天然記念物アユモドキの凍結精子から人工繁殖・成育に成功 環境省近畿地方環境事務所が近畿大学大学院生に感謝状を贈呈

近畿大学大学院農学研究科 環境管理学専攻(奈良県奈良市、担当教員:教授 北川忠生)に所属する大学院生2名が、国の天然記念物で種の保存法※1 により国内希少野生動植物種に指定されているアユモドキ※2(学名:Parabotia curtus)の凍結精子からの人工繁殖に成功し、正常に成育させました。大学院生2名は、安定的な精子凍結や人工繁殖条件の確立により、精子凍結保存※3 技術を実用レベルまで高めたことから、同種の保護に大きな貢献を果たしたとして、令和8年(2026年)3月24日(火)、農学部 学位記・卒業証書伝達式内で環境省近畿地方環境事務所(大阪府大阪市)から感謝状が贈呈されます。
【本件のポイント】
●国の天然記念物であるアユモドキの凍結精子からの人工繁殖、成育に成功
●環境省事業で過去に凍結保存された貴重なアユモドキの凍結精子を有効に活用できることを証明
●環境省近畿地方環境事務所から農学研究科の大学院生2名に感謝状を贈呈
【本件の内容】
環境省近畿地方環境事務所は、国の天然記念物で種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されている日本固有種のアユモドキの保護増殖事業を実施しており、その一環で淀川水系のアユモドキの生息域外保全事業に取り組んでいます。近畿大学農学部は、環境省とアユモドキの系統保存に関する連携協力協定を締結し、同種の繁殖や精子の凍結保存に取り組んできました。
アユモドキの生息域外保全事業においては、野生個体の遺伝情報を確実に残し、系統保存個体の遺伝的多様性を維持することを目的に、精子の凍結保存が実施されてきました。しかし、凍結保存した精子がどの程度の受精能力を保持しているかは十分に判明しておらず、また、凍結保存された精子からどの程度の個体を産出できるのかも、全くわかっていませんでした。
近畿大学農学部では、令和4年(2022年)4月以降、複数の水族館で長期飼育されたアユモドキの個体を受け入れて成熟させ、ホルモン投与と人工絞出法による人工授精に成功しています。今回、受精実験が可能な人工繁殖個体の確保と飼育条件での成熟が可能になったことを背景に、2名の大学院生を中心とした学生らの取り組みによって、いくつかの条件下における凍結精子を用いた人工繁殖実験を行い、子世代を誕生させ、多数個体を正常に生育させることに成功しました。
その過程で、安定的な精子凍結の条件や凍結精子を用いた人工授精法を確立し、アユモドキにおける精子凍結保存技術を、保護における実用化のレベルまで高めました。さらに、これらの結果から過去に凍結保存された精子も、おおよそ実用できる状態にあることを証明し、今後のアユモドキの保護増殖事業における重要な柱の一つを構築しました。なお、繁殖個体の一部は近畿大学で継続飼育するとともに、東山動植物園(愛知県名古屋市)にも移され継続飼育されています。
【感謝状贈呈式 概要】
日時 :令和8年(2028年)3月24日(火)14:00~15:30
※令和7年度近畿大学大学院農学研究科学位記授与式内で実施。
贈呈は14:20頃から5分程度を予定。
場所 :近畿大学奈良キャンパス 教室棟1階102教室
(奈良県奈良市中町3327-204、近鉄奈良線「富雄駅」からバス約10分)
贈呈者:環境省近畿地方環境事務所 野生生物課長 櫻又涼子氏
対象者:野﨑大誠さん 近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻 博士前期課程2年
岡隼斗さん 近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻 博士前期課程2年
【用語説明】
※1 種の保存法:国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、平成5年(1993年)4月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が施行されました。種の保存法では、国内に生息・生育、または外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めています。国内に生息・生育する希少野生生物については、レッドリストに掲載されている絶滅のおそれのある種(絶滅危惧I類、II類)のうち、人為の影響により生息・生育状況に支障をきたしているものの中から、国内希少野生動植物種を指定し、個体の取り扱い規制、生息地の保護、保護増殖事業の実施など保全のために必要な措置を講じています。個体の繁殖の促進、生息地等の整備等の事業の推進をする必要があると認める場合は、「保護増殖事業計画」を策定して、保護増殖のための取組を行っています。
(環境省HP https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/hozonho.html)
※2 アユモドキ:アユモドキはドジョウの仲間ですが、泳いでいる姿がアユに似ていることから、この名前がつきました。滋賀県、京都府、大阪府にまたがる琵琶湖淀川水系と岡山県の旭川・吉井川・高梁川水系、広島県の芦田川水系に分布しています。しかし、昭和52年(1977年)に国の天然記念物に指定され、琵琶湖では昭和54年(1979年)を最後に確認報告がなく、京都府南丹市の生息場所では過去約10年、確認例がありません。大きさは約15cm、ドジョウ類では例外的に体がたてに扁平で、ほかのドジョウの仲間にくらべて体高が高いことも特徴の一つです。体色は乳白色で、暗褐色の幅広いしま模様が入り、とくに未成熟な個体ではそれが顕著に見られます。自然護岸の残った河川や池、水路の石垣などに隠れる性質が強く、おもに朝、晩に活動します。動物食で、ユスリカ、トビケラなどの水生昆虫、イトミミズや陸生貝類を食べます。アユモドキは、6~8月に河川の増水や水田の灌漑によって一時的に生じる水たまりで産卵します。ふ化した稚魚はしばらくその水たまりにとどまり、灌水後に大量に発生するプランクトンを食べて成長します。しかし、アユモドキの生息域では、河川の改修や水田の土地改変によって生息場所が年々狭められています。特に、河川とつながる水田で産卵が行われるため、河川・用水路・水田の間を魚が自由に行き来できる環境を維持することが重要です。また、生息域の各所では、オオクチバスやカムルチーなどの外来魚による捕食の脅威にも直面しています。環境省では保護増殖事業を実施しており、淀川水系の桂川や岡山県において、生息域外保全のほか生息状況調査や密漁対策パトロールなどを行っています。
(環境省 いきものログ https://ikilog.biodic.go.jp/Rdb/zukan?_action=rn040)
※3 精子凍結保存:液体窒素(マイナス196℃)を用いて精子や生殖細胞を半永久的に凍結し、必要に応じて人工授精にもちいる方法です。絶滅危惧種の保護において精子凍結保存は、将来的な種の再生や遺伝的多様性の維持を目的とした重要な「生息域外保全」技術となります。
【関連リンク】
農学部 環境管理学科 教授 北川忠生(キタガワタダオ)
https://www.kindai.ac.jp/meikan/890-kitagawa-tadao.html

















