世界の神経線維肉腫の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の神経線維肉腫の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Neurofibrosarcoma Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、神経線維肉腫(Neurofibrosarcoma)、すなわち悪性末梢神経鞘腫瘍(Malignant Peripheral Nerve Sheath Tumor:MPNST)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。MPNSTは非常にまれではあるものの、軟部肉腫の中でも特に悪性度が高く、再発や転移を起こしやすい腫瘍である。Wei Wangらの2021年の報告では、神経線維腫症1型(Neurofibromatosis Type 1:NF1)は約3,000人に1人の頻度でみられるとされ、MPNSTはこのNF1患者で特に重要な悪性合併症となる。調査会社は、患者数自体は極めて少ないものの、高い罹病負担、再発率、死亡率のため臨床的重要性が大きい疾患と位置づけている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病・発症状況、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
MPNSTは、末梢神経あるいは既存の神経線維腫から発生する高悪性度の軟部肉腫である。病理学的には、シュワン細胞系統の細胞が悪性転化することで生じると考えられており、NF1遺伝子の不活化に加え、CDKN2A/BやPRC2関連遺伝子などの二次的な分子異常が腫瘍形成に関与する。したがって、単一の遺伝子変化だけで成立するというより、段階的な遺伝子異常の蓄積によって悪性化が進む腫瘍と理解される。
臨床的には大きく、散発性MPNST、NF1関連MPNST、放射線誘発性MPNSTの3つに分類される。散発性は明確なNF1背景なしに発生するもの、NF1関連は神経線維腫症1型患者に発生するもの、放射線誘発性は過去に放射線治療を受けた部位などで長期間を経て発症するものを指す。この分類は単なる病因分類ではなく、発症年齢、腫瘍生物学、予後、治療方針にも影響する。
特にNF1との関連はMPNST疫学の中心的な特徴である。Angela C. Hirbeらの2024年の報告によると、NF1患者が生涯にMPNSTを発症するリスクは約8~13%に達する。多くの場合、叢状神経線維腫や非典型的神経線維腫が悪性転化することで発症する。このため、NF1患者全体は一般人口と比べてMPNST発症リスクが大幅に高いハイリスク集団といえる。
一方、資料冒頭の「約3,000人に1人」という数値はNF1自体の人口頻度を示す文脈であり、一般人口3,000人に1人がMPNSTを発症するという意味ではない点に注意が必要である。MPNSTそのものははるかにまれであり、一般人口ベースでは発症率が0.001%程度とされている。したがって、NF1の頻度とMPNSTの発症頻度は区別して解釈する必要がある。
疫学的には、MPNSTは軟部肉腫全体の約5~10%を占めるとされる。Masasuke Ohnoらの2023年の報告では、米国における一般人口での発生頻度は約0.001%と推定されている。絶対数は非常に少ないが、軟部肉腫という希少がん群の中では一定の割合を占める重要なサブタイプである。
年齢別では、Huang Jingxuanらの2024年の報告によると、40歳を超えると発症率が明確に上昇する一方、40歳未満では比較的安定した発生率を示すとされる。したがって、中高年で発症リスクが高まる傾向がある。ただし、NF1関連MPNSTでは比較的若い年齢で発症するケースも存在するため、一般的な散発性肉腫と同じ年齢分布だけで評価することはできない。
性別については、全体として大きな男女差は認められていない。Huang Jingxuanらの2024年の分析では、55歳未満の多くの年齢層で男女間の発症率に有意差はなく、例外的に20~29歳で差がみられた程度とされる。男女とも加齢に伴って同様の発症率上昇がみられるため、MPNSTは性別よりも年齢やNF1などの遺伝的背景の影響が大きい疾患と考えられる。
人種・民族別では、同じくHuang Jingxuanらの報告で、非ヒスパニック系黒人で比較的高い発症率がみられ、アジア系およびヒスパニック系では低い傾向が示されている。ただし、こうした差には真の生物学的要因だけでなく、人口構成、遺伝的背景、医療アクセス、診断登録の違いなども影響する可能性がある。
2000~2019年の長期推移では、MPNSTの発症率は年間変化率−2.2%で有意に減少したと報告されている。一方、病期別にみると、局所進行例は3.5%減少し、限局性症例はほぼ安定、遠隔転移例はわずかに増加する傾向が示されている。つまり、全体の発症率は低下しているものの、進行・転移症例の負担が必ずしも同じように減少しているわけではない。
この点は予後の悪さとも関係する。Zhixue Limらの2024年の報告では、MPNSTの再発率は約50%に達し、手術、放射線療法、化学療法を行っても、多くの患者が5年以内に死亡するとされる。特にNF1関連MPNSTは予後不良とされることが多く、NF1の有無が生存に影響する重要な臨床因子となる。
したがって、MPNSTの疾患負担は患者数の多さではなく、発症した患者一人あたりの高い重症度に特徴がある。再発、遠隔転移、機能障害、治療毒性などが大きく、完全切除できない症例では長期予後が厳しい。希少がんではあるが、診断された患者にとっての臨床的インパクトは非常に大きい。
国別では、米国が主要な診断市場の一つであり、MPNSTは米国の軟部肉腫の約5~10%を占めるとされる。一般人口における発生頻度は約0.001%と極めて低いものの、NF1患者を多数フォローする専門施設や肉腫センターが存在するため、診断・治療・臨床研究の集積が比較的進んでいる。
ドイツ、フランス、イタリア、スペインでは、MPNSTの発生頻度は米国と概ね同程度とされる。ただし、小児・若年NF1患者をどの程度体系的にフォローしているか、遺伝カウンセリングやNF1専門診療へのアクセスがどの程度整備されているかによって、悪性転化の早期発見率に差が生じる可能性がある。
また、同じような疾患負担を持つ国同士でも、遺伝カウンセリング、画像診断、病理診断、肉腫専門外科、放射線治療、化学療法などを統合した多職種診療へのアクセスには差がある。MPNSTは診断や手術計画が難しいことが多いため、こうした医療体制の差が患者転帰に影響し得る。
日本とインドについては、提示資料では詳細な数値は限られている。したがって、8主要市場すべてについて厳密な国別発症率を比較することはできない。ただし、本疾患の希少性を考えると、患者数そのものより、NF1患者の長期サーベイランス体制、肉腫専門施設への紹介、病理・分子診断の精度などが重要な市場・医療システム上の差になると考えられる。
市場・疫学上の重要な課題の一つは、NF1患者での悪性転化を早期に見つけることである。叢状神経線維腫は良性でも大きくなることがあるため、単なる腫瘍増大とMPNSTへの悪性転化を区別する必要がある。急速な増大、持続性疼痛、神経症状などが悪性化を疑うきっかけになり得るが、本資料では具体的な診断プロトコルまでは示されていない。
治療の中心は広範囲外科切除であり、現在も唯一の根治が期待できる治療法とされる。腫瘍を十分な切除断端を確保して完全に摘出できれば、長期生存の可能性が高まる。一方、末梢神経から発生するという性質上、重要な神経や血管に接しているケースも多く、完全切除と機能温存の両立が難しい場合がある。
手術後には、局所再発リスクを低下させる目的で放射線療法が追加されることがある。特に腫瘍が大きい場合、切除断端が近い場合、高悪性度の場合などに検討される。ただし、放射線療法は局所制御には寄与しても、長期生存を大きく改善する効果は限定的とされる。
化学療法では、ドキソルビシンとイホスファミドの併用など、軟部肉腫で一般的に使用される細胞障害性抗がん薬が用いられる。進行例や転移例、手術不能例では重要な治療選択肢となるが、奏効率や長期生存への効果は限定的であり、MPNSTに特異的な高い治療効果を持つ標準薬はまだ確立されていない。
転移性MPNSTでは、細胞障害性化学療法に加えて臨床試験への参加が重要な選択肢となる。希少がんで標準治療の有効性が限られているため、新規標的薬や免疫療法へのアクセスが患者にとって大きな意味を持つ。
新規治療としては、MEK経路やmTOR経路を標的とする阻害薬が研究されている。MPNSTではNF1異常などを背景にRAS/MAPKシグナルが活性化していることが多いため、MEK阻害は生物学的に合理性のあるアプローチである。また、mTOR経路も腫瘍増殖に関与するため、標的治療候補となっている。
さらに、免疫療法や遺伝子改変T細胞治療なども研究対象となっている。資料では、T細胞受容体(TCR)を利用した細胞療法などが新しいアプローチとして挙げられている。これらは腫瘍特異的抗原を認識する免疫細胞を利用して腫瘍を攻撃することを目指すが、現時点では初期段階の研究が中心である。
新規治療開発における課題は、毒性、薬剤耐性、そして患者数の少なさである。MPNSTは非常に希少なため、大規模なランダム化臨床試験に十分な患者を登録することが難しい。さらに、散発性、NF1関連、放射線誘発性で生物学的特徴が異なる可能性があり、すべての患者を単一の集団として扱うことが治療開発を難しくしている。
そのため、今後はNF1遺伝子異常、CDKN2A/B、PRC2関連異常などの分子プロファイルに基づいて患者を層別化し、それぞれの腫瘍生物学に対応した治療を開発することが重要になる。希少がんであるからこそ、患者数を単純に増やすのではなく、分子レベルで適切な患者を選択する精密医療型の臨床開発が求められる。
全体として本レポートは、MPNSTを「一般人口では極めてまれだが、NF1患者では生涯発症リスクが8~13%に達し、再発率約50%、5年以内の死亡も多い、極めて侵襲性の高い軟部肉腫」と位置づけている。一般人口での発生頻度は約0.001%とされ、軟部肉腫全体の約5~10%を占める。年齢では40歳以降に発症率が上昇し、性差は全体として小さい。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、疾患自体が急速に増えるというより、NF1患者の長期フォロー体制、画像・病理診断の改善、遺伝カウンセリング、肉腫専門施設への紹介体制などによって、悪性転化をより早い段階で診断できるかどうかが重要になると考えられる。一方、発症率全体は過去20年間で低下傾向を示しているものの、遠隔転移症例がわずかに増加しているというデータもあり、進行病変への対策は依然として大きな課題である。
したがって、今後のMPNST管理における中心的課題は、NF1患者、とりわけ叢状・非典型神経線維腫を持つハイリスク患者を継続的に監視すること、悪性転化を早期に診断すること、可能な限り完全切除を達成すること、再発・転移患者に対するより有効な全身治療を開発することにある。2026~2035年は、患者数の大幅な増加よりも、「極めて少ない患者をいかに早く見つけ、専門施設へ集約し、分子特性に応じた新規治療へつなげるか」が、臨床・市場双方で最も重要なテーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
神経線維肉腫市場概要(8主要市場)
3.1 神経線維肉腫市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 神経線維肉腫市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
神経線維肉腫疫学概要(8主要市場)
4.1 神経線維肉腫疫学状況(2019年~2025年)
4.2 神経線維肉腫疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 神経線維肉腫の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 神経線維肉腫の診断済み有病患者数
7.4 種類別の神経線維肉腫患者数
7.5 性別別の神経線維肉腫患者数
7.6 年齢別の神経線維肉腫患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における神経線維肉腫の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の神経線維肉腫患者数
8.4 米国における性別別の神経線維肉腫患者数
8.5 米国における年齢別の神経線維肉腫患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における神経線維肉腫の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の神経線維肉腫患者数
9.4 英国における性別別の神経線維肉腫患者数
9.5 英国における年齢別の神経線維肉腫患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける神経線維肉腫の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の神経線維肉腫患者数
10.4 ドイツにおける性別別の神経線維肉腫患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の神経線維肉腫患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける神経線維肉腫の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の神経線維肉腫患者数
11.4 フランスにおける性別別の神経線維肉腫患者数
11.5 フランスにおける年齢別の神経線維肉腫患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける神経線維肉腫の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の神経線維肉腫患者数
12.4 イタリアにおける性別別の神経線維肉腫患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の神経線維肉腫患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける神経線維肉腫の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の神経線維肉腫患者数
13.4 スペインにおける性別別の神経線維肉腫患者数
13.5 スペインにおける年齢別の神経線維肉腫患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における神経線維肉腫の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の神経線維肉腫患者数
14.4 日本における性別別の神経線維肉腫患者数
14.5 日本における年齢別の神経線維肉腫患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける神経線維肉腫の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の神経線維肉腫患者数
15.4 インドにおける性別別の神経線維肉腫患者数
15.5 インドにおける年齢別の神経線維肉腫患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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