であった袋物の部材作りを生業としていました。日本人の生活が変化し、和装から洋装へと移り変わっていく時代にあって、本来の仕事は減っていきましたが、礫斎は持っている技術をミニチュア制作に転用し、稀代の名人となります。彼の精巧な作品は、袋物商などを介して知られていき、多くの顧客を得ます。顧客のなかには、古美術商の中田藤之助と、茶人の家に生まれ切手収集でも名を馳せた中田實の二人の中田がいました。
箱根の富士屋ホテル近くで古美術商を営んでいた中田藤之助は、昭和の初めに閉店し、ミニチュアの収集に乗り出しました。その作品群は既存の骨董品と、礫斎ら一流の職人への新たな依頼品からなり、極小の茶道具や印籠、人形など逸品ばかりです。このたび、その一部のおよそ300点が当館の収蔵品に加わりました。
そして、もう一人の中田こと中田實も礫斎の良き理解者でした。礫斎に様々なミニチュア制作を依頼し「中田實コレクション」を築きました。当館ではこのコレクションをご寄贈いただき、これまで度々展覧会を開催してきました。
本展は4章で構成し、約300点のミニチュアと関連資料を一堂に展示します。当館に新たに加わった藤之助によるコレクションを中心に、實のコレクションとの関係も交えて紹介します。ミニチュアの持つ魅力とともに、収集にかけた「二人の中田」の熱意もお伝えします。

(Photo_01) 長板揃物 長板:4.64×9.84×0.27cm 屏風や柄杓、茶筅などは礫斎作。
*資料のサイズは、縦×横×高さ(厚み)の順で記載
■開催概要
名称 : 新収蔵ミニチュア展 名人小林礫斎を支えた二人の中田
ヨミ : シンシュウゾウミニチュアテン
メイジンコバヤシレキサイヲササエタフタリノナカダ
会期 : 2026年9月26日(土)~12月20日(日)
主催 : たばこと塩の博物館
会場 : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
所在地 : 東京都墨田区横川 1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩10分)
電話 : 03-3622-8801
FAX : 03-3622-8807
URL : https://www.tabashio.jp
入館料 : 大人・大学生:300円 / 小・中・高校生、満65歳以上の方:100円
開館時間 : 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 : 月曜日(ただし、10月12日、11月23日は開館)、10月13日(火)、
11月24日(火)
※やむをえず開館時間や休館日を変更する場合があります。
最新の開館情報は、公式Xかお電話でご確認ください。
【展覧会の構成と展示内容の紹介】
I.箱根の中田
中田藤之助は、兄の松五郎と、明治19年(1886)に箱根の富士屋ホテル前に古美術の店舗を構えました。中田兄弟商会と称して松五郎が代表を務めた同店は、古美術および陶磁器の名店として知られました。その後、藤之助が代表を継ぎましたが、昭和3年(1928)には閉店することとなり、所蔵品の売立を行いました。この時の売立目録には、仏像や甲冑、葵紋のある調度品などから印籠のような小型のものまで全960点が掲載され、扱っていた品の多彩さが伝わります。
この章では、中田兄弟商会の店舗写真や売立目録などを通して、中田藤之助の商いのようすを紹介します。売立目録に掲載され、現在は当館が収蔵しているたばこ盆なども展示します。

(Photo_02) 中田兄弟商会店舗外観

(Photo_03) 葵散し螺鈿蒔絵たばこ盆 16.9×31.5×25.6cm 売立目録には「一七一 紫檀葵蒔繪莨盆 銀牡丹彫煙管付」として載っている。昭和初期に大蔵省専売局により収集され、現在は当館の収蔵品となっている。
II.中松庵藤翁コレクション
中田藤之助は、昭和3年(1928)の古美術商引退後に、ミニチュアの「蒐集」と「作製」を思い立ったといい、コレクションの一部にある昭和8年や9年の表記が、職人たちに制作を依頼した時期を知る数少ない手がかりとなっています。藤之助の収集品「中松庵藤翁コレクション」は、小林礫斎を中心とする一流の職人たちへの依頼品や、藤之助が集めた小さな骨董品に、新たに専用の箱を誂えたものなどからなります。収集品の展観を考えていた藤之助ですが、叶うことなく昭和12年に他界したため、コレクションの全貌は昭和15年に跡継ぎの中田恭義がまとめた『中松庵藤翁蒐集竝鑑製 繊巧美術品目録』によって世に知られることとなりました。今回、新たに収蔵されたコレクションは、同目録に収められたものの一部です。
この章では、藤之助が収集した骨董品と、当時一流の職人たちに制作を依頼したミニチュアを紹介します。

(Photo_04) 『中松庵藤翁蒐集竝鑑製 繊巧美術品目録』 藤之助の跡継ぎである中田恭義が昭和15年(1940)に刊行した。作品目録と写真ページからなり、モノクロを中心に一部はカラーで掲載した豪華な一冊。関係職人の一覧も掲載されており、礫斎は象牙小細工師として載っている。

(Photo_01) 長板揃物 長板:4.64×9.84×0.27cm 屏風や柄杓、茶筅などは礫斎作。

(Photo_05) 掛花生 銘 空蝉 本体:φ1.03×2.25cm

(Photo_06) 植木棚 3.88×11.48×13.3cm 紀州徳川家伝来

(Photo_07) 唐木提箪笥 1.37×1.5×1.27cm 作:矩曲 金具:村上定吉

(Photo_08) 小倉山蒔絵硯箱 5.3×4.2×1.33cm 蒔絵:今泉成之 水滴:村上定吉 彫金:小林盛良

(Photo_09) 人形 後列右端の人形:5.7×5.74cm 藤之助のコレクションは三折れ人形などの骨董の人形も多い。

(Photo_10) 交り金阿古陀(あこだ)香炉 φ2.3×1.77cm 作:村上定吉 彫:小林盛良

(Photo_11) 印籠 左端の印籠:2.52×2.16cm 左端は森田藻己作。

(Photo_12) 机硯箱揃 机:1.72×3.61×1.28cm 硯箱:1.36×0.86×0.32cm 作:小林礫斎 蒔絵:今泉成之

(Photo_13) 切子揃 箱:17.8×34.7cm 紀州徳川家伝来
III.もう一人の中田 中田實とその周辺
礫斎の良き理解者であり、藤之助とともに主要な依頼主であった中田實(1877-1946)。彼の父は、裏千家の高名な茶人・二代中田宗閑で、藤之助とは血縁はないものの系図上では従兄弟にあたります。
實は小学生の頃から切手収集を趣味としており、その大家として知られていました。昭和初期からミニチュアを集めはじめ、次第に自作したり、礫斎ら一流の職人たちに制作を依頼したりするようになったといいます。藤之助と實は同時期に礫斎のミニチュアに熱中しますが、その収集方針は異なります。ミニチュアの収集にあたって、既存の骨董品でも依頼品でも、藤之助は工芸品に重きを置いたようで、一方の實は、「最小」を求めました。
平成2年(1990)、当館では中田實コレクションを借用して、「小林礫斎とその世界 ~mm単位の繊巧美術~」展を開催しました。その後、ご遺族のご厚意によりこのコレクションを寄贈いただき、展覧会を重ねてきました。
本章では、絵画や写真などの記録から、實の家族や職人たちとの交流、藤之助コレクションとの関係といった周辺事情を中心に紹介、合わせて中田實コレクションの一部を展示します。

(Photo_14) 山内容堂画 閑翁図 個人蔵 閑翁とは實の祖父で茶人の初代中田宗閑(1793-1871)のこと。土佐藩主の山内容堂(1827-1872)は閑翁の門弟として知られていた。

(Photo_15) 嵯峨人形 ケース:1.83×2.43×2.93cm 實自慢の嵯峨人形。ケースは礫斎に依頼して専用にあつらえたもの。

(Photo_16) 象牙箪笥 左の箪笥:0.84×0.55×0.75cm 作:小林礫斎 彫刻:浅野墨谷 左の箪笥の引出しには折本、右の箪笥の引出しには独楽などが入っている。

(Photo_17) 「集第三号」 箱:2.57× 3.37 cm 象牙三折人形、三味線駒、印籠、独楽 作:小林礫斎 巾着は實作。

(Photo_18) 實の目録 實はコレクションを小箱に分け、箱ごとに目録を編んでいたが、コレクション自体が膨大な上に、實の几帳面さを反映して目録も細かく、未完のままとなった。
IV.ミニチュアが呼んだミニチュア
当館では平成2年(1990)以来、過去5回にわたってミニチュア関連の展覧会を開催してきました。開催の度に寄せられる関連情報によって、当館のミニチュアコレクションはさらに充実したものとなっています。
本章では、ごく一部ながら、近年になって様々な方からのご寄贈やご紹介により当館収蔵品となったミニチュアを紹介します。

(Photo_19) 籠売り 高さ(大)5.5cm 高さ(小)5.4cm 目の粗いものから詰まったものまで、多様な籠などを編み上げ、さらに竹製の軸に取り付けている。無銘ながら、手の込んだ丁寧な作り。

(Photo_20) 銀更紗たばこ入れ 袋:2.76×4.54 ×1.76cm 筒:胡麻竹 緒締:珊瑚 前金具:硯に墨 実用のたばこ入れでも希少とされた銀更紗だが、ミニチュアであるこの作品にはちょうど良い大きさの柄の生地が選ばれ、緒締や金具も適したサイズの一級品であつらえている。























