BSI(英国規格協会)、 BSI ネットゼロ・バロメーターレポートの拡張版である G7 Net Zero Temperature Check: Business Insights 2026を公開 日本のネットゼロ推進はG7で最も慎重、 政策の不確実性・人材不足・データの信頼性が重荷に
政策・人材・データの構造課題が抑制要因に、人材確保への期待が数少ない推進力
本プレスリリースは2026年4月14日(英国時間)に英国で配信されたプレスリリースの抄訳版です。
2026年4月14日:英国規格協会(British Standards Institution、以下「BSI」)は、G7 Net Zero Temperature Check: Business Insights 2026を発表しました。本レポートは、今年で6年目を迎える英国企業対象の年次レポートであるBSI ネットゼロ・バロメーターレポートをもとに、対象を初めてG7諸国へ拡大したものです。ビジネスリーダー約7,000人を対象にネットゼロに関する動向調査を実施しました。本調査によると、企業はネットゼロに関するメッセージを再構築しつつも、脱炭素化へのコミットメントを維持しており、対応の先送りによるコストへの懸念が高まっていることが明らかになりました。一方で、日本はG7の中でネットゼロへの自信とコミットメントが最も低い市場であることが示されました。

G7 Net Zero Temperature Check: Business Insights 2026 レポート
イラン情勢の緊張やそれに伴う原油価格の高騰を背景に、再生可能エネルギーへの移行の重要性が改めて認識される中、本調査によると、日本のビジネスリーダーの71%(グローバル:74%)が、再生可能エネルギーへ移行しないことによる経済的リスクが、移行に伴うリスクを上回ると回答しています。これは「気候変動対応の位置づけの変化」という大きな潮流の一環であり、企業が環境負荷の低減にとどまらず、レジリエンスやリスク管理、事業継続の観点からネットゼロ戦略を再構築していることを示しています。
また、日本のビジネスリーダーは気候変動への適応とレジリエンス対策の必要性を認識していることが明らかになりました。全体として、79%(グローバル:81%)が気候変動への備えを怠った場合の将来コストや自社のレジリエンスに懸念を示した一方で、74%(グローバル:75%)は移行に伴うコストを上回る長期的な利益が見込まれると回答しました。また、82%(グローバル:77%)が気候変動がサプライチェーンに混乱をもたらす可能性があると認識しており、67%(グローバル:75%)がネットゼロへの取り組みは将来のレジリエンスにとって重要であると回答しました。なお、G7諸国の企業で気候リスクへの適応計画を策定しているのは5分の1にとどまり(3分の1は現在策定中)、再生可能エネルギーの調達に投資している企業はわずか21%でした。
■ネットゼロに関するメッセージの再構築
本調査は、政治的不確実性や地政学的な不安定さがもたらすコストを浮き彫りにしています。日本企業の72%(グローバル:76%)が、ネットゼロをめぐる政策の不確実性により、確信を持った投資判断が難しいと回答しました。また、二極化した議論は建設的ではないとの認識が広がっており、74%(グローバル:83%)が、政府に対してネットゼロに向けた企業の取り組みを奨励・支援することを求めています。加えて、日本のビジネスリーダーは長期的かつ現実的な視点を維持しており、70%(グローバル:79%)が、現時点ですべての政党にとって優先事項でないとしても、今後10年以内にネットゼロが再び政治の優先課題になると見通しています。ただし、これはG7諸国の中で最も低い水準となりました。
これを受け、日本のビジネスリーダーたちは、ネットゼロへの取り組みを後退させるのではなく、その意義や訴求の仕方を再整理しています。過去12ヶ月間で、メディアや政界における気候変動懐疑論の高まりを受け、ネットゼロへの取り組みを推進・発信する方法を変更したと回答した企業は60%(グローバル:61%)に上りました。これは、政治的支援の変化を受けて計画を調整したと報告した27%(グローバル:24%)をはるかに上回ります。同様に、意思決定は単なる政策環境のみに左右されるものではなく、複数の要因によって形作られています。71%(グローバル:78%)は政治的不確実性にかかわらず、ネットゼロがビジネスにとって有益であるとして取り組みを継続すると回答しており、67%(グローバル:76%)は政治に関係なく、顧客やクライアントの期待を主な動機として挙げています。
実際には、一部の政治家による反対の主張とは裏腹に、多くのビジネスリーダーはネットゼロを好機と捉えています。日本では69%(グローバル:78%)が、脱炭素化と経済成長は両立可能であると回答しており、71%(グローバル:76%)が、ネットゼロは経済成長や雇用創出、エネルギー安全保障の強化に寄与すると回答しています。また、72%(グローバル:75%)がネットゼロは新たな市場とイノベーションの機会を開くと考えています。さらに、67%(グローバル:74%)が、たとえ経済的コストを伴う場合でも、自社がネットゼロへの取り組みに貢献することは妥当であると認識しています。一方で、これらの項目はいずれもグローバル平均を若干ではあるものの下回っており、日本ではネットゼロへの経済的・戦略的意義に対する前向きな認識は見られるものの、その期待感は相対的に慎重であることが示されました。
■BSIの最高経営責任者(CEO)であるSusan Taylor Martinは次のように述べています。
「昨今の地政学的な出来事は、再生可能エネルギーへの社会的な移行の必要性を改めて浮き彫りにしました。また、気候変動への対応においては、リスク軽減やサプライチェーン管理、将来への備えといった観点から、レジリエンスを重視したアプローチを採用することの重要性も明らかになっています。多くのビジネスリーダーはすでにこのような考え方を取り入れており、ネットゼロへの投資を怠ることが、長期的に自社の事業運営を脅かす可能性があることを認識しています。今後の課題は、気候リスクへの適応策を通じて、意欲と実行の間にあるギャップを埋めることです。不確実性と混乱は、ますます世界経済を特徴づける要素となっています。こうした中でBSIの役割は、規格を通じて明確性、一貫性、そして信頼を提供することにあります。世界中の企業がネットゼロへの移行に取り組む中で、その意思決定を支える基盤を提供していきます」
■停滞ではなく変化する進展――しかし障壁は依然として存在
全体として、G7のビジネスリーダーの83%が、自国の目標に沿ったネットゼロの達成に現在も取り組んでいると回答しており、76%がこの取り組みの勢いを維持することが重要だとし、コスト削減を明確に見込んでいるのは4分の1にとどまりました。さらに78%が、たとえ目標の達成が困難であっても、脱炭素化を引き続き優先すべきだと回答しています。一方で、本調査において一定の方向転換も見られました。過去1年間で、企業の32%が計画を見直し、33%が目標を再評価しました。ただし、これは取り組みを放棄したわけではなく、目標を一時停止したのはわずか14%、放棄したのはわずか13%にとどまっています。
依然として行動を阻む障壁は残っており、特に事業コストが大きな課題となっています。G7のビジネスリーダーの80%は、自らが役割を果たすべきだと認識しつつも、ネットゼロ達成が自社の業界パフォーマンスに対するプレッシャーとなっていると回答しました。さらにネットゼロが過度な財務的影響を伴わずに達成できると考える企業は50%にとどまる一方、77%は自社の業界は他業界よりもネットゼロに向けたコスト負担を求められていると回答しました。
ロシアによるウクライナ侵攻から4年が経過し、エネルギー価格が高止まりしている中、さらにイラン情勢の悪化を受けてエネルギー価格が一層高騰しています。これはG7諸国全体で最も多く挙げられた行動の障壁であり、21%がこれを挙げています。また、ビジネスリーダーたちは、グリーンテクノロジーへの投資に向けた銀行や政府からの資金調達の不足を指摘する企業は25%に上ります。さらに23%は、事業成長の優先がより重要だと回答しています。
また、その他の障壁としては、ネットゼロに対応するためのスキルや知識の不足が挙げられました。また、3分の1がガイドライン・基準を求めており、一般的な指針を求めることが31%、業界別の指針を求める声は30%に上ります。さらに、33%は自社の経営陣や従業員がネットゼロとその達成方法を理解するための研修プログラムやワークショップを望んでいます。一方、日本では、ネットゼロに対応するためのスキルや知識の不足に加え、政策の不確実性が企業の取り組みを前進させるうえでの課題となっていることが明らかになりました。また、排出データに対する信頼感は一定程度見られるものの、G7各国と比較すると相対的に低い傾向が示されました。ネットゼロ推進の最大の動機はコスト削減でしたが、人材確保への期待もまた、前向きな推進要因として浮かび上がっています。この調査結果は、BSIが 2027年の発効を予定している世界初の独立系ネットゼロ基準の策定に関するパブリックコンサルテーションの公表を控えて明らかになったものです。
その他の主な日本の調査結果は以下の通りです:
・69%が2050年までのネットゼロ達成を目標として掲げており、G7諸国の中で最低水準です。(グローバル:83%)
・43%が2050年までのネットゼロ達成に自信があると回答しており、G7諸国の中で最低水準です。(グローバル:55%)
・67%が自社報告の排出量データの信頼性に確信を示しており、G7諸国の中で最低水準です。(グローバル:78%)
・64%がサプライチェーン排出量データの信頼性に確信を示しており、G7諸国の中で最低水準です。(グローバル:73%)
本レポートは以下の5つの主要な結論を導き出しています:
1. 企業は依然としてネットゼロへの強いコミットメントを維持しており、計画を放棄するのではなく、見直しを行っている
2. 政治的不安定さは躊躇を生んでいるが、取り組みを頓挫させるものではない
3. 企業は、レジリエンスやリスク、競争力の観点からネットゼロの捉え方を再定義している
4. コスト、能力の不足、不明確な規制が、依然として進展の大きな障壁となっている
5. 企業は、この移行に明確な経済的メリットを見出している
これに基づき、次の提言を行っています:
1. ネットゼロを中核的なレジリエンス戦略として再定義し、資金調達を議論に組み込む
2. 事業計画に気候変動適応策を組み込む
3. 「政治的な変動に左右されない」ロードマップを策定する
4. 社内の人材育成および体制構築のため、必要な研修や支援を検討する
詳細情報およびレポートの全文(英語)は、こちらをご覧ください。
https://page.bsigroup.com/l/73472/2026-04-01/2ckg6z5
■調査について
本調査は2026年2月にCensuswideにより実施され、G7諸国(英国、米国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)のビジネスリーダー7,068名を対象としています。報告される「総計」数値が各国の企業を代表するプロファイルに基づいていることを保証するため、データは各国の企業人口のプロファイル、特に企業の規模/従業員数に応じて加重調整されています。
■BSI(英国規格協会)とBSIグループジャパンについて
BSI(British Standards Institution:英国規格協会)は、ビジネス改善と標準化を推進する機関です。設立以来1世紀以上にわたって組織や社会にポジティブな影響をもたらし、信頼を築き、人々の暮らしを向上させてきました。
現在190を超える国と地域、そして77,500社以上のお客様と取引をしながら、専門家、業界団体、消費者団体、組織、政府機関を含む15,000の強力なグローバルコミュニティと連携しています。
BSIは、自動車、航空宇宙、建築環境、食品、小売、医療などの主要産業分野にわたる豊富な専門知識を活用し、お客様のパーパス達成を支援することを自社のパーパスと定めています。気候変動からデジタルトランスフォーメーションにおける信頼の構築まで、あらゆる重要社会課題に取り組むために、BSIはさまざまな組織と手を取り合うことによって、より良い社会と持続可能な世界の実現を加速し、組織が自信を持って成長できるよう支援しています。
BSIグループジャパンは、1999年に設立されたBSIの日本法人です。マネジメントシステム、情報セキュリティサービス、医療機器の認証サービス、製品試験・製品認証サービスおよび研修サービスの提供を主業務とし、また規格開発のサポートを含め規格に関する幅広いサービスを提供しています。





















