世界の急性腎盂腎炎の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の急性腎盂腎炎の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Acute Pyelonephritis Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、急性腎盂腎炎(Acute Pyelonephritis)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。急性腎盂腎炎は、主として下部尿路から細菌が上行し、腎盂および腎実質に感染・炎症を起こす重症尿路感染症である。Jesús Redondo-Sánchezらの2025年の報告では、一次診療で治療される全尿路感染症(UTI)の約5.5%を急性腎盂腎炎が占め、UTIによる入院の14~52%に関与するとされる。調査会社は、世界的なUTI患者数の増加を背景に、急性腎盂腎炎の臨床負担は今後も大きいとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などを分析している。
急性腎盂腎炎は、膀胱など下部尿路に存在する細菌が尿管を通って腎臓へ上行することで発症することが多い。原因菌として最も一般的なのは大腸菌(Escherichia coli)であり、一般的な膀胱炎と同じく腸内細菌由来の感染が中心となる。ただし、感染が腎実質にまで及ぶため、単純な下部尿路感染より全身症状が強く、敗血症や腎機能障害へ進展するリスクも高い。
主な症状として、高熱、悪寒、側腹部痛、悪心、嘔吐、排尿時痛などがみられる。下部尿路症状に加えて発熱や腰背部・側腹部痛が強い場合には、膀胱炎ではなく腎盂腎炎を疑う必要がある。重症例では全身状態が悪化し、入院や静脈内抗菌薬治療が必要となる。
臨床的には、基礎疾患や尿路異常がない単純性急性腎盂腎炎と、尿路閉塞、尿路結石、妊娠、糖尿病、尿路構造異常などを背景に持つ複雑性腎盂腎炎に分けて考えることが多い。複雑性では感染が重症化しやすく、再発や治療失敗、腎障害のリスクも高くなる。
疫学的には明確な女性優位がある。BLK-Max Super Speciality Hospitalによると、年間発症率は女性で1万人あたり約15~17例、男性では3~4例とされ、女性は男性より数倍多い。これは、女性の尿道が短く、腸内細菌が膀胱へ到達しやすいことなどが関係していると考えられる。
Jesús Redondo-Sánchezらの2025年の解析では、2009~2018年に24,888例の急性腎盂腎炎が記録され、全体の発症率は1万人年あたり4.2例であった。また、発症率は研究期間中に4.9例から3.6例へ低下していた。
したがって、少なくともこの対象集団では、急性腎盂腎炎が一貫して増加していたわけではなく、一定期間には発症率低下も認められている。レポート全体が「UTI増加により疾患負担は今後も大きい」としている一方、個別地域では発症率が低下する場合もあるため、将来予測では国・時期別の違いを考慮する必要がある。
年齢・性別を組み合わせると、女性では18~64歳が中心的な患者層となる。Jesús Redondo-Sánchezらによると、全症例の約72.5%が18~64歳の女性に発生していた。つまり、若年から中年の成人女性が急性腎盂腎炎の最大の疫学的患者群である。
一方、男性では65歳以上で発症率が高くなるとされる。高齢男性では前立腺肥大などによる排尿障害や尿路閉塞が増え、尿の停滞によって感染リスクが高まることが背景にある可能性がある。
入院患者に限定すると、Rehana Hikman Ud Dinらの2026年の報告では、急性腎盂腎炎患者の年齢中央値は41歳で、やはり女性で多かった。一方、急性腎障害(AKI)の合併は男性でより多くみられたとされる。
このことは、発症頻度と重症化リスクが必ずしも同じ性別分布を示さないことを意味する。女性は発症そのものが多い一方、男性、特に高齢男性や複雑性尿路感染を持つ患者では、腎機能障害など重い合併症が起こる可能性が高い。
妊娠は特に重要なリスク因子である。Duresa Abuらの2021年の報告によると、無治療の無症候性細菌尿を持つ妊婦の約40%が腎盂腎炎へ進展する可能性がある。
無症候性細菌尿とは、尿中に細菌が存在していても排尿時痛などの症状がない状態である。妊娠中は尿路拡張や尿流停滞が起こりやすく、細菌が腎臓へ上行しやすくなるため、無症候でもスクリーニングと治療が重要となる。
妊娠中の腎盂腎炎は母体だけでなく胎児・新生児にも悪影響を及ぼす可能性があるため、一般成人のUTIより慎重な管理が必要である。資料では具体的な周産期転帰の数値までは示されていないが、妊婦は明確な高リスク集団として位置づけられている。
国別では、米国の疾患負担が大きい。Sayato Fukuiらの2022年の報告によると、米国では毎年約25万例の急性腎盂腎炎が診断され、そのうち10万例超が入院に至るとされる。
つまり、米国では診断患者の相当数が入院管理を必要としており、急性腎盂腎炎が外来感染症にとどまらず、病院医療資源を大量に消費する疾患であることがわかる。
一方で、「年間25万例の診断」「10万例超の入院」という米国データは、全UTI患者数ではなく急性腎盂腎炎に関する推定であるため、本レポートの中では比較的直接的な疾患負担指標といえる。
日本では、Ai Yamamotoらの2023年の報告によると、腎盂腎炎を含むUTIの入院発生率が男性で1万人あたり6.8例、女性で12.4例とされる。ここでも女性が男性より高い。
また、日本のUTI入院患者における院内死亡率は4.5%とされる。ただし、この数値は急性腎盂腎炎単独ではなく、腎盂腎炎を含む入院UTI集団の死亡率である可能性が高いため、そのまま急性腎盂腎炎の致死率として解釈することはできない。
英国、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、インドについては、提示資料では具体的な国別急性腎盂腎炎発症率は示されていない。ただし、各国でも一定数の入院症例が報告されており、先進国・新興国を問わず臨床的負担の大きいUTIとされる。
インドのように人口規模が大きい国では、UTI全体の発症数が多ければ、そこから一定割合が腎盂腎炎へ進展するため、絶対患者数も大きくなり得る。また、妊娠中の無症候性細菌尿管理や医療アクセスの差も患者数に影響する可能性がある。
市場・疫学上で重要なのは、急性腎盂腎炎が「UTI全体の一部」である点である。Jesús Redondo-Sánchezらの5.5%という数値は一次診療で治療されるUTIのうち急性腎盂腎炎が占める割合であり、14~52%という数値はUTIによる入院患者の中での割合である。
したがって、5.5%と14~52%は同じ母集団の有病率ではない。外来患者では腎盂腎炎の割合が比較的小さい一方、入院を必要とする重症UTI集団では腎盂腎炎が大きな割合を占めるという意味である。
同様に、日本の6.8・12.4例/1万人は腎盂腎炎を含む入院UTIの指標であり、米国の年間25万例の急性腎盂腎炎診断数とは定義が異なる。国際比較の際には、外来、入院、UTI全体、急性腎盂腎炎単独のどの指標かを区別する必要がある。
治療の基本は、原因となる細菌を迅速に排除するための抗菌薬治療である。軽症から中等症で全身状態が安定している患者では、経口抗菌薬による外来治療が可能な場合がある。
使用される抗菌薬のクラスとして、フルオロキノロン系、セフェム系、βラクタム系などが挙げられる。実際の薬剤選択は、患者の重症度、既往歴、アレルギー、妊娠の有無、地域の薬剤耐性状況などによって異なる。
重症感染、経口摂取不能、敗血症が疑われる場合などには入院して静脈内抗菌薬を使用する必要がある。米国で年間10万件超の入院が発生しているというデータは、この重症患者群の規模を示している。
支持療法としては、適切な水分補給、解熱薬、鎮痛薬などが用いられる。発熱、悪心、嘔吐が強い患者では脱水を合併することがあるため、輸液管理が必要になる場合もある。
治療開始後は、臨床症状が改善しているかを確認する必要がある。十分な抗菌薬を使用しても高熱や疼痛が持続する場合には、尿路閉塞、膿瘍、結石などの複雑性要因を疑う必要がある。
複雑性急性腎盂腎炎では、抗菌薬だけでは不十分なことがある。たとえば尿管結石などで尿路が閉塞している場合、感染尿が排出されず敗血症リスクが高まるため、尿流を回復させる処置が必要となる。
その場合には、医学的処置や外科的・泌尿器科的介入によって閉塞を解除することが治療上重要となる。つまり、複雑性腎盂腎炎では「抗菌薬+原因となる尿路異常の是正」が基本となる。
尿路結石、構造異常、妊娠、糖尿病などは、治療失敗や再発リスクを高める可能性がある。そのため、単純性患者と複雑性患者を早期に識別することが重要である。
市場の観点では、急性腎盂腎炎は短期間の感染症である一方、入院や静脈内抗菌薬、画像検査、泌尿器科的処置などを必要とする重症例が多いため、一症例当たりの医療資源利用が大きくなる可能性がある。
特に抗菌薬耐性は今後の重要な市場・臨床要因となり得る。提示資料では耐性率の具体的データは示されていないが、大腸菌など主要原因菌の薬剤感受性が治療選択に直接影響するため、経験的治療と培養結果に基づく治療調整が重要になる。
また、妊婦では予防的観点が非常に重要である。無症候性細菌尿を適切に発見・治療することで、約40%に及ぶとされる腎盂腎炎への進展リスクを抑えられる可能性があるため、妊婦スクリーニングは疾患負担軽減に直結する。
2026~2035年の疫学動向を考えるうえでは、UTI全体の増加、人口高齢化、糖尿病や尿路疾患を持つ患者の増加などが患者数を押し上げる可能性がある。特に高齢男性では前立腺疾患などによる複雑性UTIの負担が重要になる。
一方、一次診療でのUTI早期治療、妊娠中の無症候性細菌尿スクリーニング、尿路異常の早期診断などによって、下部尿路感染から腎盂腎炎へ進展する患者を減らせる可能性もある。
全体として本レポートは、急性腎盂腎炎を「大腸菌などが下部尿路から腎臓へ上行することで発症し、女性、とくに18~64歳に多く、重症例では入院や腎障害を伴う重要な細菌性尿路感染症」と位置づけている。
年間発症率は女性で1万人あたり15~17例、男性で3~4例と明確な女性優位を示す。一方、男性では65歳以上の発症が多く、入院例ではAKIなどの合併症が男性でより多いという特徴がある。
2009~2018年のデータでは24,888例、発症率4.2例/1万人年が記録され、4.9から3.6へ低下したという地域データもあるため、すべての地域で単純に発症率が上昇しているわけではない。将来負担はUTI全体の動向や患者背景の変化によって左右されると考えられる。
米国では年間約25万例が診断され、10万例超が入院する。日本では腎盂腎炎を含むUTIの入院発生率が男性6.8例、女性12.4例/1万人で、院内死亡率4.5%とされるが、これらは急性腎盂腎炎単独データではない点に注意が必要である。
妊娠は特に重要な高リスク状態で、無治療の無症候性細菌尿を持つ妊婦の約40%が腎盂腎炎へ進展する可能性がある。そのため、妊娠中の尿検査と適切な早期治療は、重症感染予防の重要な公衆衛生対策となる。
2026~2035年の臨床・市場動向では、UTI患者数の増加に加えて、高齢化、糖尿病、尿路閉塞、結石などを背景とする複雑性症例の増加が治療需要を押し上げる可能性がある。同時に、早期診断と適切な抗菌薬治療によって入院・敗血症・腎障害への進展を防ぐことが重要になる。
したがって、今後の急性腎盂腎炎管理における中心的課題は、高熱、側腹部痛、排尿症状などから早期に診断すること、単純性と複雑性を適切に区別すること、軽症では適切な経口抗菌薬、重症では静脈内抗菌薬と入院管理を迅速に開始すること、そして結石や尿路閉塞がある場合には泌尿器科的介入によって尿流を回復させることである。2026~2035年は、急性腎盂腎炎を単なる「重い膀胱炎」として扱うのではなく、敗血症や急性腎障害につながり得る上部尿路感染症として早期にリスク層別化し、抗菌薬治療、妊婦スクリーニング、尿路異常の是正を一体化して管理することが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
急性腎盂腎炎市場概要(8主要市場)
3.1 急性腎盂腎炎市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 急性腎盂腎炎市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
急性腎盂腎炎疫学概要(8主要市場)
4.1 急性腎盂腎炎疫学状況(2019年~2025年)
4.2 急性腎盂腎炎疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 急性腎盂腎炎の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
7.4 種類別の急性腎盂腎炎患者数
7.5 性別別の急性腎盂腎炎患者数
7.6 年齢別の急性腎盂腎炎患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の急性腎盂腎炎患者数
8.4 米国における性別別の急性腎盂腎炎患者数
8.5 米国における年齢別の急性腎盂腎炎患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の急性腎盂腎炎患者数
9.4 英国における性別別の急性腎盂腎炎患者数
9.5 英国における年齢別の急性腎盂腎炎患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の急性腎盂腎炎患者数
10.4 ドイツにおける性別別の急性腎盂腎炎患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の急性腎盂腎炎患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の急性腎盂腎炎患者数
11.4 フランスにおける性別別の急性腎盂腎炎患者数
11.5 フランスにおける年齢別の急性腎盂腎炎患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の急性腎盂腎炎患者数
12.4 イタリアにおける性別別の急性腎盂腎炎患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の急性腎盂腎炎患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の急性腎盂腎炎患者数
13.4 スペインにおける性別別の急性腎盂腎炎患者数
13.5 スペインにおける年齢別の急性腎盂腎炎患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の急性腎盂腎炎患者数
14.4 日本における性別別の急性腎盂腎炎患者数
14.5 日本における年齢別の急性腎盂腎炎患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける急性腎盂腎炎の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の急性腎盂腎炎患者数
15.4 インドにおける性別別の急性腎盂腎炎患者数
15.5 インドにおける年齢別の急性腎盂腎炎患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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