「生育環境」、「生育状況」、「農作業」の3軸モニタリング環境...

「生育環境」、「生育状況」、「農作業」の3軸モニタリング環境の構築 および当該情報の統合表示システムの開発  ~IT融合による統合型次世代農業プロジェクトの進捗状況~

東京大学、茨城大学、鈴与株式会社、鈴与商事株式会社、株式会社NTTファシリティーズ(以下、NTTファシリティーズ)、西日本電信電話株式会社(以下、NTT西日本)は、共同研究契約を締結し、鈴与グループの農業生産法人ベルファーム株式会社(静岡県菊川市、以下、ベルファーム)にて、次世代トマト施設栽培方式である低段密植栽培※1の大規模実証試験(以下、本実証試験)に、2014年5月より取り組んでおります。

この度、主としてNTT西日本、NTTファシリティーズが手掛ける農業関連情報の「生育環境」、「生育状況」、「農作業」の3つの情報※2(以下、3軸)を統合的に可視化するシステム等および生育環境モニタリングシステムにおいて進捗がありましたので、お知らせいたします。

※1 通常の4~5倍の栽植密度で苗を植えて第一~三花房の果実のみを収穫して終了する短期栽培を繰り返す方法。第一花房のみを収穫する場合を特に一段密植栽培と呼ぶ。

※2 生育環境…温度、湿度、CO2、電気使用量など
  生育状況…葉面積、茎伸長、茎径、果実重量、糖度、酸度など
  農作業 …農作業者の動線情報、動画情報など

[参考]IT融合による統合型次世代農業プロジェクトについて
本実証試験(全体統括:東京大学・山田 一郎教授)は産学連携体制で、IT融合による統合型次世代農業システムを開発し、日本農業の課題解決を図るとともに、日本の経済成長・国際戦略への貢献を目的としています。この統合型次世代農業システムでは、ITを活用した「生育環境」、「生育状況」、「農作業」の3軸モニタリングを実施し、ビッグデータ解析に基づく最適栽培管理を実現します。本共同研究における主とする役割分担は以下の通りです。

[東京大学、茨城大学]
最適栽培方式の開発、生育状況、農作業モニタリング技術の開発およびビッグデータ解析

[鈴与株式会社、鈴与商事株式会社(以下、鈴与グループ)]
実証試験サイトの構築と運営、最適栽培方式の開発およびビジネスモデルの検討

[NTTファシリティーズ]
実証試験サイトの構築、生育環境モニタリング技術の開発、「農業経営支援システム(agRemoni、以下、農業経営支援システム)※3」を元にした生育環境、生育状況モニタリングシステムの開発、省エネ・省資源のための環境制御技術の開発

※3 「agRemoni(アグリモニ)」はNTTファシリティーズの登録商標です。

[NTT西日本]
農作業モニタリングシステムの開発、「生育環境」、「生育状況」、「農作業」の3軸モニタリング情報を統合表示可能とするシステム(以下、「3軸モニタリング統合表示システム」)の開発およびITの農業分野への展開


1.進捗状況
(1) NTT西日本
ハウス内で栽培管理をする熟練農作業者の動線データをRFID (Radio Frequency Identifier)※4の技術を用いて把握するとともに、作業模様を撮影した動画データや、作業者がタブレットを使って登録する作業工程履歴データを蓄積する「農作業モニタリングシステム」を構築しました。(【別紙】図1~3)
また本システムを、NTTファシリティーズが開発した「生育環境」のモニタリング情報を取得、蓄積する「農業経営支援システム」(後述)を発展させた「生育環境モニタリングシステム」、「生育状況モニタリングシステム」※5と連携することによって、栽培に必要な3つの情報である「生育環境」、「生育状況」、「農作業」を統合的に可視化する「3軸モニタリング統合表示システム」を実現しました。

※4 電波を使って物品や人物を自動的に識別するための技術です。

※5 現在は手動による情報取得、登録、蓄積を行っておりますが、今後、東京大学が開発予定である生育状況モニタリング技術をもとに、情報取得・蓄積の自動化をめざします。

(2) NTTファシリティーズ
生育環境をモニタリングし、栽培管理等を行える「農業経営支援システム」に、新たに電力使用量・重油使用量等の「栽培資源」情報、農場における位置情報を3次元でモニタリングする機能を追加し、「生育環境モニタリングシステム」を開発しました。またその上で、ハウス内外にモニタリング環境を構築し、モニタリング情報を元に区画毎の温熱環境の分布の状況を確認、検証を行いました。
さらに、手作業で取得した、生育状況モニタリング情報(葉面積、茎伸長、茎径、果実重量、糖度、酸度など)を手動登録し、収集することができる仕組みを設け、生育環境モニタリングシステムと連携させました。

(3) 東京大学、茨城大学
東京大学では、最適栽培方式の確立をめざして、主として、生育状況・農作業モニタリング技術の開発を進めています。生育状況モニタリングに関しては、トマト苗・果実の成長計測手法およびロボットによる成長計測手法の自動化の研究開発を進めており、さらに、蓄積した生育環境データ、生育状況データを用いて、ビッグデータ解析の検討を開始しました。また、茨城大学は東京大学と連携して、生育状況モニタリングに基づく生育診断、養液管理などの最適栽培方式の検討を進めています。

(4) 鈴与グループ
低段密植栽培に関する最適栽培方法の確立に向け、本実証試験サイトでの栽培管理とデータ取得、およびそれらを通じた栽培家・事業家ニーズの研究へのフィードバックを進めるとともに、農業分野における新たなビジネスモデルの開発に向けた検討を開始しています。


2.「3軸モニタリング統合表示システム」について
(1) 特長
【1】時間軸に応じたマッピング機能
日時指定にスライダー機能を用い、場所・日時・キーワードの3要素を同時に指定して検索結果を表示できる技術※6により、時間の変化に伴う3軸モニタリング情報の変化や特徴を、地図上に統合的に表示することを可能にします。

※6 NTT西日本の技術です(現在、特許出願中)。

【2】静止画、動画等の各種情報を一元的に可視化
検索結果の詳細情報としてテキストだけでなく、画像や動画も扱うことができるため、3軸モニタリング情報の相関関係、すなわち作業者が「いつ」「どこで」「なに」をしていたか、その時の栽培情報が「どうなっている」のかを視覚的に把握することができます。(【別紙】図4)

(2) 「3軸モニタリング統合表示システム」に期待できること
熟練者の作業を事細かにモニタリングし、作業を理解する上でより有効な方法(静止画や動画など)で記録したデータを表示することができるので、従来に比べて容易に且つスピーディな技能伝承の実現を可能とし、日本の農業の課題である後継者問題の解決に寄与します。
将来的には、本システムを活用し、蓄積した3軸モニタリング情報をビッグデータ解析し、その結果を用いることで、「生育環境」「生育状況」「農作業」の相関を解明し、効率的な栽培方法に関する知見の収集を行います。また、得られた知見を基に、次に起きる事象を予測し、必要な作業を提案できる、農作業支援ツールの開発などへの展開も検討しています。
また農業分野のみならず、特殊な技能を必要とする他業種にも応用、活用できると考えています。


3.「生育環境モニタリングシステム」について
(1) 特長
【1】20種類の生育環境情報、3次元の情報把握
従来の「農業経営支援システム」にて取得可能だった温度・湿度・CO2等の生育環境のほか、電気使用量等を含め、計20種類の項目を自動取得可能にしました。また、NTT西日本が提供する「3軸モニタリング統合表示システム」とデータ連携するため、新たにセンサに位置情報(X、Y、Z座標軸)を追加したことにより、3次元での情報把握が可能となりました。
なお、本実証試験では、実証区(栽培区)の8区画と育苗区の2区画の計10区画で約800の測定点数を5分毎に取得、管理しています。(【別紙】図5)

【2】多地点のモニタリング情報の表示機能
大規模な農業経営者に対し、複数の農場情報(生育環境)をクラウド上で一元管理し、区画毎に多点のモニタリング情報、生育環境の状態(正常、正常値の範囲外等)をわかりやすく表示する機能を追加しました。また、本実証試験では、区画毎に測定状況が把握できる画面とし、センサ等の機器の「正常・計測異常・閾値超え」の状態を視覚化しました。「生育環境モニタリングシステム」では、区画毎の24時間の推移データや必要な日時のデータをすぐに表示することで、作業の優先順位を判断することができるので、作業時間の短縮および緊急対応が可能となり、農場の栽培管理者の管理作業の省力化を図ることができます。(【別紙】図6、7)

(2) 生育環境モニタリングシステムに期待できること
生育環境の影響により生産物の品質・収量にバラつきが生じます。本実証試験では、栽培環境条件の異なる区画において、水平方向20点、それぞれ高さ方向4点を3次元で測定し、温熱環境の要因を把握することで、バラつきを削減する環境制御に活用していきます。
また、収量・品質(結果)との相関をデータ化することで、生育環境・経営情報※7による総合的な指標を導き出し、栽培目的別・施策別の評価への活用を進めていきます。
今後、多拠点の生育環境・生育状況の取得データをビッグデータ解析することで、環境評価・予測ツールを作成し、最適環境制御に活用していきます。(【別紙】図8)

※7 栽培工程で使用される電気・重油代等の支出と収量・品質(結果)から費用対効果といったような観点の情報。


4.プロジェクトの今後の展開について
本プロジェクトでは、計測した3軸モニタリング情報をビッグデータ解析することで、相関を明確にし、将来的には生育環境の分布予測や、省エネ・省資源・栽培目的に対応した最適環境制御、技能伝承と栽培作業支援が可能な統合型次世代農業システムを実現してまいります。
また2015年度末を目途とし、以下の取り組みを進めてまいります。

・東京大学では生育状況モニタリングの全自動化と、作業工程の自動認識の実現に向けて開発を進めることで、より正確で効率的な3軸モニタリング情報の蓄積の実現をめざします。
・鈴与グループでは、東京大学・茨城大学と連携し、高収量および高糖度トマトを安定的に栽培する技術の開発を進め、それらを実現するための作業手法、手順の確立をめざします。
・NTTファシリティーズは、計測データを基に、効率的な設備機器の配置、冷暖気流路、空調機温度設定などの最適化を図ることで、電気、重油使用量等のランニングコストを削減するための環境制御技術の開発をめざします。また、東京大学との連携により生育状況モニタリングシステムの開発をめざします。
・NTT西日本は、農作業の効率性向上と技能伝承の貢献に向け、農作業モニタリング情報と他の計測情報(生育環境、生育状況)との相関を明らかにするとともに、「3軸モニタリング統合表示システム」の直観的なGUIへの機能性向上をめざします。

<参考>2014年5月26日 鈴与商事ニュースリリース
ITを活用した次世代トマト施設栽培の大規模実証試験を開始
~IT融合による統合型次世代農業プロジェクトについて~
http://www.suzuyoshoji.co.jp/common/pdf/2014/0526.pdf


【別紙】
http://www.atpress.ne.jp/releases/57310/att_57310_1.pdf

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