世界の慢性咳嗽の市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の慢性咳嗽の市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Chronic Cough Epidemiology Forecast; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、慢性咳嗽(Chronic Cough)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。慢性咳嗽は世界各地で幅広い年齢層にみられる呼吸器症状であり、単なる一過性の咳ではなく、長期間持続することで医療資源の利用や生活の質に大きな影響を及ぼす臨床上重要な状態と位置づけられている。Hazim Abozidらの2024年の報告によると、世界の有病率は約2~18%と幅広く、地域や対象集団によって大きな差がある。調査会社は、慢性咳嗽の病態理解、診断精度、長期管理の改善を目的とした研究が今後も進展し、診断患者数や治療対象患者の把握が進むとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病率、発症率、年齢、性別、病型、診断患者数などの疫学動向を分析している。
慢性咳嗽は、成人では一般に8週間を超えて持続する咳と定義され、呼吸器診療を受診する主要な理由の一つである。原因は単一ではなく、咳喘息、胃食道逆流症、慢性気管支炎など、複数の基礎疾患によって発症する。また、明確な原因疾患を十分に治療しても咳が持続する患者や、検査を行っても原因を特定できない患者では、咳過敏症候群が関与している可能性がある。これは気道に分布する神経が過敏となり、冷気、花粉、ほこり、大気汚染物質など、通常であれば強い咳を起こさない刺激に対して過剰に反応する状態である。
慢性咳嗽による負担は呼吸器症状だけにとどまらない。夜間の咳による睡眠障害、慢性的な疲労、胸部不快感や疼痛、会話中の咳、公共の場で咳をすることへの羞恥心などによって、患者の生活の質が大きく低下する場合がある。症状が長期間持続し、原因が特定できない場合には、医療機関を繰り返し受診したり、複数の診療科を受診したりすることもあり、患者本人と医療システムの双方に負担をもたらす。
疫学的には、Xiaoxuan Huらの2025年の報告で、世界の成人における慢性咳嗽有病率は約9~10%と推定されている。一方、Mohamed S. Alhajjajらの2024年の報告では、地域別の有病率が3~18%とされており、かなり大きな地域差が存在する。この差には、喫煙率、大気汚染、アレルゲン曝露、呼吸器疾患の有病率、医療アクセス、診断基準などが影響していると考えられる。したがって、慢性咳嗽の市場規模や患者数を国際比較する際には、単純に一つの有病率をすべての地域に当てはめるのではなく、地域ごとの環境・生活習慣・基礎疾患構造を考慮する必要がある。
発症率については、Xiaoxuan Huらの2025年の報告によると、年間100人年あたり約1.2~5.7例の範囲とされ、特に45歳以上の成人で新規発症が多い。つまり、慢性咳嗽は既存患者が長期間症状を抱えるだけでなく、毎年一定数の新規患者が発生する状態であり、人口高齢化が進む国では患者数が継続的に増える可能性がある。
年齢は重要な疫学的要因である。Mohamed S. Alhajjajらの2024年の報告では、65歳以上の成人は若年層と比べて慢性咳嗽を有するリスクが2倍以上高いとされる。高齢者では、慢性閉塞性肺疾患、喘息、胃食道逆流症、心肺疾患などの併存疾患が増えることに加え、加齢による呼吸機能の低下や薬剤使用の増加なども慢性咳嗽の発症に影響すると考えられる。そのため、高齢化は2026~2035年の慢性咳嗽患者数を押し上げる重要な人口動態要因となる。
性別では、女性でやや有病率が高い傾向がみられる。Phung C. Onの2022年の報告では、慢性咳嗽の有病率は女性5.2%、男性4.7%であった。この差には、女性の方が咳反射の感受性が高い可能性や、気道・神経系の解剖学的・生理学的違いが関与すると考えられている。また、女性は慢性咳嗽に伴う合併症や生活上の問題について医療機関を受診する頻度が高い可能性も指摘されており、実際の生物学的差と受診行動の差の双方が診断患者数に反映されている可能性がある。
国別では、米国における慢性咳嗽の負担が明確に示されている。Eli O. Meltzerらの2021年の報告によると、米国成人における12か月有病率は約5.0%で、患者数に換算すると約1,230万人に相当する。特に女性や高齢者で有病率が高く、全国的に非常に大きな患者集団を形成している。
英国でもほぼ同程度の負担が確認されている。Lorcan McGarveyらの2023年の調査では、15,000人のうち715人が慢性咳嗽を有しており、12か月有病率は4.9%、生涯有病率は6.2%であった。特に高齢者や喫煙歴のある人で発生が多かった。米国と英国で12か月有病率が約5%前後と近いことから、先進国の一般成人集団では慢性咳嗽が数%規模で持続的に存在することが示唆される。
喫煙歴は重要な関連因子の一つであり、特に慢性気管支炎やCOPDを背景とする患者では慢性咳嗽が生じやすい。一方、すべての慢性咳嗽患者が喫煙者というわけではなく、非喫煙者でも咳喘息、胃食道逆流症、咳過敏症候群などを背景に症状が続くことがある。したがって、「慢性咳嗽=喫煙関連疾患」と単純化することはできず、原因別に患者を層別化することが重要である。
市場・疫学上の大きな課題は、慢性咳嗽が症状ベースの病態であり、原因が多岐にわたることである。同じ8週間以上の咳でも、喘息、逆流、慢性気管支炎、薬剤、感染後、咳過敏症候群など背景が異なり、治療反応も患者ごとに大きく異なる。そのため、診断患者数は「慢性咳嗽」という症状を持つ人数だけでなく、どの患者が医療機関を受診し、適切に評価され、原因別に診断されるかによって左右される。
また、慢性咳嗽には難治性慢性咳嗽や原因不明慢性咳嗽という重要な患者層が存在する。喘息や胃食道逆流症など、考えられる原因を治療しても咳が続く場合や、十分な検査を行っても原因を特定できない場合、患者は長期にわたって症状を抱えることになる。この患者群は既存治療への反応が不十分であるため、アンメットニーズが特に大きく、新規治療開発の主要対象となる。
治療の基本は、まず慢性咳嗽の原因を特定し、その原因疾患を治療することである。喘息や咳喘息が原因の場合には吸入コルチコステロイドが使用される。気道炎症を抑えることで咳を軽減することを目的とし、必要に応じて気管支拡張薬などを併用する場合もある。
胃食道逆流症に関連する慢性咳嗽では、胃酸分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬などが使用される。胃内容物の逆流による食道や咽喉頭への刺激を抑えることで咳を改善することを狙う。ただし、慢性咳嗽患者すべてに逆流治療が有効なわけではないため、症状や検査所見を踏まえて適切に患者を選択する必要がある。
慢性気管支炎やその他の気道疾患に伴う咳では、気管支拡張薬などが用いられることがある。このように、標準治療は「咳そのもの」を直接抑えるというより、咳を引き起こしている背景疾患を治療することが中心となる。
一方、原因疾患への標準治療を行っても症状が続く難治性慢性咳嗽では、神経調節薬が用いられることがある。代表的にはガバペンチンやアミトリプチリンなどがあり、過敏になった咳反射の神経回路を抑制することで症状を軽減することを目的とする。このアプローチは、慢性咳嗽を単なる気道炎症ではなく「神経過敏」の側面を持つ疾患として捉える考え方を反映している。
非薬物療法としては、行動的咳抑制療法や言語聴覚療法が使用される場合がある。患者が咳を誘発する感覚を認識し、呼吸法や発声法などを用いて咳反射を抑制する方法を学ぶことで、症状の頻度や強さを減らすことを目指す。特に咳過敏症候群や難治性慢性咳嗽では、こうした行動療法が薬物療法と組み合わせて用いられることがある。
今後の治療開発で特に注目されているのが、咳過敏に関与する神経経路を直接標的とする薬剤である。提示された資料では具体的な製品名や臨床試験成績までは示されていないが、神経性の咳反射メカニズムを抑える治療の開発が進められている。これは、従来治療では十分な改善が得られない難治性または原因不明慢性咳嗽患者に対して、疾患機序に基づいた新しい治療を提供することを目的としている。
市場の観点では、この難治性・原因不明慢性咳嗽患者群が重要である。一般の慢性咳嗽患者は原因疾患の治療によって改善する可能性がある一方、治療抵抗性患者では症状が長期化し、医療機関への反復受診や複数薬剤の使用が必要になる。そのため、患者数全体に占める割合が限定的であっても、一人当たりの治療ニーズは大きく、新規薬剤の主要な市場対象となり得る。
全体として本レポートは、慢性咳嗽を「世界の成人の約9~10%に影響し得る、原因が多様で、特に高齢者や女性に多く、生活の質を大きく損なう持続性呼吸器症状」と位置づけている。地域によって有病率は3~18%、あるいは2~18%と大きく変動し、発症率は100人年あたり約1.2~5.7例とされる。65歳以上では若年層の2倍以上のリスクがあり、女性でもわずかに高い有病率がみられる。
米国では12か月有病率約5%、約1,230万人、英国でも12か月有病率4.9%、生涯有病率6.2%とされ、先進国でも相当な患者集団が存在する。したがって、慢性咳嗽は必ずしも重篤な死亡原因ではないものの、患者数が多く、長期的な生活の質低下や医療利用を通じて大きな社会的・経済的負担をもたらす疾患領域である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、人口高齢化、喫煙や大気汚染などの環境因子、喘息・COPD・胃食道逆流症などの基礎疾患負担、そして慢性咳嗽そのものへの臨床認知の向上が主要な変動要因となる。特に高齢者人口が増えることで潜在患者数が拡大する一方、診断アルゴリズムや専門外来が整備されることで、これまで単に「長引く咳」として扱われていた患者が慢性咳嗽として体系的に診断されるようになる可能性がある。
したがって、今後の慢性咳嗽管理における中心的課題は、8週間以上続く咳を早期に認識すること、喘息、逆流、慢性気管支炎などの原因を適切に鑑別すること、標準治療に反応しない難治性・原因不明慢性咳嗽を明確に特定すること、そして咳過敏を標的とした神経調節治療や新規薬剤を適切に導入することにある。2026~2035年は、慢性咳嗽を単なる「症状」として処理する段階から、咳過敏症候群を含む独立した臨床疾患として病態を理解し、より個別化された長期管理を行う方向へ進むことが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
慢性咳嗽市場概要(8主要市場)
3.1 慢性咳嗽市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 慢性咳嗽市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
慢性咳嗽疫学概要(8主要市場)
4.1 慢性咳嗽疫学状況(2019年~2025年)
4.2 慢性咳嗽疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 慢性咳嗽の種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 慢性咳嗽の診断済み有病患者数
7.4 種類別の慢性咳嗽患者数
7.5 性別別の慢性咳嗽患者数
7.6 年齢別の慢性咳嗽患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における慢性咳嗽の診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の慢性咳嗽患者数
8.4 米国における性別別の慢性咳嗽患者数
8.5 米国における年齢別の慢性咳嗽患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における慢性咳嗽の診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の慢性咳嗽患者数
9.4 英国における性別別の慢性咳嗽患者数
9.5 英国における年齢別の慢性咳嗽患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける慢性咳嗽の診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の慢性咳嗽患者数
10.4 ドイツにおける性別別の慢性咳嗽患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の慢性咳嗽患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける慢性咳嗽の診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の慢性咳嗽患者数
11.4 フランスにおける性別別の慢性咳嗽患者数
11.5 フランスにおける年齢別の慢性咳嗽患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける慢性咳嗽の診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の慢性咳嗽患者数
12.4 イタリアにおける性別別の慢性咳嗽患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の慢性咳嗽患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける慢性咳嗽の診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の慢性咳嗽患者数
13.4 スペインにおける性別別の慢性咳嗽患者数
13.5 スペインにおける年齢別の慢性咳嗽患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における慢性咳嗽の診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の慢性咳嗽患者数
14.4 日本における性別別の慢性咳嗽患者数
14.5 日本における年齢別の慢性咳嗽患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける慢性咳嗽の診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の慢性咳嗽患者数
15.4 インドにおける性別別の慢性咳嗽患者数
15.5 インドにおける年齢別の慢性咳嗽患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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