大阪医科大学皮膚科学教室

    光トポグラフィー検査によるアトピー性皮膚炎患者のうつ状態のチェック  ~アトピー性皮膚炎のストレスを光トポグラフィー検査で可視化~

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    2012年12月20日 12:30

    大阪医科大学の上田 英一郎、米田 博らの研究グループは、光トポグラフィー検査を難治性アトピー性皮膚炎患者に用い、患者の陰にひそむ抑うつ状態(メンタルストレス)について解析し日本研究皮膚科学会第37回学術大会で発表いたしました。

    光トポグラフィー検査


    ■研究背景
    アトピー性皮膚炎がストレスによって増加することはよく知られています。しかし、ストレスによる抑うつ状態(気分の落ち込み)を客観的に測定する臨床検査はまだ確立されていませんでした。

    大阪医科大学の上田 英一郎、米田 博らの研究グループは、光トポグラフィー検査を難治性アトピー性皮膚炎患者に用い、患者の陰にひそむ抑うつ状態(メンタルストレス)について解析し、沖縄で開催された日本研究皮膚科学会第37回学術大会でその有用性について発表しました。


    ■光トポグラフィー検査とは
    光トポグラフィー検査は、近赤外線を用いて大脳皮質の血流を測る事により脳の活動状態を数値化する装置で、2010年に「うつの鑑別診断補助」として厚生労働省の先進医療に指定されています。この検査は、説明も含めて10分ほどで終わる簡単なものです。実際には患者の頭にヘッドギアのようなプローブを被せ「あ・い・う・え・お」と発音させたり、「『あ』で始まる言葉は?」というような簡単な課題(認知課題)を果たし、脳の特に前頭前野の血流の変化を定量化するものです。健常者の場合、課題遂行時に前頭前野の血流が速やかに増加しますが、うつ状態の患者では血流がなかなか増えないという特徴を持っています。


    ■検査結果について
    上田らの研究グループは、難治性アトピー性皮膚炎患者30名に対して光トポグラフィー検査を行い、患者の抑うつ状態を客観的に評価しました。結果は以下の通りです。

    ・アトピー性皮膚炎患者30名中6名(20%)が光トポグラフィー検査でうつ病パターンを示した
    ・うつ病パターンを示した患者6名のうち、質問紙や問診からうつ状態と診断された3名に対し標準的な皮膚科的治療に加え抗うつ剤(SSRI:エスシタロプラム)を投与したところ、4~8週後に皮疹および抑うつ気分の改善がみられた。
    ・残りの3名に対しては、一般的なアトピー性皮膚炎に対する皮膚科治療と支持的精神療法を行い、皮疹の改善を認めた。

    研究グループは、気分の落ち込みや心理社会的側面は一般的に評価するタイミングやアプローチの方法が難しいが、この検査が普及すれば客観的に抑うつ状態を評価でき、患者やその家族にアトピー性皮膚炎が難治化している原因の一つにストレスが関与している事を理解してもらいやすくなるのではと期待を寄せています。

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