VR × 視線追跡による認知機能検査技術の有用性を確認 株式...

VR × 視線追跡による認知機能検査技術の有用性を確認  株式会社FOVEと国立大学法人筑波大学が共同研究を実施

株式会社FOVE(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:唐木 信太郎、以下「FOVE」)と国立大学法人筑波大学(所在地:茨城県つくば市、学長:永田 恭介)は、新たに開発した、視線追跡型VRヘッドセットを活用した認知機能検査技術に関して、健常とMCI(軽度認知障害、*1)の鑑別、あるいはMCIと認知症の鑑別精度を臨床試験により検討しました。その結果、本技術の認知機能検査ツールとしての有用性が示唆されました。本研究成果は「日本老年医学会雑誌(2023年60巻1号)」にて掲載されました。


株式会社FOVEと筑波大学との共同研究契約


この認知機能検査は、高精度な視線追跡技術を用いて、VR内で提示される認知課題に対する利用者の視線の動きを正確に捉えることで、わずか5分程度で実施することができます。今後はより簡便に認知機能の状態評価が行える検査ツールとして医療機関等で広く活用されることが期待されます。


なお本研究は、株式会社FOVEと筑波大学との共同研究契約に基づいて実施されました。


*1 MCI:Mild Cognitive Impairmentの略称で、日本語正式名称は「軽度認知障害」という。認知症を発症する一歩手前の段階で、健常と認知症の中間の状態。



◆研究成果のポイント

・視線追跡技術を内蔵したVRヘッドセットを利用し、VRによる映像刺激と高精度な視線追跡技術を組み合わせることで、認知機能を評価する検査技術を開発した。


・実施時間はおよそ5分と短時間で、ほとんどの被験者は音声ならびに文字ガイダンスの指示に従って一人で検査が遂行できる仕様を実現した。


・本検査技術を用いた臨床試験の結果、CDR(臨床的認知尺度)0(正常)、CDR0.5(MCI)、CDR1-3(認知症)の3群間での得点分布において有意差が認められた。


・CDR0(正常)と0.5(MCI)、あるいはCDR0.5(MCI)と1-3(認知症)を区別する感度・特異度は、従来の神経心理学検査であるMMSE(ミニメンタルステート検査)やMoCA-J(日本語版 Montreal Cognitive Assessment)のそれと同様に良好な値を示した。


・本検査技術が、MCIをスクリーニングする認知機能検査のための、検査者バイアスのない有用なツールであることが示唆された。



◆研究背景・目的

超高齢化社会が進む日本において、認知症患者数は2025年に730万人に達すると予測されており、認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)も含めると今後も著しい増加が見込まれます。認知症予防において、MCI段階での早期発見の重要性が指摘されており、MCIの状態を放置すれば、その5年後には4割程度が認知症に進行するという報告がある一方、MCI段階で適切な措置を講じることにより、15~40%程度は正常の認知機能に回復することが報告されています。つまり、健常時からの適切な予防行動の実践、あるいは認知機能の状態変化を定期的に把握することでMCI段階での早期発見に繋げていくことが重要です。


他方、医療機関等で頻用される認知機能スクリーニングテストとして代表的な「改訂版長谷川式簡易知能評価スケール」や「MMSE」は、認知症の可能性を測るスクリーニングとしては有用ですが、MCI段階を評価するには十分ではないと指摘されています。加えて、医師や臨床心理士による問診をベースとした検査であるため、検査の実施および評価に10〜20分程度時間を要し、検査時の被検者の心理的負担も大きく、検査者の検査方法に対する熟練度が求められるという点等から、検査者の技能によらず、簡便に実施可能な認知機能評価法の開発が望まれています。


眼球に関する様々な情報をバイオマーカーとして精緻に捉えることでアルツハイマー型認知症や軽度認知障害を鑑別できる可能性については既に数多くの研究がなされており、脳機能と眼球情報の関連性は広く認知されています。そうした中、本研究グループは、VRヘッドセットと高精度な視線追跡技術を活用した新たな認知機能検査技術(以下、VR-E)を開発するとともに、これについて、MCIや認知症を鑑別する精度を検証すべく、臨床試験により、従来の認知機能スクリーニング検査結果との比較を行いました。



◆研究方法・結果

認知症疾患医療センターに指定されている病院(静風会 大垣病院および報恩会石崎病院)の外来患者やその家族、病院職員ならびに関係者を含む77名(男性 29名、女性 48名、平均年齢 75.1歳)に対して、従来の認知機能検査である「MMSE」と「MoCA-J」ならびにVR-Eを実施し、各々の測定結果を比較分析しました。尚、VR-Eで測定する認知領域は記憶・判断・空間認識・計算・言語機能で、計15問の認知課題から構成されています。分析の結果、以下のことが明らかになり、本認知機能検査技術は、軽度認知障害の判別能が良好であり、簡便で有用な検査ツールであることが示唆されました。


▼VR-Eにより算出される評価結果について、MMSE得点とVR-E得点のPearsonの相関係数は0.704(p<0.001)、MoCA-J得点とVR-E得点の相関係数は0.718(p<0.001)といずれも高い相関を示した。


▼VR-EのROC分析において、CDR 0と0.5を判別するAUC値は0.70±0.15、CDR0.5と1-3を判別するAUC値は0.90±0.13を示し、MMSEとMoCA-Jのそれと同様に高い値を示した。


CDRをベースとしたVR-E・MMSE・MoCA-JのROC曲線*2およびAUC*3


*2 ROC曲線:Receiver Operating Characteristic Curveの略。当該検査で陽性と陰性を区別する閾値を変化させた際の真陽性率(縦軸)と偽陽性率(横軸)をプロットして線で結んだもの。

*3 AUC:Area Under the Curveの略。作成したROC曲線の下部分の面積を指す。0から1までの値で示し、値が1に近いほど判別能が高いことを意味する。



◆今後の展望

今後は、多施設でより多くの被験者に対して試験を実施することで本検査手法の有用性を明らかにしていきます。また、本検査から得られる眼球に関する様々なバイオマーカーを活用することで、脳や眼に関する他疾患の状態評価や、生活習慣データとの連携による認知機能の維持・改善方法の研究も進めていく予定です。



◆論文詳細

論文タイトル: 『バーチャル・リアリティデバイスを利用した

         認知機能検査の有用性の検討』

発行日   : 2023年1月25日

掲載誌   : 日本老年医学会雑誌(2023年60巻1号)

著者    : 水上 勝義(筑波大学)、田口 真源(静風会 大垣病院)、

        纐纈 多加志(静風会 大垣病院)、佐藤 直毅(報恩会石崎病院)、

        田中 芳郎(報恩会石崎病院)、岩切 雅彦(報恩会石崎病院)、

        仁科 陽一郎(FOVE)、Iakov Chernyak(FOVE)、唐木 信太郎(FOVE)

URL     : https://doi.org/10.3143/geriatrics.60.43

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