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    一般社団法人 日本性機能学会

    ~ 早漏の実態が日本初の大規模調査で明らかに ~  日本人男性の約4人に1人が『3分以内』の早漏  早漏の最大要因は「勃起障害(ED)」  調査結果をまとめた論文が国際学術誌に正式掲載

    調査・報告
    2025年9月26日 10:30

    一般社団法人 日本性機能学会(理事長 佐々木春明:昭和医科大学藤が丘病院 泌尿器科 教授)は臨床研究促進委員会(委員長 辻村晃:順天堂大学附属浦安病院 泌尿器科 教授)が実施した全国調査の結果をまとめた論文が国際学術誌 The World Journal of Men's Health に正式に掲載されたことを報告いたします。

    本調査は、20~79歳の日本人男性37,485人に対し調査を実施。その回答を解析し日本で初めて早漏(Premature Ejaculation, PE)の実態を明らかにしたものとなります。



    《調査の背景》

    男性の性機能障害の中で、勃起障害(ED)については全国調査により約1,400万人の男性が挿入不可能なEDに罹患していることが報告されています。しかし早漏(PE)については日本国内で大規模な疫学調査が一度も行われていませんでした。

    一方で海外では、早漏は最も一般的な男性の性の悩みの一つとして報告され、有病率は3~30%以上と幅があります。しかし、診断基準や調査方法が統一されていないため、信頼性のあるデータが不足していました。

    こうした背景を受け、日本性機能学会は国際的に認められた診断基準(ISSM基準)と信頼性のある質問票(PEDTなど)を用いて、日本人男性における早漏の実態を科学的に明らかにすることを目的に本調査を実施しました。



    《早漏(PE)とは》

    早漏(Premature Ejaculation, PE)は、

    (1) 性交時に望まないほど早く射精してしまう(時間の指標)

    (2) 自分で射精をコントロールできない(コントロールの可否)

    (3) 本人に強いストレスや不満をもたらし、パートナーとの関係にもネガティブな影響を与える(精神的苦痛)

    の3つの要素を総合し診断されます。

    また早漏には2つの種類があり、

    ・先天性早漏(Lifelong PE, LPE):性交開始から常に、またはほぼ常に1分以内に射精してしまう

    ・後天性早漏(Acquired PE, APE):以前は問題なかったのに、ある時期から射精までの時間が3分以下に短縮してしまう

    とされています。


    日本では「恥ずかしい」「人に言えない」と感じる男性が多く、羞恥心やスティグマによって医療機関への相談が極めて少ないのが現状です。そのため、悩んでいる人は多いのに、治療を受ける人はごくわずかという乖離が生じています。

    こうした状況は、性生活の満足度低下や夫婦関係の悪化につながり、さらには少子化など社会的課題にも影響を及ぼす可能性があり、個人の問題にとどまらない重要なテーマです。



    《主な調査結果》

    ■約4人に1人(910万人)が早漏で悩んでいる

    20歳から79歳までの日本人男性を対象としたインターネット調査に基づいて、自己申告による早漏の有病率を評価しました。

    その結果、性交体験が確認された5,331人において、早漏で悩んでいる人が23.4%いるとの結果になりました。

    これを国勢調査の日本人男性の人口にあてはめると約910万人が早漏で悩んでいることになります。

    グラフ_早漏の悩み

    グラフ_早漏の悩み



    ■20代は個人差大きく、中年層で安定傾向

    20代では射精時間に大きな個人差がみられました。20-24歳では「挿入前から3分以下」が30%、25-29歳でも17.6%を占める一方で、「5分を超える」層が50〜65%と高く、短時間と長時間に二極化している傾向が明らかとなりました。

    年代が上がると「3分を超えて5分以下」の割合が徐々に増え、30〜50代では比較的安定した分布を示しています。特にこの世代では「3〜5分」の時間帯が2割前後と一定の割合を占めており安定した結果となっています。

    60〜70代前半では「3〜5分」の割合がさらに高くなる一方で、「5分を超える」層は加齢とともに減少し、75〜79歳では48%に低下しました。このことは、高齢層では射精時間が中間帯に収束する傾向を示唆しています。

    また、早漏(PE)の国際的基準である「挿入から1〜3分以下」に該当する割合は、20代で約30%、30代で約20%と加齢とともに減少しており、年齢による射精コントロール能力の向上が示されています。本結果は、各年代に応じた適切な性的健康管理の重要性を浮き彫りにしています。

    グラフ_射精時間

    グラフ_射精時間



    ■射精時間の長短と悩みの程度は必ずしも一致せず

    射精時間が3分以下の早漏に該当する回答者のうち、13.4%は「悩みなし」と回答しています。一方、射精時間が3分を超える回答者の中でも12.1%が早漏への悩みを抱えており、客観的な時間と主観的な悩みが必ずしも一致しないことが判明しました。全体では63.2%が「3分を超えて悩みなし」となっており、半数以上の男性は射精時間について特に問題を感じていないことも明らかになっています。

    早漏の悩みは単純に時間だけでなく、パートナーとの関係性や個人の満足度、心理的要因など複合的な要素に影響されます。早漏治療においては時間的改善だけでなく、総合的なアプローチも重要です。

    グラフ_時間と悩み

    グラフ_時間と悩み


    グラフ_時間と悩み_年齢別

    グラフ_時間と悩み_年齢別

    また年齢別の回答をみると、興味深いことに射精時間が3分を超えていても悩みを抱える割合は若年層で高く、20代前半では18.6%、20代後半では20.7%に達しています。これは、若い世代では時間の長短に関わらず、性的パフォーマンスへの不安や期待値の高さが影響していることを示唆しています。

    一方、年代が上がるにつれて早漏への悩みは大幅に減少し、75-79歳では全体の約10%程度まで低下します。これは加齢による射精コントロール能力の向上に加え、性的な期待値や価値観の変化、パートナーシップの成熟なども関係していると考えられ、早漏治療においては年代に応じたアプローチの必要性も示しています。



    ■早漏治療への関心は高いものの実際の受診率は低調

    グラフ_治療希望

    グラフ_治療希望

    早漏治療に対する意識と行動の間には大きなギャップが存在することが明らかになりました。調査対象者のうち51.0%が「早漏の治療をしたいと思う」と回答し、治療への関心の高さを示しています。

    しかしながら、実際に早漏治療を受けた経験があるのはわずか4.8%にとどまり、95.2%は治療経験がないという結果となりました。これは治療を希望する人の約11人に1人しか実際の治療行動に移していないことを意味しており、治療希望と実際の受診行動の間に大きな乖離があることが浮き彫りになっています。

    この現象の背景には、早漏治療に対する恥ずかしさや抵抗感、治療方法への理解不足、適切な治療選択肢が少ない、医療機関へのアクセスの問題などが考えられます。早漏で悩む男性が適切な治療を受けられるよう、治療に関する正しい情報提供と受診しやすい環境整備が急務であることを示す結果となりました。



    ■早漏の最大要因は「勃起障害(ED)」

    今回の調査では、勃起障害(ED)が全タイプの早漏で最大の関連要因となっていることも特定されました。

    また早漏のタイプによって要因が大きく異なることも判明いたしました。先天性早漏(Lifelong PE, LPE)では精神的薬物の使用が主要因となる一方、後天性早漏(Acquired PE, APE)では心血管疾患や泌尿器症状、精神的疾患が深く関与していることがわかりました。

    特に後天性早漏は加齢とともに急増し、身体機能の低下が直接影響することが明らかになりました。「早漏とEDは密接に関連し、タイプ別の治療アプローチが重要」であることが示唆されています。治療を望む男性の半数が実際には受診していない現状だけでなく、早漏の裏側にある疾患にも目を向け適切な治療選択の提供と、社会的認知の向上が急務となります。



    ■今回の調査を通じて

    本調査は、日本人男性の性機能に関する初めての全国的な実態把握であり、早漏が多くの人にとって深刻な悩みである一方、受診や治療につながっていない現状を明らかにしました。羞恥心やスティグマにより、相談できずに孤立する男性が多いことは、性生活の満足度や夫婦関係の悪化、さらには少子化といった社会的課題にもつながりかねません。性機能の問題は個人の問題にとどまらず、社会全体で向き合うべきテーマです。今後は学会として、啓発活動や情報発信を強化し、誰もが安心して相談・治療を受けられる環境づくりを進めてまいります。



    《調査の詳細》

    「性機能障害の全国実態調査」

    日本の性機能についての学術的な大規模調査がおこなわれておらず、日本の現状を把握することができませんでした。男性更年期や男性妊活の認知が進む中、根本である性機能についての実態を把握するべく44項目の質問に回答いただく形で疫学調査を実施いたしました。


    調査期間   :2023年5月29日(月)~6月24日(土)

    調査方法   :調査会社(株式会社マクロミル)によるインターネット調査

    対象者    :全国の20歳から79歳の日本人男性37,485人

            ※各年代において総務省統計局国勢調査の人口比率に基づき、年代、地域性を考慮し実施

    回収サンプル数:6,228人



    《論文》

    掲載ジャーナル:The World Journal of Men's Health( https://wjmh.org/ )

    タイトル:Prevalence and Factors Associated with Premature Ejaculation in Japan: First Nationwide Cross-Sectional Survey



    《一般社団法人 日本性機能学会について》

    性機能に関連する基礎的及び臨床的研究の発展,進歩に貢献し,会員相互の自由で幅広い意見交換、国内外の学会を通じての情報交換や交流などを行い,学術の発展と人類の健康・福祉に寄与することを目的としています。


    【概要】

    名称    : 一般社団法人 日本性機能学会

    事務局所在地: 東京都大田区大森西6-11-1 東邦大医学部 泌尿器科学講座 内

    理事長   : 佐々木春明(昭和医科大学藤が丘病院 泌尿器科 教授)

    設立    : 1978年(インポテンス研究会として発足)

    事業内容  : 学術集会の開催、学会誌の発行、各種ガイドラインの作製、学会自主研究の導入など

    HP     : https://www.jssm.info/

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