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トンネル切羽の“あたり”をリアルタイムに把握できる 「あたり検知システム」を開発

- あたり取り作業をワンオペ化、肌落ち災害ゼロへ -

2024.03.15 11:15

安藤ハザマ(本社:東京都港区、社長:国谷 一彦)は、ICTの活用により山岳トンネル工事の生産性を大幅に高める取り組みとして「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM(R))」を推進しています。その一環として、従来は重機のオペレータと作業員の2名で行っていたトンネル切羽の「あたり」(注1)取り作業を、オペレータ1名のみで実施が可能となり、作業の安全性向上と省人化を実現する「あたり検知システム」を開発しました(写真1)。


写真1:あたり検知システム概要


1. 開発の背景

山岳トンネル工事では、発破により切羽を掘削する場合、発破後の切羽の掘削面に凹凸が生じます。この際、トンネルの設計掘削断面より飛び出して「あたり」となる箇所については、所定の出来形を確保するために、ブレーカを用いてはつり落とすあたり取り作業を行う必要があります。従来のあたり取り作業は、重機のオペレータと作業員の2名で行いますが、掘削直後の切羽近傍に作業員が立ち入って目視であたりを確認するため、肌落ち災害の発生リスクが問題となっています(写真2)。また、あたりの確認は作業員の判断に頼っているため、あたり除去が不十分な場合には再びあたり取り作業が生じるほか、必要以上にあたりを除去すると吹付けコンクリートの材料ロスが増加するなどの懸念があります。


写真2:従来のあたり取り作業状況


2. 本システムの特長

当社が開発した「あたり検知システム」は、LiDAR(注2)を用いてあたり取り作業時に切羽の掘削外周面を高速で計測して、あたり箇所を即座に可視化します。


・あたり取り作業を行うブレーカの上部にLiDARを搭載し、掘削外周面の三次元点群を計測します。切羽後方に設置された坑内測量システム(トータルステーション)と連動して、ブレーカに搭載した3個のプリズムからLiDARの自己位置情報を取得します。自己位置情報を付与した三次元点群と設計掘削断面を比較することで、あたり箇所とあたり量を自動で算出します。

・あたりの算出処理では、計測した外周面をメッシュ状に分割し、メッシュ毎にあたり取りの要否を判定します。これにより、外周面であたり取りが必要な箇所を容易に把握することができます。

・ブレーカのオペレータは、運転席内に設置したモニターで判定結果を確認できるため、作業員による切羽近傍でのあたり確認を省略することができ、オペレータ1名のみであたり取り作業を安全に行うことが可能になります(写真3)。

・あたり確認を行う類似技術では、計測作業に伴う段取りや重機の入替えなどが必要でしたが、本システムでは一式をブレーカに搭載することにより施工性を向上させました。計測開始から1~2分で判定結果が表示可能であり、あたり取り作業の施工サイクルに影響を与えることなく、あたり箇所を確認することができます。


写真3:あたり判定結果の表示例


3. 今後の展開について

施工中の山岳トンネル現場で実証試験を行い、本システムによる安全性向上や省人化の効果を確認しています。今後は、本システムの現場適用の拡大を図るとともに、自動化・無人化技術の開発を推進し、山岳トンネル工事のさらなる安全性、生産性向上を目指して取り組んでいきます。


(注1)あたり

掘削した切羽岩盤において、設計掘削断面より内空側に飛び出している岩塊部分。

(注2)LiDAR

レーザー光を使ったリモートセンシングによって物体検知や対象物までの距離を計測する技術。

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