81歳の志茂田景樹さんがいま、若い世代に伝えたいこと

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    2022年2月9日 07:00
    81歳の志茂田景樹さんがいま、若い世代に伝えたいこと
    81歳の志茂田景樹さんがいま、若い世代に伝えたいこと

    「やりたいことがない」
    「毎日を無駄に過ごしている気がする」
    「周りの人はすごいのに自分は……」

    将来への不安から、こんなふうに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

    直木賞作家である志茂田景樹さんのTwitter(@kagekineko)には日々、志茂田さんへの悩み相談が後を絶ちません。

    つらいとき、悲しいとき、へこんでいるときなど、元気がないときにそっと背中を押してくれる志茂田先生の言葉は、これまで多くの人を勇気づけてきました。

    そんなTwitterのつぶやきの中から、特に反響が大きかったものをピックアップし、それぞれにエッセイを書き下ろした『9割は無駄。』(あさ出版)が2022年2月に刊行されました。

    『9割は無駄。』のタイトルに込められた意味

    『9割は無駄。』というタイトルには、次のような意味が込められています。

    「無駄をやっているんじゃないか、無為に年月を浪費しているんじゃないか。
    それならばそれでいい。人生の9割は無駄なのだ、と割り切ればいいだろう。
    あとの1割の中で結果が出る、と開き直れ。
    無駄だと思っていることはけして無駄じゃない。
    人生の醍醐味はそこにあるということをしっかり胸に刻み込んでほしい。」

    本書の中から、メッセージをいくつかピックアップしてご紹介しましょう。

    ゴボウ抜きで抜いていく人生も、ゴボウ抜きで抜かれていく人生も、同じ人生

    「ゴボウ抜きで抜いていく人生も、
    ゴボウ抜きで抜かれていく人生も、
    同じ人生なんだよ。
    それもただの途中経過だ。
    途中経過なんだから気にすんな。
    各人各様でいいじゃないか」

    早咲きの桜もあれば、遅咲きの桜もある。
    運動能力ばかりは、早咲きの世界かなあ。
    20歳で100メートルを9秒台で走るのは何人かいても、50歳で五輪陸上100メートルを制したのは、まだいないんじゃないか。
    それ以外の世界は、年齢にはそれほどこだわんなくてもいいと思う。

    35歳で生涯を終えたモーツアルトは、5歳で「アンダンテ ハ長調 K.1a」を作曲し、神童ぶりを見せつけたという。長命を得ていれば、もっと数々の名曲を残したかもしれないぜ。
    チャイコフスキーは遅咲きと言われたけれど、14歳前後で「アナスターシャ・ワルツ」を作曲しているのよ。
    53歳で亡くなるまでに世界で愛される数々の名曲を作っている。53歳という寿命は、チャイコフスキーが生きた時代のロシアでは、けして短くはなかったよ。だから、作曲家生命は長かった。
    確かに、短命のモーツアルトと比べれば、遅咲きだったんだろう。

    きみが何の世界にいるのか、どんな世界を目指しているのかは知らない。
    もしも、きみの知る誰かがきみも含めて周りのみんなをゴボウ抜き状態で駆け上がっていったとしても、少しも焦ることはないぞ。

    その日とその人の人生で、不意に輝きを発する時期はそれぞれに異なるし、その期間の長さも違ってくる。
    そういう時期に、ゴボウ抜きで抜いていった人を、あっという間に追い越すかもしれないのよ。

    いずれにしたって、人の人生だ。途中経過の違いなんだよ。ゲームセットは見えないんだぞ。
    自分なりの努力、継続で自分の才能、特質、才覚を磨いていけばいいのよ。

    心配するなよ。大丈夫だよ。それでいいんだよ。

    「心配するなよ。
    大丈夫だよ。
    それでいいんだよ。
    自分の心がブルーに染まりかけたとき、
    この3つの言葉を1セットに繰り返し語りかけてごらん。
    これは効くよ」

    人は心配の種が尽きない動物だろ。
    僕なんかも朝起きりゃ、何かしら心配しているぜ。明後日は5枚のエッセイの締切か。明日書くとして、今日はテーマぐらい考えておかなきゃな、と心配したもの。

    こういう根拠がある心配はいいのよ。
    子どもの頃はよく杞憂に過ぎない心配をしたもの。明日、太陽が爆発したらどうしよう、とか。
    燃え尽きるまで何十億年とかかかる、と教わったけれど、何かの条件が変わって中途爆発することだってあるだろうと案じ、一晩ぐらい眠れなかった。
    ただ、その爆発の確率は極めてゼロに近いし、仮に爆発するとしても人間はどうすることもできない。
    子ども心にもそんな風に考えられるようになっていたから、一晩の杞憂ですんだのよ。

    杞憂は1円にもならん。でも、根拠のある心配はジャンジャン生まれてもいいってことよ。
    明後日締め切りで、明日書くことにしている原稿のテーマさえ決まっていない。心配だ。じゃ、今日はテーマだけでも決めておこう。
    これなら充分に根拠がある。

    ところで、杞憂って気がつかないでいるだけで、みんな、いろんな杞憂をしているぜ。

    今日は大事な初デート。絶対、約束の場所に約束の時間の20分前に入ろう、と心に決めて家を出てきた。ここまではいいよな。
    電車に乗ってから、どこかの駅で人身事故が起きて30分、この電車が止まったらどうしようと不安になる。これが杞憂なのよ。
    実際に事故が起きたら、ケータイで相手と連絡を取り合えばいいことだろ。

    大学入試の合格発表まで、落ちたらどうしようと心配するのも杞憂。落ちたと決まったらどうしようかを考えろ。

    前向きすぎる杞憂もある。
    僕がノーベル文学賞を受賞して、その挨拶を日本語で行って、それをレディー・ガガさんが同時通訳して、メディアに絶賛されたらどうしよう、と。
    この2行の杞憂は恥ずかしいから、ゲラ校正のときに削除するか。

    とにかく、不要の杞憂をなるべくなくすことで、人生かなり豊かになるぜ。
    杞憂がちらついたり、自分の心がブルーに染まりかけたら、次の3つの言葉を1セットにして繰り返しつぶやいてみな。

    心配するなよ。
    大丈夫だよ。
    それでいいんだよ。

    言霊入りの鎮静3言だからてきめんに効く。

    著者プロフィール

    志茂田 景樹(しもだ・かげき)

    著者:志茂田 景樹
    著者:志茂田 景樹

    1940年、静岡県生まれ。中央大学法学部卒業後、さまざまな職を経て作家を志す。1976年、『やっとこ探偵』(講談社)で第27回小説現代新人賞を受賞。
    40歳のとき、『黄色い牙』(講談社)で第83回直木賞を受賞。ミステリー、歴史、エッセイなど多彩な作品を発表し続けている。
    活字離れに危機感を持ち、「よい子に読み聞かせ隊」を結成、自ら隊長となり幼稚園や保育園をはじめ、さまざまな箇所を訪問。絵本『キリンがくる日』(木島誠悟・絵、ポプラ社)で第19回日本絵本賞読者賞【山田養蜂場賞】受賞。
    2010年4月から「@kagekineko」のアカウントでtwitterを開始。読む者の心に響く名言や、質問者に的確なアドバイスを送る人生相談が話題を呼び、フォロワー数は40万人を突破している。

    書籍情報

    表紙
    表紙

    タイトル:9割は無駄。
    著者:志茂田 景樹
    ページ数:176ページ     
    価格:1,430円(10%税込) 
    発行日:2022年2月9日
    ISBN:978-4-86667-307-3
    http://www.asa21.com/book/b586773.html

    目次

    第1章 1割の幸せを見つけろ
    第2章 希望がないときがあってもいい
    第3章 人はお互い様で生きている
    第4章 心配するなよ、大丈夫だよ、それでいいんだよ

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