世界の神経内分泌前立腺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測:2026年調査レポートを発表
株式会社マーケットリサーチセンター(本社:東京都港区、世界の市場調査資料販売)では、「世界の神経内分泌前立腺がんの市場規模、疾患概要、疫学予測、英文タイトル:Neuroendocrine Prostate Cancer Market Size; Disease Overview; Epidemiology Forecast; Patient Pool Analysis」調査資料を発表しました。本資料には、市場規模、疾患概要、疫学予測、患者数分析(日本、米国、ヨーロッパ、インドなど)、治療上の課題・アンメットニーズなどの情報などが盛り込まれています。
■主な掲載内容
本レポートは、神経内分泌前立腺がん(Neuroendocrine Prostate Cancer:NEPC)の疫学動向について、過去の患者推移と2026~2035年の将来予測を整理した市場調査レポートである。NEPCは前立腺がんの中でも極めてまれだが悪性度が高いサブタイプであり、腫瘍細胞が神経内分泌様の分化を示すことを特徴とする。Rita Aranhaらの2025年の報告では、診断時からNEPCとして発症するde novo型は前立腺がん全体の1%未満と非常に少ない一方、進行前立腺がんに対して長期間のアンドロゲン遮断療法などを受けた後に出現する治療誘発性NEPC(treatment-emergent NEPC:t-NEPC)は15~20%程度に発生するとされる。調査会社は、進行前立腺がん患者の増加や治療長期化に伴う薬剤耐性・腫瘍進化によって、NEPCの臨床的負担が今後増加するとみている。本調査では2025年を基準年、2019~2025年を過去分析期間、2026~2035年を予測期間とし、米国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、英国、日本、インドの8主要市場を対象に、有病・発症状況、年齢、患者タイプ、診断患者数などを分析している。
NEPCは通常の前立腺腺がんとは生物学的性質が大きく異なる。一般的な前立腺腺がんではアンドロゲン受容体(AR)シグナルが腫瘍増殖の中心にあるが、NEPCではARシグナルが低下または消失していることが多い。そのため、通常の前立腺がんで有効なホルモン療法に対する反応性が低く、より急速な病勢進行を示す。
臨床的には、NEPCは診断時から存在するde novo型と、治療経過の中で出現する治療誘発性型に大きく分けられる。de novo型は極めてまれで、資料によって1%未満、あるいは2%未満とされる。一方、t-NEPCは進行前立腺腺がん、とくに去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)が治療圧の中で神経内分泌的な性質を獲得することで生じる。
この治療誘発性変化は、単に既存腫瘍が大きくなるのではなく、腫瘍細胞のクローン進化や表現型転換によって起こると考えられている。長期間にわたるアンドロゲン遮断やAR標的治療により、AR依存性の腫瘍細胞が抑えられる一方、ARに依存しないクローンが選択され、神経内分泌分化を示すようになる可能性がある。
病理学的には、小細胞がん、大細胞神経内分泌がん、腺がんと神経内分泌成分が混在する混合型などが含まれる。これらは形態や臨床挙動が異なるが、総じて通常の前立腺腺がんより進行が速く、内臓転移が多く、予後不良であるという共通点を持つ。
疫学的には、Zdravko Vassilevらの2025年の報告によると、米国の前立腺がん607,280例のうちNEPCは約0.4%を占めた。これは一般の前立腺がん集団全体ではNEPCが極めて希少であることを示している。
一方、進行例に限定すると頻度は大きく上昇する。ecancerの報告では、転移性前立腺がん患者の約10~15%が最終的にNEPCを発症するとされる。さらにNastasiia Artamonovaらの2025年の報告では、去勢抵抗性前立腺がん患者の最大30%で治療誘発性NEPCが生じる可能性があるとされている。
したがって、「前立腺がん全体の0.4%」「de novo型1~2%未満」「進行・転移例の10~15%」「CRPCでは最大30%」という数値は、対象患者集団が異なるため単純比較できない。一般患者全体では非常にまれだが、治療抵抗性の進行前立腺がんに患者を絞るほどNEPCの割合が高くなるという構造である。
年齢では高齢者に多い。Zdravko Vassilevらの報告によると、診断年齢中央値は76歳であり、NEPCが高齢男性に強く偏ることを示している。前立腺がん自体が高齢者に多いことに加え、t-NEPCは複数年にわたる治療の後に発症する場合があるため、診断時年齢が高くなりやすい。
高齢患者では、がんの悪性度だけでなく、心血管疾患、腎機能低下、フレイルなどの併存症が治療選択に影響する。NEPCでは強力な化学療法が中心となるため、全身状態の悪い高齢患者では治療可能性そのものが制限されることがある。
性別については、前立腺を原発臓器とするため患者は男性に限定される。資料中には一般的な「男性・女性別患者数」というレポートテンプレート表現があるものの、NEPCに関しては実質的に男性疾患である。
人種・民族別では、Zdravko Vassilevらの2025年の解析で、診断患者の72%が白人であった。これは米国の人口構成や前立腺がん診断状況を反映する可能性があり、単純に白人の生物学的リスクが72%という意味ではないが、患者構成に人種差が存在することを示している。
予後は非常に不良である。Ziwei Wangらの2022年の報告では、NEPCの5年生存率は約10%とされる。これは一般的な前立腺腺がんより明らかに悪く、NEPCが高死亡率・高侵襲性の病型であることを示している。
この予後不良には、急速な腫瘍増殖、内臓転移、AR非依存性、従来のホルモン療法への抵抗性などが関与する。とくに肝臓などの内臓転移を伴う場合が多く、骨転移優位の典型的な前立腺腺がんとは異なる臨床像を示すことがある。
国別では、NEPCそのものの患者数より、まず前立腺がん全体の患者規模が潜在的なリスク集団を形成する。米国ではCarlos A. Cardenasの2023年の報告で、2023年に前立腺がん新規症例が28万8,300例を超えたとされる。これらのうち一部が進行し、長期治療を経てt-NEPCへ移行する可能性がある。
西欧でも前立腺がんの発症率は高い。Madeleine J. Karpinskiらの2025年の報告によると、ドイツでは2019年に約72,600例の前立腺がんが報告され、2022年の発症率は人口10万人あたり54.2例であった。イタリアでは49.5例/10万人とされる。したがって、ドイツ、イタリアを含む西欧諸国ではNEPCへ移行し得る進行前立腺がんの基礎患者集団が大きい。
フランス、スペイン、英国についても本資料ではNEPC固有の詳細な患者数は示されていないが、欧州全体として前立腺がん発症率が高いため、治療抵抗性患者の一定割合がNEPCを発症すると考えられる。
日本では前立腺がん患者数が増えており、高齢化も進んでいるため、進行例の長期治療に伴ってt-NEPCの診断機会が増える可能性がある。ただし、提示資料では日本のNEPC固有発症率は示されていない。
インドでは、Vijay Kumarらの2025年の報告によると、前立腺がんの発症率は人口10万人あたり約5.6例と欧米より低い。一方で、死亡率が相対的に高いとされ、診断時病期や医療アクセスの違いが転帰に影響している可能性がある。
この国別比較でも注意すべきなのは、米国28万8,300例、ドイツ72,600例、各国の10万人あたり発症率などはいずれも前立腺がん全体のデータであり、NEPC単独の患者数ではない点である。NEPCの将来患者数を推定するには、その中からde novo型と、進行・去勢抵抗性経過を経てt-NEPCへ移行する割合を別途考慮する必要がある。
市場・疫学上で特に重要なのは、NEPCの将来負担が前立腺がん全体の発症率だけでなく、治療成功によって患者が長期間生存することにも影響される点である。進行前立腺がんに対するAR経路標的治療が長期間使用されるほど、その治療圧の中で抵抗性クローンが選択され、t-NEPCが顕在化する患者が増える可能性がある。
したがって、新しい前立腺がん治療が初期には生存延長をもたらす一方、長期的にはより多くの患者が治療抵抗性段階まで到達し、NEPCの診断機会を増やすという複雑な構造がある。この意味で、NEPCは「治療進歩に伴ってより認識されるようになった耐性病型」の側面を持つ。
診断面でも課題がある。通常の前立腺がんではPSAが病勢評価に重要だが、NEPCではARシグナルや前立腺腺上皮系の性質が低下するため、腫瘍が進行していてもPSAが必ずしも著しく高くならない場合がある。このため、急速な病勢進行や内臓転移など臨床像からNEPCを疑い、必要に応じて病理学的再評価を行うことが重要になる。
治療の中心は全身化学療法である。NEPCは一般的なホルモン療法への反応が乏しいため、通常の前立腺腺がんとは異なり、プラチナ製剤を基盤とした治療が中心となる。
代表的な一次治療として、シスプラチンまたはカルボプラチンとエトポシドの併用が用いられる。これは小細胞肺がんなど他の高悪性度神経内分泌がんでも使用される治療戦略であり、急速に増殖するNEPC細胞を抑えることを目的とする。
ただし、初期奏効が得られても長期的な治療持続性は限定的なことが多く、再発・抵抗性が大きな問題となる。このため、NEPCでは「反応させること」だけでなく、「どの程度その効果を持続できるか」が重要な臨床課題となる。
タキサン系抗がん薬も追加の治療選択肢となる。患者の病理型、過去の治療歴、全身状態などに応じて、プラチナ系との組み合わせや前立腺がん治療歴を考慮したレジメンが検討される。
放射線療法は、局所病変の制御や症状緩和に使用される。骨転移や局所腫瘍による疼痛・圧迫症状などに対する緩和照射としての役割もある。
一部の患者では免疫療法が検討されることがあるが、すべてのNEPC患者に標準的に有効という位置づけではない。資料でも「selected cases」とされており、特定のバイオマーカーや臨床条件を持つ患者に限定される可能性が高い。
標的治療も研究段階にある。NEPCは通常の前立腺腺がんとは異なる分子異常を持つことが多いため、神経内分泌分化や細胞周期、DNA修復などに関連する新規標的への治療開発が進められている。ただし、提示資料では特定の標的薬や開発候補の詳細までは示されていない。
臨床試験への参加は重要な治療選択肢である。5年生存率が約10%と予後が悪く、標準治療の選択肢が限られるため、新規分子標的薬、免疫療法、複合レジメンなどを評価する臨床試験が治療機会として重要になる。
市場の観点では、NEPCそのものは患者数の少ない希少がんである一方、高額・高度な治療を必要とし、アンメットニーズが非常に大きい。とくにt-NEPCは進行前立腺がん治療市場の延長上に位置し、去勢抵抗性前立腺がん患者数の増加によって潜在市場が拡大する可能性がある。
また、NEPC市場では単純な「新規発症患者数」だけでなく、「AR標的治療中に表現型転換を起こした患者」を把握する必要がある。そのため、治療歴、再生検、分子診断などが疫学把握と市場セグメンテーションの重要な要素になる。
全体として本レポートは、NEPCを「前立腺がん全体では1%前後以下と極めてまれだが、進行・治療抵抗性前立腺がんでは10~30%程度まで出現し得る、高悪性度・高死亡率の治療抵抗性サブタイプ」と位置づけている。米国では前立腺がん607,280例中0.4%、de novo型では1~2%未満とされる一方、転移性前立腺がんでは10~15%、去勢抵抗性集団では最大30%にt-NEPCが発生すると報告されている。
診断年齢中央値は約76歳で、高齢男性に集中する。また、米国データでは患者の72%が白人であった。5年生存率は約10%と極めて低く、通常の前立腺腺がんよりはるかに予後不良である。
2026~2035年の疫学・市場動向を考えるうえでは、前立腺がん自体の高齢者患者増加、進行患者の長期生存、AR経路標的治療の長期使用、去勢抵抗性への移行などがt-NEPC患者数を押し上げる主要因になると考えられる。つまり、de novo NEPCが急増するというより、治療経過の中で生じる神経内分泌化が今後の患者負担増加の中心となる可能性が高い。
したがって、今後のNEPC管理における中心的課題は、急速な病勢進行や内臓転移などからt-NEPCへの変化を早期に疑うこと、必要に応じて病理・分子診断を再評価すること、プラチナ製剤を中心とする化学療法を適切に導入すること、そして限られた既存治療を補う新規標的薬や免疫療法を開発することである。2026~2035年は、NEPCを単なる「まれな前立腺がん」として扱うのではなく、「進行前立腺がんの長期治療によって出現する重要な耐性表現型」として監視し、病型転換を早期に把握して個別化治療へつなげることが、臨床・市場双方の主要テーマになるとまとめられる。
※目次構成
01
序文
1.1 はじめに
1.2 調査目的
1.3 調査方法および前提条件
02
エグゼクティブサマリー
03
神経内分泌前立腺がん市場概要(8主要市場)
3.1 神経内分泌前立腺がん市場の過去市場規模(2019年~2025年)
3.2 神経内分泌前立腺がん市場の予測市場規模(2026年~2035年)
04
神経内分泌前立腺がん疫学概要(8主要市場)
4.1 神経内分泌前立腺がん疫学状況(2019年~2025年)
4.2 神経内分泌前立腺がん疫学予測(2026年~2035年)
05
疾患概要
5.1 症状および徴候
5.2 原因
5.3 リスク要因
5.4 ガイドラインおよび病期分類
5.5 病態生理
5.6 スクリーニングおよび診断
5.7 神経内分泌前立腺がんの種類
06
患者プロファイル
6.1 患者プロファイル概要
6.2 患者心理および感情面への影響要因
07
疫学状況および予測(8主要市場:2019年~2035年)
7.1 主要調査結果
7.2 前提条件および根拠
7.3 神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
7.4 種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
7.5 性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
7.6 年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
08
疫学状況および予測:米国(2019年~2035年)
8.1 米国における前提条件および根拠
8.2 米国における神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
8.3 米国における種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
8.4 米国における性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
8.5 米国における年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
09
疫学状況および予測:英国(2019年~2035年)
9.1 英国における前提条件および根拠
9.2 英国における神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
9.3 英国における種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
9.4 英国における性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
9.5 英国における年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
10
疫学状況および予測:ドイツ(2019年~2035年)
10.1 ドイツにおける前提条件および根拠
10.2 ドイツにおける神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
10.3 ドイツにおける種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
10.4 ドイツにおける性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
10.5 ドイツにおける年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
11
疫学状況および予測:フランス(2019年~2035年)
11.1 フランスにおける前提条件および根拠
11.2 フランスにおける神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
11.3 フランスにおける種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
11.4 フランスにおける性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
11.5 フランスにおける年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
12
疫学状況および予測:イタリア(2019年~2035年)
12.1 イタリアにおける前提条件および根拠
12.2 イタリアにおける神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
12.3 イタリアにおける種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
12.4 イタリアにおける性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
12.5 イタリアにおける年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
13
疫学状況および予測:スペイン(2019年~2035年)
13.1 スペインにおける前提条件および根拠
13.2 スペインにおける神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
13.3 スペインにおける種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
13.4 スペインにおける性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
13.5 スペインにおける年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
14
疫学状況および予測:日本(2019年~2035年)
14.1 日本における前提条件および根拠
14.2 日本における神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
14.3 日本における種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
14.4 日本における性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
14.5 日本における年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
15
疫学状況および予測:インド(2019年~2035年)
15.1 インドにおける前提条件および根拠
15.2 インドにおける神経内分泌前立腺がんの診断済み有病患者数
15.3 インドにおける種類別の神経内分泌前立腺がん患者数
15.4 インドにおける性別別の神経内分泌前立腺がん患者数
15.5 インドにおける年齢別の神経内分泌前立腺がん患者数
16
患者経路
17
治療課題および未充足ニーズ
18
キーオピニオンリーダー(KOL)による洞察
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