【名城大学】キウイフルーツの人工受粉 一部の柱頭への受粉でも果実品質を確保

    調査・報告
    2025年6月30日 16:00
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    名城大学農学部附属農場の中尾 義則 准教授(果樹生態生理学・果樹園芸学)らのグループは、キウイフルーツの受粉と果実品質に関する研究成果を発表しました。本研究成果は、2025年 4 月25 日に日本の園芸学会英文誌「The Horticulture Journal」に掲載されました(図1)。

    図1 The Horticulture Journal, 2025 Volume 94 Issue 2の表紙
    図1 The Horticulture Journal, 2025 Volume 94 Issue 2の表紙

    【本件のポイント】
    ・雌花の多くの柱頭 注1)に受粉しなくても果実の品質や大きさは維持できることを実証
    ・果実生産に必要な人工受粉のための花粉量を削減できる
    ・今後の人工受粉技術の開発に貢献できる

    【研究の背景】
    キウイフルーツは雌雄異株で、果実生産に人工受粉が不可欠です。市販のキウイフルーツの果実の中には1,000粒程度の種子が入っていますが、受粉と種子分布との関連について詳細な研究は多くはありません。また、受粉に用いられる花粉の多くは輸入に頼っていますが、近年は輸入花粉の確保が難しくなっています。そのため、生産者の間では花粉の使用量を削減しつつ、品質の高い果実を得る方法の確立が求められています。そこで、今後の人工受粉技術の開発への貢献を視野に入れながら、受粉から種子分布と果実品質との関連を詳細に調査しました。

    【研究内容】
    キウイフルーツの雌花には約40本の柱頭が存在します(図2A)。本研究では、柱頭を部分的に切除し(図2B)、人工受粉を「一部の柱頭のみに行う」ことで、種子の分布や果実成長と品質などにどのような影響が出るかを調査しました。
    柱頭全体に受粉すると果実内全体に種子が形成され、均一に肥大した果実が得られました(図3A)。しかし、1か所の柱頭にのみ受粉すると、種子の分布は一方に偏り、種子の多い部分の果実肥大が促進され、曲がった果実となりました(図3B)。また、2か所に受粉すると、果実の横幅は全体受粉程度に大きくなるものの、縦幅は小さくなりました。さらに、半分の柱頭に受粉すると、全体に受粉したときと種子の分布は同様となり、同じ大きさまで肥大しました。果実の品質(糖度、酸度および色味)を比較すると、種子の多少にかかわらず同程度になりました。
    今回の受粉処理と種子分布の結果から、キウイフルーツでは柱頭と心皮 注2)は一対一の対応では無いものの、隣接する心皮の胚珠へ受精できることが明らかになりました。
    さらに、2か所の柱頭のみへの受粉で種子が約200から600個程度形成されたことから、必ずしもすべての柱頭に受粉する必要は無く、一部の柱頭への受粉で多くの種子形成を導き、果実成長を促す可能性が示されました。

    図2 A:雌花。中央の白くて細長いものが柱頭。
    図2 A:雌花。中央の白くて細長いものが柱頭。
    図2 B:片側の柱頭を残した雌花。矢印は残した柱頭を示す。
    図2 B:片側の柱頭を残した雌花。矢印は残した柱頭を示す。
    図3 A:全体に受粉すると種子は全体に分布し、果実は均一に肥大した。
    図3 A:全体に受粉すると種子は全体に分布し、果実は均一に肥大した。
    図3 B:1か所の柱頭に受粉すると種子の分布に偏りがあり、果実は変形した。
    図3 B:1か所の柱頭に受粉すると種子の分布に偏りがあり、果実は変形した。

    【今後の展開】
    本研究の成果は、花粉の量を削減しつつ、十分な果実品質を確保する技術開発に繋がります。現在、ほとんどの人工受粉は、花粉を希釈しスプレーや筆で受粉作業することで花粉量の削減や省力化が行われています。農業への機械化導入も進んでおり、狙った柱頭へのピンポイント受粉も可能になれば大幅に花粉量を削減できる可能性を示しており、スマート農業技術開発の基礎資料として活用できると思われます。

    【用語の解説】
    注1) 柱頭:めしべの先端。この部分に花粉がついて、受粉から受精へと導かれる。
    注2) 心皮:子房(果実)内の区画。

    【掲載論文】
    雑誌名:The Horticulture Journal
    タイトル:Effects of Pollination of Some Stigmas in Kiwifruit Flowers on Seed Distribution and Fruit Quality(キウイフルーツ雌花の柱頭への部分受粉が種子分布と果実品質に与える影響)
    著者:Yoshinori Nakao, Takashi Haruki, Kousuke Murase, Yasumasa Morita, Takashi Morita(中尾 義則、春木 貴志、村瀬 宏祐、森田 裕将、森田 隆史)
    掲載日時:2025 年 4 月 25 日
    DOI: https://doi.org/10.2503/hortj.SZD-009
    URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/hortj/94/2/94_SZD-009/_article
    雑誌の表紙:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hortj/94/2/94_94-2cover/_article

    【お問い合わせ先】
    ・研究内容に関すること
    名城大学 農学部附属農場 准教授 中尾 義則(なかお よしのり)
    TEL:0568-81-2169(農場代表)
    E-mail:nakaoy@meijo-u.ac.jp

    ・広報担当
    名城大学渉外部広報課
    Tel: 052-838-2006
    Email: koho@ccml.meijo-u.ac.jp

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    図1 The Horticulture Journal, 2025 Volume 94 Issue 2の表紙
    図2 A:雌花。中央の白くて細長いものが柱頭。
    図2 B:片側の柱頭を残した雌花。矢印は残した柱頭を示す。
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    図3 A:全体に受粉すると種子は全体に分布し、果実は均一に肥大した。
    図3 B:1か所の柱頭に受粉すると種子の分布に偏りがあり、果実は変形した。
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