株式会社ミロク情報サービス

    【プレスセミナー開催レポート】課税最低限のさらなる引上げや法人向け租税特別措置の見直しなど令和8年度税制改正が目指すもの

    ~税務のエキスパートが中小企業や会社員の立場から税制改正を独自に解説~

    その他
    2026年2月3日 14:30

    財務・会計システムおよび経営情報サービスを開発・販売する株式会社ミロク情報サービス(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:是枝周樹、以下「MJS」)は、1月23日(金)、日本税理士会連合会常務理事調査研究部長等を歴任し、「MJS税経システム研究所」税務システム研究会の顧問を務める植田 卓(うえだ たかし)氏を招き、法人や個人へのアドバイスを行っている税理士の立場から、令和8年度税制改正大綱の各ポイントと今後の流れについて、講演を行いました。

    なお、MJSでは、全国の会計事務所様を対象に、対面やオンラインにて令和8年度税制改正の概要解説セミナーを2月以降も開催予定です。

    開催概要
    タイトル:課税最低限のさらなる引上げや法人向け租税特別措置の見直しなど令和8年度税制改正が
         目指すもの
         ~税務のエキスパートが中小企業や会社員の立場から税制改正を独自に解説~
    日程  :2026年1月23日(金)13:30~15:00
    内容  :①課税最低限のさらなる引上げ
         ②住宅ローン控除の見直し
         ③法人向け租税特別措置の見直し
         ④今後の税制改正の方向性
    講師  :植田 卓
         (MJS税経システム研究所 税務システム研究会 顧問/税理士/立命館大学客員教授/
         植田会計事務所 所長)

    講演より一部紹介
    今回の改正の特徴は、前年の内容を即座に上書きするような朝令暮改的臨機応変な内容である点です。その背景には、まず第1に今回の衆議院解散とも関係あるかと思うのですが、自民党政権の政権基盤の弱さなどの政治的要因、第2に高市首相の“強い日本”に代表される積極的な姿勢、第3に自民党税制調査会のメンバーの一新などがあるのではないかと推測します。

    ■ 基礎控除と給与所得控除の改正等

    具体的な改正点
     令和8年、9年分について、課税最低限は給与収入に換算して、基礎控除62万円、基礎控除の加算額42万円、給与所得控除の最低保障額74万円の合計178万円になり、令和6年12月11日の三党(自民、公明、国民)合意による金額が実現されたことになります。

     また、今回の改正では、本人だけでなく、配偶者や扶養親族に関する「壁」も引き上がります。具体的には、配偶者は169万円まで、一般の扶養親族は136万円まで、特定親族(19歳〜23歳未満の大学生世代)は159万円までとそれぞれ負担軽減や控除適用の範囲が広がります。パートやアルバイトで働く学生や主婦、低所得層の手取り額が直接的に増加します。年収が103万円を超えないように労働時間を抑制していた層が、より長い時間働けるようになるでしょう。

     一方、住民税の基礎控除は、今回の所得税の引き上げには連動せず、令和7年改正でも増額されず43万円のまま据え置かれる方針です。住民税は「住民サービスの財源」という性質があるためですが、所得税が非課税になっても住民税は課税されるという点に注意が必要です。

    (講演資料より抜粋)
    (講演資料より抜粋)

    ■ 住宅ローン控除の改正

    改正後の借入限度額は、改正前の令和6年引下げ後の金額を引き継いでおりますが、対象となる新築住宅は、「長期優良住宅・低炭素住宅」と「ZEH水準省エネ住宅」が基本となり、「省エネ基準適合住宅」は令和9年末までに建築確認を受けたものに限られるなど、高い省エネ性能を持つ住宅への重点化が進んでいます。また、令和10年度以降入居分から災害レッドゾーン内での新築住宅については、住宅ローン控除の適用ができなくなりました。

     一方、既存住宅については、「長期優良住宅・低炭素住宅」「ZEH水準省エネ住宅」「省エネ基準適合住宅」に該当しない住宅も引き続き対象になります。

     住宅ローンの控除率は、住宅ローンの金利が下がったことを理由に令和4年度改正において1%から0.7%に引き下げられた経緯がありますが、金利が上昇傾向にある中では今後見直しが必要ではないでしょうか。

    ■ NISAの拡充

    0歳から17歳の未成年者も「積み立て投資枠」の対象となり、年間60万円(総額600万円)までの非課税運用が可能になります。これは令和8年3月31日をもって廃止される教育資金一括贈与の非課税措置の特例の代替手段としての側面もあるかと思います。

     子の年齢が12歳になった後は、子の同意を得た場合のみ、親権者等による払出しが可能とされ、子の年齢が18歳に達した際には、その残高は18歳以上向けの制度に移行されます。

    ■ 資産課税(貸付用不動産の評価方法の見直し)

    ― 一棟賃貸マンション ―
     賃貸用マンション等について、賃貸割合が高いほど貸家や貸家建付地の評価減が大きくなって相続税評価額は低くなりますが、現実の取引価額は収益性が良いため高くなる傾向があります。この乖離を利用して、相続前に借入れを行って賃貸用マンションを購入し、多額の節税を行っているケースが把握されています。これに対応するため、被相続人等が課税時期前5年以内に取得または新築をしたものについては、通常の取引価額を基準に評価することとなりました。この場合には、その趣旨から貸家の評価減等は適用されないと思われます。

    ―不動産小口化商品―
     賃貸用マンションを信託の目的にした上で、その受益権を小口に細分化して「不動産小口化商品」として販売した場合、その受益権の内容は不動産であるので、相続税評価上は賃貸用マンションとしての評価額をもとに計算されることになります。この結果、「不動産小口化商品」の実際の販売価額と評価額との間に乖離が生じ、これを活用した節税スキームが一部で行われています。これに対応するため、「不動産小口化商品」については、その取得時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額によって評価することとされます。

     なお、J-REITなどの不動産ファンドは、不動産への投資を目的とした投資信託(金融商品)であり、その相続税評価額は従前から実際の取引価額が基準となっています。

    ■ 食料品の消費税非課税化について

    高市首相は、食料品の消費税を2年間ゼロにすると衆院選の公約に掲げておりますが、導入には実務的な課題や懸念が存在します。

    ―高級食品を引き下げないとすることは可能か―
     1つは、「消費税の引下げが高級食品にも適用されるのは妥当か」という点です。食品全般を対象に要な食費負担の軽減」であれば、高級品を除外すべきという意見が出ますが、何をもって高級とするかの客観的な基準設定が非常に困難です。例えば、カニや牛肉のように、同じ種類でも産地やブランドによって数千円から数万円まで価格差がある場合、どこで線を引くかが実務上の大きな問題となり、高級食品の線引きの難しさが懸念されます。

    ―引下げによって外食の値段は連動して引き下がるか―
     食材の税率が下がったとしても、外食産業などの飲食店がメニュー価格を下げるかどうかは不透明です。光熱費や人件費など他のコストが上がっている状況もあり、店側は価格を据え置く可能性が高いのではないでしょうか。

    ―食料品を非課税にすると、住宅の貸付と同様に食料品の販売について仕入税額控除ができなくなるので、食品販売業者はむしろ負担増になる―
     食料品が非課税になると、事業者は販売時に消費税を上乗せしない代わりに、家賃や光熱費にかかった消費税を差し引く仕入税額控除ができなくなります。これは事業者のコスト増を招き、結果として利益の減少や、価格への転嫁、隠れた値上げにつながる可能性があります。なお、ゼロ税率なら仕入税額控除は可能ですが、消費税法の趣旨からは馴染まないと考えられます。

    ―引下げによってレジスターや価格表、会計処理や申告ソフトの改訂が全面的に必要になるが、そのコストは誰が負担するのか―
     税率の変更には、レジシステムの書き換えや、価格表示の変更、会計・申告ソフトの修正など、膨大な作業が発生します。これらのコストは国や消費者が負担するわけではなく、基本的には事業者やシステムベンダーが自己負担することになると懸念されます。

    ―引下げの経済効果等―
     引下げによる経済効果は一回限り、引き下げによる実感はそのとき限りで持続しないと考えます。さらに物価上昇傾向にある時代は引下げそのものが見えなくなりがちです。また、2年間の限定措置ということですが、2年後に戻すのは現実問題として極めて不可能といえ、恒久非課税にならざるを得ないのではないでしょうか。その他、消費税は福祉財源としての目的税として規定されており、税収減が福祉予算の削減につながらないかなど懸念があげられます。

    ―給付付き税額控除としての検討―
     食料品に対する消費税の負担軽減を、給付付き税額控除で行う方法が考えられます。例えば国民1人当たり必要な食材費が月6万円とすると、年間72万円となりその消費税相当額は約5万8千円になります。これを確定申告や年末調整の際に1年間の所得税額から差し引くこととし、差し引けない場合はその差額を給付すれば、最低必要な食料品に対する消費税の負担はないことになります。

     そうすれば、消費税がもともと有する逆進性(※)の問題は解消し、高級食品に対しては消費税の負担が生じ、食品販売業者に対する問題や引下げに対応するためのコストも生じず、国民にとっては毎年の確定申告等の際に見える形で継続します。

    ※ 所得が低い層ほど税負担の割合が高くなる現象
    なお、このような消費税の逆進性を緩和するための給付付き税額控除は、カナダで既に採用されています。

    ■ 講師プロフィール
    植田 卓(うえだ たかし)氏
    MJS税経システム研究所 税務システム研究会 顧問/税理士/立命館大学客員教授/植田会計事務所 所長

    大阪市出身。元日本税理士会連合会常務理事・制度部長、調査研究部長、元近畿税理士会常務理事・研修部長、調査研究部長、第55~57回税理士試験試験委員。多くの企業や事業主に対する、税務会計のコンサルティング業務に従事し、税理士の方々を対象としたセミナーでも多数講演。

    ■ セミナーのご案内

    MJSでは、令和8年税制改正に関連したセミナーの他、毎月、財務や経営の専門家による経理や財務の実務研修から税理士会認定研修、システム研修まで多彩なセミナー研修会を実施しています。ぜひご参加ください。

    令和8年税制改正関連セミナー:https://x.gd/THnp6
    その他セミナー:https://www.mjs.co.jp/seminar/

    ■ 株式会社ミロク情報サービス(MJS)について(https://www.mjs.co.jp/)

    全国の会計事務所と中堅・中小企業および小規模事業者に対し、経営システムおよび経営ノウハウならびに経営情報サービスを提供しています。現在、約8,400の会計事務所ユーザーを有し、財務会計・税務を中心とした各種システムおよび経営・会計・税務等に関する多彩な情報サービスを提供しています。また、財務を中心としたERPシステムを利用する約18,000社の中堅・中小企業をはじめ、約10万社の企業ユーザーを有し、各種ソリューションサービスの提供および企業の経営改革、業務改善を支援しています。

    【本リリースに関するお問い合わせ先】
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