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    雪印メグミルク株式会社

    【雪印メグミルク】 《第37回 日本分子生物学会年会》における研究発表

    その他
    2014年11月20日 15:00

    雪印メグミルク株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:中野 吉晴)は、コーポレートスローガン「未来は、ミルクの中にある。」に基づき、「おいしさ」と「健康」を追求するための研究を行っております。

    これらの研究で得られた乳酸菌の健康機能に関する新たな知見について、11月25日(火)より神奈川県横浜市で開催される《 第37回 日本分子生物学会年会》において下記のとおり研究発表いたします。


    ◆研究発表概要
    1.演題名:線虫で寿命延長効果を示すLactobacillus gasseri SBT2055の作用因子の探索
    発表者:○小畠英史1、中川久子2、細谷知広1、守屋智博1、酒井史彦1、宮崎忠昭2  ※○は演者
    1. 雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所
    2. 北海道大学遺伝子病制御研究所 プロバイオティクス・イムノロジー研究部門
    発表日:11月25日(火)13:48~14:03(口頭発表)16:15~19:15(ポスター発表)

    2.演題名:Lactobacillus helveticus SBT2171によるJNKシグナルを介した免疫細胞の増殖抑制およびサイトカイン産生抑制
    発表者:○細谷知広1、山下舞亜1、酒井史彦1、浮辺健1、上西寛司1、守屋智博1、門岡幸男1、
    中川久子2、宮崎忠昭2 ※○は演者
    1. 雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所
    2.北海道大学遺伝子病制御研究所 プロバイオティクス・イムノロジー研究部門
    発表日:11月25日(火)16:15~19:15(ポスター発表)

    3.演題名:Lactobacillus helveticus SBT2171投与によるコラーゲン誘導性関節炎の緩和効果
    発表者:○山下舞亜1、酒井史彦1、守屋智博1、細谷知広1、中川久子2、宮崎忠昭2  ※○は演者
    1. 雪印メグミルク株式会社 ミルクサイエンス研究所
    2.北海道大学遺伝子病制御研究所 プロバイオティクス・イムノロジー研究部門
    発表日:11月25日(火)16:15~19:15(ポスター発表)


    ◆研究発表内容の要約

    1.線虫で寿命延長効果を示すLactobacillus gasseri SBT2055の作用因子の探索

    これまでに当社では、当社保有の乳酸菌Lactobacillus gasseri SBT2055(ガセリ菌SP株)を線虫※1に投与することで、寿命を延長させる効果があることを明らかにしました。今回は、その作用メカニズムを明らかにするために、ガセリ菌SP株投与による線虫の酸化ストレス※2関連遺伝子の発現変化およびミトコンドリア※3機能の制御について解析しました。

    その結果、ガセリ菌SP株を投与した線虫では、酸化ストレス抵抗性に関与する遺伝子の発現が促進されていました。また、ミトコンドリア機能の指標となる体内のATP量およびミトコンドリアの膜電位※4は、線虫の老化の進行に伴い低下しましたが、ガセリ菌SP株を投与した線虫ではそれらの低下が有意に抑制されました。これらの結果から、ガセリ菌SP株による線虫の寿命延長には、酸化ストレス抵抗性の制御と加齢に伴うミトコンドリア機能低下の抑制が関与していると考えられます。

    一方、ガセリ菌SP株による寿命延長効果が哺乳類でも認められるか否かについても、培養細胞を用いて検討しました。マウス由来の線維芽細胞株※5に薬剤で酸化ストレスを与えると細胞の生存率が低下しましたが、そこにガセリ菌SP株を添加して培養すると生存率の低下が抑制されました。

    この結果から、線虫の場合と同様にガセリ菌SP株は哺乳類の細胞においても酸化ストレス抵抗性を向上させることが示唆されました。

    今後は、ミトコンドリア機能低下の抑制に関しても、哺乳類細胞での検証を進めて参ります。

    ※1 線虫:体長約1mm、寿命3週間程度のモデル動物。1個体1000個ほどの細胞数でありながら、消化器官や神経といった動物の基本的な構造を有している。1998年に全ゲノム配列が解読され、発生、細胞分化、細胞死、神経、老化など多くの分野で研究に用いられている。
    ※2 酸化ストレス:生体内での酸化と抗酸化のバランスが崩れて酸化に傾くことによって生じる、生体への影響のこと。酸化ストレスが高い状態は、生活習慣病や老化の進行と深く関与し、様々な疾病の原因となることが知られている。
    ※3 ミトコンドリア:細胞内に存在する小器官であり、酸素を使ってエネルギー(ATP)を作り出す主要な場となっている。このエネルギー生産時に活性酸素が生成され、ミトコンドリア自体の機能低下とそれに伴う様々な疾病の原因となると考えられている。
    ※4 膜電位: 細胞の内外に存在する電位の差のこと。すべての細胞は細胞膜をはさんで細胞の中と外とでイオンの組成が異なっており、この電荷を持つイオンの分布の差が、電位の差をもたらす。この膜電位の低下は、老化と密接に関係している。
    ※5 線維芽細胞株: 結合組織を構成する細胞の1つ。比較的分裂周期が早く、特別に処理をしないで同じ容器の中で他の細胞より大量に増殖するため、モデル細胞として広く用いられている。


    2. Lactobacillus helveticus SBT2171によるJNKシグナルを介した免疫細胞の増殖抑制およびサイトカイン産生抑制

    これまでに当社は、乳酸菌Lactobacillus helveticus SBT2171(以下、ヘルベティカス菌)が免疫細胞の増殖と炎症性サイトカイン※1の産生を抑制することで、抗炎症作用を示すことを明らかにしてきました。そこで、本研究では、ヘルベティカス菌による免疫細胞の増殖抑制作用について、その作用メカニズムを細胞実験によって解析しました。

    ヘルベティカス菌は、マウス由来のB細胞およびT細胞の増殖を抑制するとともに、ヒト由来のB細胞株およびT細胞株の増殖も抑制しました。B細胞株を用いて細胞周期※2を解析した結果、ヘルベティカス菌は細胞周期の進行を遅らせることで細胞増殖を抑制している可能性が示唆されました。

    さらに詳細に調べた結果、ヘルベティカス菌は、細胞周期の進行に必要な細胞内シグナル伝達機構であるJNKシグナルを抑制していることが判明しました。

    以上の結果より、ヘルベティカス菌は、マウスおよびヒトの免疫細胞に直接作用して細胞周期の進行に必要なJNKシグナルを抑制することで、細胞増殖およびサイトカイン産生を抑制することが明らかとなりました。

    ※1 炎症性サイトカイン:免疫細胞には、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージなど多くの種類があり、それらの免疫細胞がお互いに情報伝達を行うためのタンパク質の総称をサイトカインという。その中でも炎症を促進する働きを有するサイトカインは、炎症性サイトカインと呼ばれている。
    ※2 細胞周期: 1つの細胞が2つの細胞に分裂して増殖する周期的な過程のこと。


    3.Lactobacillus helveticus SBT2171投与によるコラーゲン誘導性関節炎の緩和効果

    これまでに当社では、チーズの製造に用いられる当社保有の乳酸菌Lactobacillus helveticus SBT2171(以下、ヘルベティカス菌)が、免疫細胞の増殖と炎症性サイトカイン※1の産生を抑制することを細胞実験において明らかにしてきました。本研究では、マウスのコラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデル※2を用いて、ヘルベティカス菌が実際にマウスの慢性炎症を軽減するか否かを検証しました。

    CIAモデルマウスにヘルベティカス菌を腹腔内投与した結果、関節炎の発症率と臨床スコア※3が低下しました。また、血中の抗II型コラーゲン抗体価の上昇が関節炎を悪化させる原因となることが知られていますが、ヘルベティカス菌の投与により抗体価の上昇は抑制されました。さらに、ヘルベティカス菌投与は、関節炎の発症に伴うリンパ節でのT細胞数とB細胞数の増加を抑制しました。

    以上の結果から、ヘルベティカス菌の投与により関節炎症状を軽減させる作用が認められ、そこには、ヘルベティカス菌による抗体価上昇の抑制効果とT細胞とB細胞の増殖抑制効果が関与している可能性が示唆されました。

    ※1 炎症性サイトカイン: 免疫細胞には、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージなど多くの種類があり、それらの免疫細胞がお互いに情報伝達を行うためのタンパク質の総称をサイトカインという。その中でも炎症を促進する働きを有するサイトカインは、炎症性サイトカインと呼ばれている。
    ※2 コラーゲン誘導性関節炎(CIA)モデル:ヒトの関節リウマチの動物実験モデル。
    ※3 臨床スコア:各種疾病に対する症状を点数化して評価する方法


    ◆学会開催概要
    第37回 日本分子生物学会年会
    会期 平成26年11月25日(火)~27日(木)
    会場 パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)

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