千葉大学病院とNTT Com、日本で初めて薬剤耐性菌の地域間...

千葉大学病院とNTT Com、 日本で初めて薬剤耐性菌の地域間ベンチマークシステムを開発

~千葉県内の薬剤耐性菌動向調査研究を開始~

 国立大学法人千葉大学医学部附属病院(病院長:横手幸太郎、以下 千葉大学病院)の次世代医療構想センター(センター長:吉村健佑)とNTTコミュニケーションズ株式会社(代表取締役社長:丸岡亨、以下 NTT Com)はデータを秘匿化したまま分析可能な「析秘(R)」(※1)を活用し、日本で初めて自病院と二次医療圏(※2)単位で薬剤耐性菌(※3)の出現状況を可視化・比較可能なベンチマークシステム(以下  本システム)を開発しました。

 また、2024年2月より本システムを活用し千葉県における薬剤耐性菌動向調査研究(以下  本研究)に取り組み、薬剤耐性菌の課題解決をめざします。

 

1. 背景

 近年、抗菌薬などの開発により、菌やウイルスによる感染症の多くは治療が可能となっています。一方で、抗菌薬が効かない、または効きにくいという薬剤耐性をもつ菌  (薬剤耐性菌)が世界的に増加しています。これは、抗菌薬などの過剰処方や、患者が処方された抗菌薬の服用を途中でやめてしまうなどの不適切な使用が要因だと考えられています。

 薬剤耐性菌の増加は、これまで薬の投与によって治癒していた患者が治癒しにくくなり、結果的に感染症が拡大することや、死亡率の上昇に繋がるとされています。(※4)

 WHOの調査では、何も対策を取らない場合2050年には世界中で年間約1,000万人の死亡が想定されており(※5)、これはがんの死亡者数を超えるとされています。

 日本では2016年および2023年に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」(※6)が策定されており、「医療・介護分野における薬剤耐性に関する動向調査の強化」が求められています。その中では、薬剤耐性(AMR)の傾向を把握する「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」(※7)や、医療機関や地域ネットワークで活用する「感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)」(※8)などにより対策を進めていますが、参加施設は大規模な医療機関が多く、中小規模の医療機関については実態の把握や対策が困難となっています。


2.  本システムの概要と特長

 本システムは中小規模を含む医療機関の薬剤耐性菌の動向調査および対策を行うために開発されました。主な特長は以下の通りです。

(1)データを秘匿化したまま分析可能

 中小規模の医療機関は、都道府県単位の薬剤耐性菌動向調査への協力は抵抗感が低い傾向にありますが、より細かな地域単位での調査の場合、自施設の動向を近隣施設に知られることへ懸念がありデータ共有が進まないことが課題です。本システムはデータを秘匿化したまま分析可能な「析秘(R)」を活用し、各施設の情報を保護しつつ動向調査が可能です。

 

(2)自病院と二次医療圏で薬剤耐性菌の出現状況を可視化・比較

 本システムは、「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」で収集しているデータをもとに、自病院、二次医療圏および都道府県単位で薬剤耐性菌の出現状況を可視化・比較しベンチマークすることが可能です。ベンチマークした情報は自病院の薬剤耐性菌対策への基礎情報として役立てます。

 自病院と二次医療圏単位の薬剤耐性菌のデータを可視化・比較できるベンチマークシステムは日本で初めてです。


 

3. 本研究の概要

 本システムを用いて9つの二次医療圏にて本研究に取り組みます。

■実施概要:千葉県の9つの病院で厚生労働省の院内感染対策サーベイランス事業で収集している細菌検査データを「析秘(R)」にアップロードします。

  「析秘(R)」では各病院の薬剤耐性菌出現状況を秘匿化した状態で分析し、自病院、二次医療圏および都道府県単位での薬剤耐性菌の状況を可視化・比較します。

 また、時系列での分析を行うことにより、対策後の効果についても確認することが可能です。参加施設数は随時増える見込みとなっています。

■期間:2024年2月~2026年3月

 

4. 本研究における各社の役割

千葉大学病院:代表共同研究者、本システムの機能要件定義、薬剤耐性菌対策に関する研究推進

NTT Com     :本システムの開発および提供

 

5. 今後の展開

千葉大学病院は、本研究の成果を学会などで発表し広く普及することで薬剤耐性菌の課題解決に貢献していきます。

NTT Comは、本システムを他の医療機関へ展開することで日本全国の薬剤耐性菌の課題解決に貢献するとともに、機密性の高い情報を「析秘(R)」により安全に流通・活用可能であることを示すことで、医療データの利活用促進と医療における課題解決に貢献します。

   今後は本研究に加え、千葉県内の抗菌薬処方データと本研究の結果を組み合わせ、薬剤耐性菌と抗菌薬処方の関係性を明らかにすることでさらなる薬剤耐性菌の課題解決に取り組む予定です。



 千葉大学医学部附属病院次世代医療構想センターは、2025年以降の人口構成や疾病構造の大きな変化を見据え、安定した地域の保健医療の提供と研究と開発、そして実践をしています。

https://www.ho.chiba-u.ac.jp/hosp/section/jisedai/


 NTTドコモ、NTT Com、NTTコムウェアは、ドコモグループの法人事業を統合し、法人事業ブランド「ドコモビジネス」を展開しています。「モバイル・クラウドファースト」で社会・産業にイノベーションを起こし、すべての法人のお客さま・パートナーと「あなたと世界を変えていく。」に挑戦します。

https://www.nttdocomo.co.jp/biz/special/docomobusiness/


(※1):「析秘(R)」とは、NTT  Comが提供する、データを秘匿化したまま分析を行い結果のみを出力する秘密計算が、Webブラウザー上で利用できるサービスです。

(※2):二次医療圏は救急医療を含む、一般的な入院治療が完結するように設定された区域で一般的には複数の市区町村で構成されています。

(※3):薬剤耐性菌とは、従来の抗菌薬が効かない「薬剤耐性」をもった細菌です。

(※4):AMR臨床カンファレンスセンターの「日本の薬剤耐性菌の状況」を参照しています。

https://amr.ncgm.go.jp/general/1-3-1.html

(※5):OECD(経済協力開発機構)の世界各国の薬剤耐性菌に関する調査レポートを参照しています。

https://www.oecd.org/els/health-systems/Antimicrobial-Resistance-in-G7-Countries-and-Beyond.pdf

(※6):厚生労働省の薬剤耐性(AMR)対策アクションプランを参照しています。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/0000120769.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/ap_honbun.pdf

(※7):「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」は院内感染対策に有用な情報の還元などを行うことを目的とした厚生労働省が主導する事業です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000026ze4-att/2r98520000026zgk.pdf

(※8):「感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)」は国立研究開発法人国立国際医療研究センター内のAMR臨床リファレンスセンターが運営する薬剤耐性菌対策に活用できるシステムです。

https://j-siphe.ncgm.go.jp/files/J-SIPHE%E5%8F%82%E5%8A%A0%E6%96%BD%E8%A8%AD%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB.pdf  


関連リンク

千葉大学病院とNTT  Com、炎症性腸疾患において患者のプライバシーを保護したまま行う日本初の観察研究を開始(2022年11月29日)

https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2022/1129.html


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