Daiwa House PRESENTS 熊川哲也 K-BALLET TOKYO Autumn 2025 『ドン・キホーテ』開幕!!
Daiwa House PRESENTS 熊川哲也 K-BALLET TOKYO Autumn 2025『ドン・キホーテ』(主催:株式会社TBSテレビ)が、2025年9月26日に東京文化会館で開幕いたしました。
Kバレエのレパートリーの中でも特に人気の高い『ドン・キホーテ』は、初日マチネから熱気に包まれ、祝祭感に溢れた幸福なバレエが繰り広げられた。クラシック・バレエの公演で経験できる最も強烈で鮮やかな感動があり、ダンサーたちの見事な演技が観客を熱狂的に沸かせ、幕が進むごとに拍手も歓声も大きくなっていった。
キャストはカンパニーのオールスター。キトリ日高世菜はもはや「女神」と呼びたいオーラをまとう麗人プリマで、バレエの歴史を彩ってきたカリスマの一人に数えたくなる。ひとつひとつのポーズが高貴で優美。シルエットは毅然として、バジルとじゃれあうシーンでは色っぽさやユーモア・センスも感じさせる。相手役の石橋奨也はバジル初役で、高いジャンプと力強いステップ、氷上で踊っているかのような回転など見ごたえあり、歴代バジルの中でもかなり男性っぽくセクシーだった。日高&石橋ペアはスケールが大きく、リフトも高くて華やか。一切無駄のない日高の研ぎ澄まされた踊りが、石橋の堅実なサポートでより輝かしく見えた。
メルセデス木下乃泉とエスパーダ栗山廉も主役と双璧をなすペアで、木下は先日の昇格コンクールでファースト・ソリストに昇格した出世株。妖艶で大胆なメルセデスをリラックスした表情で妖艶に踊り、栗山のエスパーダもますますスタイリッシュに磨き込まれていた。エスパーダを中心とする闘牛士たちの踊りは火花が散る迫力で、この場面を見るたび「Kバレエの男性群舞は世界一だ!」と思う。闘牛士の一人、山田博貴はこの日のソワレでエスパーダを演じた。長身で華麗な踊りの田中大智も、闘牛士の踊りを始め色々な場面で魅力的だった。
ドン・キホーテ「名人」のニコライ・ヴィユウジャーニンは安定の名演技で、稽古場で見て驚いたが、彼は結構若いのだ。舞台では完璧な老騎士を演じる。哀し気な表情の騎士が舞台にいるだけで、シェイスクピア演劇の情景が立ち現れるような心地がする。彼の子分サンチョ・パンサは本元光。詰め物を入れ大きな身体で動くが、ずっと芝居をしていなければならないし、終盤近くでは皆にからかわれて運動量が凄まじいことになる。Kバレエのサンチョ・パンサは未来の大物がキャスティングされていると思う。
今回のキャストで一番気になっていたのは、実はガマーシュ(親が決めたキトリの婚約者)役で、初日はプリンシパルの堀内將平が、かぼちゃパンツとパラソル姿で、信じられないほど愉快にコミカルに演じきった。オペラグラスで観たら、特殊メイクで鼻の形も変えている。ガマーシュはキトリを追いかけながら様々な登場人物とバトルを繰り広げ、大活躍するので、この回はガマーシュだけ見ていても満足感があり、ついつい目で追ってしまうのだった。堀内は28日の公演ではバジルを踊った。
2幕のジプシーの野営地でのキトリとバジルのパ・ド・ドゥは、熊川版のオリジナルな見どころで、星空を背景に巨大な風車が置かれた幻想的な背景も美しい。1幕も2幕も美術が素晴らしい…と改めて見入っていたが、ドン・キホーテは舞台美術も衣裳もすべて熊川哲也氏のデザインなのだ。ストーリーテリングの才能と視覚的な美意識においても、桁外れのアーティストである。このセットで踊るダンサーは幸福だと思った。2幕にはいくつもの転換があり、森の妖精たちが可愛らしく踊るシーンも丁寧に作られていて、長尾美音の森の女王は、既に貫禄が感じられる完成度。長いソロが始まる前の、落ち着いた表情がいい。イタリアン・フェッテは目もくらむようで、技術面で相当水準が高い。長尾も10月公演でキトリを演じる。2幕はキューピッド辻梨花の愛らしい魅力も筆に尽くしがたい。
今回の『ドン・キホーテ』は特別な公演で、カンパニー発足以来芸術監督を務めていた熊川哲也氏を引き継いで、宮尾俊太郎氏がその責務を務める初めての公演だった。宮尾は熊川作品の極意を骨の髄まで知る人で、彼に監督を任せた熊川の器も凄いと思うが、立派に継承した宮尾も凄い。ダンサーたちと監督の距離が少し近くなった分、これから舞台にも色々な変化が見えてくるのかも知れない。
2幕後半から3幕にかけては、踊りまた踊りの競演で、まずバジルとエスパーダが鎬を削るような「踊り比べ」を魅せる。速さのあるテクニカルな踊りで、長身の美男子二人が交互に競い合う姿は、ぞくぞくするようだった。その後には、誰からもかまってもらえないガマーシュがドン・キホーテを相手にチャンバラを始める。感動→笑い→緊張→弛緩が繰り返されるので、まったく退屈することがない。死んだふりをしたバジルが周囲を悲しませた後、いたずらな表情で生き返る人気のシーンも良かった。
3幕は「これがフィナーレか!」と思う感動的な場面に拍手を送ると、まだまだ奥深いフィナーレがあり、どさくさに紛れてキトリの父は椅子に縛られ、バジルは「セヴィリアの理髪師」のフィガロのように床屋のエプロンをして彼のヒゲを剃ろうとする。全員の踊り、若者たちの祭りの世界から帰っていくドン・キホーテとサンチョ・パンサ…ラストまでカラフルな踊りと芝居がスピーディに展開し、熱狂の渦の中、客席から盛大な拍手が巻き起こった。
音楽は井田勝大指揮シアター オーケストラ トウキョウ。初日から絶好調で、ラスト近くのキトリのグランフェッテは、木管が魔法のような素早いフレーズを奏で、踊りの凄さにトッピングを加えていた。日本で唯一のバレエ団専属オーケストラで、Kバレエの公演を見るたび音楽の大切さを再認識する。オーケストラファンにも大いに聴かせたいクオリティだ。
熊川版のバレエはどこまでも「物語る」のだ。ヴェルディやワーグナーが「物語りたい!」と創作に人生を捧げたのと同じ情熱で、熊川バレエも全作品にオリジナルなアンダーラインを引いて、このカンパニーだけの特別な「語り」を創造する。物語る人の情熱の源にあるのは、巨大な愛に他ならない。ダンサー全員がカンパニーの宝物で、カーテンコールでは「今舞台にいる人たち」への感謝が込み上げた。全員の表現力、笑顔、活気、熱量…その総量は計測できないほどのエネルギーで、ホールは屋内にあるが、この空間にはもうひとつの太陽が輝いていたのだった。
■キャスト
キトリ:加瀬栞(イングリッシュ・ナショナル・バレエ リード・プリンシパル)
日高世菜/岩井優花/長尾美音
バジル:山本雅也/石橋奨也/堀内將平/武井隼人
※日高の「高」ははしごだか
日高世菜/石橋奨也(C)K-BALLET TOKYO
加瀬栞/山本雅也(C)K-BALLET TOKYO
岩井優花/堀内將平(C)K-BALLET TOKYO
【総監督】熊川哲也
熊川哲也 (C)Makoto Nakamori
【芸術監督】宮尾俊太郎
宮尾俊太郎
加瀬栞(C)Shoji Morozumi
日高世菜
岩井優花
長尾美音
山本雅也
石橋奨也
堀内將平
武井隼人
指揮 :井田勝大(9月26日~10月19日)/塚越恭平(10月25日・26日)
管弦楽:シアター オーケストラ トウキョウ
■公演概要■
Daiwa House PRESENTS
熊川哲也 K-BALLET TOKYO Autumn 2025
『ドン・キホーテ』
【日/会場】
2025年9月26日(金)~28日(日) 東京文化会館 大ホール
2025年10月18日(土)~26日(日) Bunkamuraオーチャードホール
【チケット料金(税込)】
S席18,000円/A席14,000円/B席10,000円/C席8,000円/D席6,000円
A親子席18,000円/学生券4,500円/Kプラチナシート 22,000円
※A親子席…大人1名+こども1名(5歳以上小学6年生以下)/A席エリア
※学生券…中学生以上25歳以下/当日学生証を提示の上引き換え/席位置未定
※D席…東京文化会館 大ホールのみ
※Kプラチナシート…主演ダンサー直筆サイン入りフォトカード付。
(東京文化会館 大ホール)1階席:1列・20列
(Bunkamuraオーチャードホール)1階席:販売座席の最前1・2列目、20列
【チケット販売】
TBSチケット、チケットスペース、チケットぴあ、イープラス、ローソンチケット、劇場
ほか
【お問い合わせ】
チケットスペース:03-3234-9999
公式HP : https://www.k-ballet.co.jp/performance/2025donquixote.html
主催 : TBS
特別協賛 : 大和ハウス工業株式会社
協賛 : 株式会社ヤマノホールディングス
オフィシャルエアライン: ANA
協力 : Bunkamura
後援 : TBSラジオ
制作 : K-BALLET/TBS
公式ウェブサイト : https://www.k-ballet.co.jp/
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