乳児期のアトピー早期強化治療、3歳時点でも食物アレルギーを抑制 ~早期介入で卵アレルギーも有意に減少~

    調査・報告
    2026年3月17日 10:00
    図:今回の研究の全体像
    図:今回の研究の全体像

    国立成育医療研究センター(所在地:東京都世田谷区大蔵、理事長:五十嵐隆)アレルギーセンターの山本貴和子、名古屋市立大学の大矢幸弘、大阪はびきの医療センターの亀田誠、近畿大学医学部の竹村豊、山口大学の長谷川俊史、三重病院の藤澤隆夫、千葉大学の山出史也、藤田医科大学ばんたね病院の近藤康人、公立昭和病院の川口隆弘、名古屋大学の秋山真志、秋田大学の河野通浩らの研究チームは、乳児期早期に発症したアトピー性皮膚炎に対する早期強化治療が、3歳時点でも食物アレルギーの有病率低下と関連することを、多施設共同ランダム化比較試験に基づく長期追跡研究として世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、国際雑誌The Allergyに掲載されました。

    【プレスリリースのポイント】
    ●乳児期早期に発症したアトピー性皮膚炎に対し、早期から炎症を十分に抑える治療を行った早期強化治療群の子どもは、3歳時点でも食物アレルギー(特に鶏卵アレルギー)の有病率が有意に低いことが分かりました。
    ●アトピー性皮膚炎は、早期強化治療群と従来治療群の両群とも90%以上が軽症以下で良好なコントロールが維持できていました。
    ●2歳時のスギ花粉感作は、早期強化治療群が、従来治療群と比較して、有意に低い傾向を示しました。
    ●成長(身長・体重)については、3歳時点で両群に差はないことが確認されました。
    ●乳児期早期からのアトピー性皮膚炎治療が、アレルギー疾患の進展を抑える新たな戦略となる可能性を示しています。

    【研究の背景】
    アトピー性皮膚炎は、乳児期に最初に現れることの多いアレルギー疾患であり、その後、食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎へと進展する「アレルギーマーチ」の出発点と考えられています。
    皮膚のバリア機能が障害されることで、皮膚からアレルゲンが侵入し、感作が起こることが近年明らかになってきました。
    本研究グループはこれまでに、多施設共同ランダム化比較試験にて、乳児期早期のアトピー性皮膚炎に対して炎症を十分に抑える治療(早期強化治療)を行うことで、生後28週時点の鶏卵アレルギーを有意に減少させることを報告しました(https://www.ncchd.go.jp/press/2023/0410.html)。
    今回、その効果が3歳まで持続するのかを検証しました。

    【研究概要】
    ●本研究は、全国多施設で実施されたランダム化比較試験(PACI試験)に参加した乳児を、3歳まで追跡した前向きコホート研究(PACI-ON研究)です。
    ●生後7~13週でアトピー性皮膚炎と診断された乳児650名(全国16施設)を、
     〇早期から積極的に炎症を抑える「早期強化治療群」(プロアクティブ療法)
     〇ガイドラインに沿った「従来治療群」(リアクティブ療法)
      の2群に無作為に割り付け、生後28週まで治療を実施しました。
    ●その後は通常診療を行い、3歳まで食物アレルギー、皮膚症状、アレルギー性疾患、成長などを評価しました。

    【主な研究結果】
    ●3歳時点の食物アレルギー全体の有病率は、早期強化治療群47.4%、従来治療群58.8%と、早期強化治療群で有意に低下していました。
     この差は主に、生後28週時の負荷試験における鶏卵(生卵)アレルギーの既往が少なかったことによるものと考えられ、早期の耐性獲得が示唆されました。
    ●生卵アレルギーの既往は、早期強化治療群30.4%、従来治療群40.5%と、有意な差が認められました。
     なお、ほぼすべての子どもが3歳までに何らかの加熱卵を摂取可能となっていました。
    ●アトピー性皮膚炎の重症度は両群で同等で、90%以上が軽症以下でした。全身療法が必要となった子どもはいませんでした。
    ●生後28週時に認められた身長および体重の差は、3歳時点では消失していました。
    ●喘鳴、喘息、アレルギー性鼻炎の発症率に有意な差は認められませんでしたが、2歳時のスギ花粉感作は、早期強化治療群が従来治療群と比較して有意に低い傾向を示しました。

    【発表者のコメント】
    本研究は、乳児期のアトピー性皮膚炎に対して早期から十分に炎症をコントロールすることが、食物アレルギーの長期的な予後やアトピー性皮膚炎のコントロールに影響を与える可能性を示しました。皮膚治療による十分な湿疹のコントロールと適切な食物導入を組み合わせることで、アレルギー疾患の進展を抑える新たな予防戦略につながることが期待されます。

    【特記事項】
    本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業、乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎を追跡しアレルギーマーチへの影響を探索する前向きコホート研究(PACI-ON コホート)の支援を受けて実施しました。

    【発表論文情報】
    題名 :Three-year follow-up of the PACI randomized controlled trial (PACI-ON): effects of early intervention for atopic dermatitis on atopic march
    著者 :山本貴和子(責任著者)1、齋藤麻耶子1、佐藤未織1、石川史1、豊國賢治1、犬塚祐介1、谷口智城1、小笠原久子1、島田真実1、樺島重憲1、飯倉克人1、土屋邦彦2、森元真梨子2、峠岡理沙2、益田浩司2、細井創2、加藤則人2、亀田誠3、髙岡有理3、重川周3、竹村豊4、徐アレキサンダー5、佐藤さくら5、海老澤元宏5、糸永宇慧5、長谷川俊史6、脇口宏之6,7、藤澤隆夫8、金井怜8、山出史也9、中野泰至9、夏目統10、安岡竜平10、近藤康人11、森雄司11、川口隆弘12、二村昌樹13、杉浦一充14、北沢博15、濱畑裕子16、秋山真志17、河野通浩18、朴慶純1、福家辰樹1、小林徹1、斎藤博久1、Hywel C.Williams19、大矢幸弘(AMED開発代表者)1,14,20
    所属名:
    1)国立成育医療研究センター(東京都)
    2)京都府立医科大学大学院 医学研究科(京都府)
    3)大阪はびきの医療センター(大阪府)
    4)近畿大学 医学部(大阪府)
    5)国立病院機構 相模原病院(神奈川県)
    6)山口大学大学院 医学系研究科(山口県)
    7)大分大学 医学部(大分県)
    8)国立病院機構 三重病院(三重県)
    9)千葉大学大学院 医学研究院(千葉県)
    10)浜松医科大学(静岡県)
    11)藤田医科大学 ばんたね病院(愛知県)
    12)公立昭和病院(東京都)
    13)国立病院機構 名古屋医療センター(愛知県)
    14)藤田医科大学 医学部(愛知県)
    15)東北医科薬科大学(宮城県)
    16)さいたま市立病院(埼玉県)
    17)名古屋大学大学院 医学系研究科(愛知県)
    18)秋田大学大学院 医学系研究科(秋田県)
    19)Lifespan and Population Health, University of Nottingham(英国)
    20)名古屋市立大学大学院 医学研究科(愛知県)

    【ニュースリリース】
    医学部 医学科 医学部講師 竹村豊(タケムラユタカ)
    https://www.kindai.ac.jp/meikan/1587-takemura-yutaka.html

    医学部
    https://www.kindai.ac.jp/medicine/

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