日本顕微鏡学会において、「凍結超薄切片法を用いた生乳に存在す...

日本顕微鏡学会において、 「凍結超薄切片法を用いた生乳に存在するカゼインミセルの微細構造観察」 が日本顕微鏡学会論文賞を受賞しました

日本顕微鏡学会において、 「Microstructural observation of casein micelles in milk by cryo-electron microscopy of vitreous sections (CEMOVIS)」 が日本顕微鏡学会論文賞を受賞しました

 雪印メグミルク株式会社(本社:東京都新宿区 代表取締役社長:西尾 啓治)は、乳の主要タンパク質であるカゼインの電子顕微鏡観察に関する論文で、2021年6月に日本顕微鏡学会論文賞を受賞しました。

 また、この受賞により、同日、日本顕微鏡学会第77回学術講演会にて記念講演を行いました。


【概要】

 当社は、以前より電子顕微鏡を用いた様々な乳製品の構造観察を行い、製品開発や乳・乳製品に関する科学的な解明に活用してまいりました。

 このたび、凍結超薄切片法(CEMOVIS)※1とよばれる手法を用い、カゼインミセルの電子顕微鏡観察を行った結果、新たな知見が得られました。

 

 カゼインミセル並びにリン酸カルシウム(コロイド状リン酸カルシウム 以下CCP)の大きさを確認しました。また、CCPの分布は不均一であり、カゼインミセル中にCCPを含まない領域が存在することがわかりました。

 

 過去の複数の研究者の論文報告と照らし合わせると、このCCPを含まない領域は、水で満たされた多孔質または空洞であると考えられます。


 この研究成果は、未だ解明されていないカゼインの微細構造の解明や、その特性を生かした新たな技術、製品の開発に繋がるものと期待しています。


 今後もミルクに関する知見をさらに深め、お客様の健康と豊かな食生活に貢献できる製品づくりに努めてまいります。


※1:対象物の微細構造を出来るだけ壊さないように凍結処理をし、厚さ約25nmの膜状に観察対象を削り出し、極低温透過電子顕微鏡を用いて観察する手法



【カゼインならびに知見の詳細について】

 カゼインは牛の乳(生乳)中のタンパク質の約80%を占める主要な乳タンパク質の総称であり、αS1-カゼイン、αS2-カゼイン, βカゼイン、κカゼインの4種類が存在します。

 これらのカゼインは、複数のカゼイン同士がリン酸カルシウムを介して結合した、ミセルと呼ばれる塊の状態で生乳中に分散しています。

 また、このミセル状態のカゼインはカゼインミセル、カゼインミセル内のリン酸カルシウムはコロイド状リン酸カルシウム(CCP)と呼ばれています。

 この乳中のカゼインミセルの状態や構造の変化は、チーズやヨーグルトに代表される様々な乳製品の製造過程や製品の特性に大きな影響を与えます。

 しかしその一方で、カゼインミセル内部の微細な構造は、複数の研究者から様々なモデルが提案されて議論が続けられておりますが、未だ結論が得られておりません。

 

 このたび、確認された内容は以下の3点です。

1)平均直径140nmのカゼインミセル中のリン酸カルシウム(コロイド状リン酸カルシウム 以下CCP)は直径約2~3nmであること

2)CCP間の平均距離は約5.4nmであるが、その分布は不均一であること

3)カゼインミセル中には平均でおよそ19.1nmの大きさのCCPを含まない領域が存在すること


◆講演概要

題名;凍結超薄切片法を用いた生乳に存在するカゼインミセルの微細構造観察

演者;神垣隆道(1)、伊藤喜子(2)、西野有里(2)、宮澤淳夫(2)

    (1)雪印メグミルク株式会社

          (2)兵庫県立大学

講演場所;日本顕微鏡学会第77回学術講演会、論文賞受賞講演

     (2021年6月15日、つくば国際会議場)

◆受賞論文概要

題名;Microstructural observation of casein micelles in milk by cryo-electron microscopy of vitreous sections (CEMOVIS)

著者;Takamichi Kamigaki(1), Yosiko Ito(2), Yuri Nishino(2) and Atsuo Miyazawa(2)

    (1) Milk Science Research Institute, MEGMILK SNOW BRAND Co., Ltd.

    (2) GraduateGraduate School of Life Science, University of Hyogo

掲載誌;Microscopy, 67(3), 164-170, (2018)


カテゴリ:
技術・開発
ジャンル:
技術・テクノロジー
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